サンドボックスセット【アイスキャンディーと豆乳】
参考ゲーム
ドラゴンクエストビルダーズ
「アイスキャンディーと豆乳食べたい」
「……なんだ、その組み合わせ」
「だって飲み物がお酒か豆乳ぐらいしかないんだもん」
どうやら『トラ食えビルダーズ』に出てくるメニューらしい。
トラ食えの番外編だ。
魔王に支配され、崩壊してしまった世界を復興するシナリオらしい。
ジャンルはいわゆる『サンドボックス』。
某おもちゃのようにブロックを積み、建物を建てるゲームだ。
このゲームでは物を叩くと何でも小型化して持ち運ぶことができる。
たとえば建物の壁を叩けば壁が小型化された。
そうして小型化されたアイテムを持ったり、その場に置くと元の大きさに戻る。
壁や土はハンマーで叩くと正方形のブロックになるので、これを積み重ねて建築するのだ。
使用できるアイテムはほとんど小型化することが可能。
もちろん料理も叩けば小型化される。
『おうちを直して!』
ブロックを積み重ねればどんな建物でも建造可能。
ただし建物によって様々な条件がある。
たとえば部屋。
土や木のブロックを積むだけでは部屋として機能しない。
部屋と認識されなければ、NPCはその部屋を利用してくれないのだ(眠ったり作業をしてくれない)。
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適当にブロックを積んだだけでは部屋にならない
部屋と認識されるためには、建物の壁になるブロックを二段以上積み、扉をかけ、灯り(たき火、たいまつ、ランタン、ロウソクなど)を設置し、寝具(布団やベッド)を置かないといけない。
逆にいえば条件さえ満たされていれば、中に井戸や墓があってもそこは部屋である。
「屋根がないぞ」
「屋根造ると室内が見にくくなるでしょ。だから屋根はなくてもいいの」
「……大人の事情か」
室内の家具によって物置や調理部屋、リビング、個室、教会や道具屋にもなった。
壊れた家を直すだけなら、壊れている部分にブロックを置けばいい。
ほとんどのプレイヤーがそうするだろう。
「なんか物足りないわね」
だが気に入らなければ、プレイヤーの自由にできる。
残っている壁を破壊して家を大きくするのもよし、逆に小さくしてもよし。
自由度は高い。
「あ、資材が足りない」
馬鹿でかい木製の家を建てているせいであっという間に素材がなくなった。
土の家ならその辺の土を叩けばいくらでも素材を調達できるものの、木材となるとそうはいかない。
「ハンマーでバキッ!」
村を出ると手当たり次第にハンマーで破壊していった。
ゲームが進むほど探索できる範囲が広くなり、素材も増える。
ハンマーのレベルを上げれば、硬い金属も破壊できるらしい。
「たーのしー!」
ハンマーの特技や爆弾を使うと一度に広範囲を破壊できた。
これが気持ちいい。
ストーリー上、壊しても問題のなさそうな施設は片っ端から破壊していく。
そしてその素材を持ち帰って自分たちの家を建てるのだ。
レベルが低くて作れない、もしくは現在手に入る素材では作れないアイテムは破壊して手に入れればいい。
豪華な家具の残っている廃村や廃城は格好の狩り場だ。
壊せば壊すほど自分の拠点が豪華になる。
創造と破壊の絶妙なバランス。
サンドボックス系のゲームが流行っている理由がよくわかる。
もちろんプレイヤーに都合のいいことばかりではない。
『魔物の群れが現れた!』
「ぎゃー!?」
定期的にモンスターの襲撃があり、拠点が破壊されてしまう。
拠点防衛要素もあるゲームらしい。
だがあくまで建造がメインのゲーム。
アクション性はそんなに高くない。
それに食べ物が豊富なので回復アイテムが多く、村人も防衛戦に加わるので全滅する可能性は低い。
「ふふふ、私の『ウォール・マリア』を超えられるかしら?」
不意打ちで建物を破壊されたことを反省し、アホみたいにブロックを積み重ね、村をとてつもなく大きな壁で囲った。
これで壁を飛び越えられることはないだろう。
ただし、
「ああ!? 穴開けられた!?」
「高いだけで薄かったからな」
高さを重視しすぎて壁が薄くなり、簡単に壁を破壊されてしまう。
そもそも壁で拠点への侵入を防ごうが、その場からモンスターがいなくなるわけではない。
ブロック100個分の厚みのある壁を作ろうと、外に出て退治しない限りいつかは突破される。
だが壁の外に出てモンスターを倒そうにも、壁が高すぎて村の出入りが難しい。
内側に階段やハシゴをかけて壁の上に登ることはできるものの、外に出るには壁の上から飛び降りないといけない。
当然、落下ダメージを食らう。
……無駄なダメージだ。
「なら穴を掘るまでよ!」
今度は拠点の周りに堀を掘り、壁は出入りしやすい適度な高さと厚みに変更。
無難な防衛体制だ。
やはり適度な高さは武器になる。
上から下へ攻撃は届くが、下から上だと届かない。
というか、プレイヤーはボタン操作によって上を向く(今いる場所より一段高いところにブロックを置ける)、もしくは下を向く(一段低いところにブロックを置ける)動作ができるのに対し、敵は上下を操作して攻撃してくることがない。
なので壁の上から攻撃すれば一方的に相手を殴れる。
壁がなくても、その場で敵には破壊しにくいブロックを置いて上に登れば同じことができるだろう。
敵が飛び道具で攻撃してくるのなら、目の前にブロックを置いてガード。
ビルダーならではの戦い方だ。
「アイスキャンディー、ゲットだぜ! ……まあ、食べられないんだけど」
「は?」
「これアイスキャンディーの形をした飾り物だから」
「なんだそりゃ」
「これを地面に置いておくと『雪男』が雪を降らせてくれるのよ」
ようするに目印だ。
たとえば土の地面を砂や雪原にしたい場合、プレイヤーがその土をハンマーで叩き、砂や雪原のブロックに入れ替えないといけない。
いちいち叩いて置くのは時間がかかる上に面倒なので、特定の地面をまとめて雪原に変化させることができるアイテム(モンスター)が用意されているようだ。
似たようなものだとミミズのモンスターに土を草原に変えてもらう『草原だんご』や、ハンマーを装備したモンスターに指定した場所を叩いてもらうシール(工事現場にありそうな黄色いハンマー印のシール)がある。
トラ食え5のようにモンスターを仲間にして、特殊能力で色々ビルドできるのが面白い。
モンスターに乗って移動したり戦ったりすることもできる。
やりこみ要素が多い。
ちなみに豆乳はたき火で豆と石炭を加工すると調理できる。
アイスキャンディーの飾りは氷と木材だ。
「畑の様子を見てくる」
さらっと死亡フラグを立てつつ(台風の時に畑や田んぼの様子を見に行くキャラはだいたい死ぬ)、『カカシ』を立てて畑を拡大していく。
カカシも目印の一種で、これを立てるとミミズが汚れた土を健康な土に変え、村人が耕してくれるようになる。
そこへ野菜の種を植えれば、時間経過で作物が実るのだ。
サトウキビの場合は畑を水で満たす必要があり、トマトはさらにツルがからむ棒がいる。
思っていたよりリアルな農作業だ。
「収穫祭!」
作物も叩いて収穫する。
一度収穫に成功した作物は栽培方法が確立され、カカシに育てたい作物の名前を記入しておくと、村人が自動的に育ててくれるようになる。
「んー、快適快適」
畑だけでなく、大型建築も設計図を地面に敷いて、建築に必要な資材を『収納箱』に入れておけば村人が自動的にブロックを積んでくれる。
「速い!?」
設計図にしたがい、村人たちがかなりのスピードでブロックを積んでいく。
あっという間に城が建設されていく光景は圧巻だ。
……ゲーム機の処理が追いつかないのか、明らかに村人のいない場所からブロックが現れることもある。
空中の何もないところをカンカン叩いたり、高いところから落下することも多い。
色々な意味で、見ているだけで楽しい。
建築物だけでなく、自然を開拓することもできる。
山を叩き壊して水を流し、枯れた川を復活させ、目印を置いてモンスターに草原や森林、砂漠、雪原を広げてもらい、設計図と収納箱を置いて城やピラミッドを建設。
レールを敷けばトロッコによる鉄道網を張り巡らせることも可能だ。
ただ素材が足りなくなるので、本格的にビルドするのはゲーム本編をクリアしてからになるだろう。
「ジパング来たー!」
シナリオは章ごとに舞台となる場所が異なっており、日本をモデルにしたジパングも登場した。
湖の形から察するに舞台は琵琶湖。
「なんで琵琶湖なのかしら?」
「琵琶湖周辺が城の聖地だからだろ。有名どころだと信長の安土城、秀吉の長浜城、光秀の坂本城、石田三成の佐和山城、浅井長政の小谷城、井伊家の彦根城、京極高次の大津城があるな」
「へー」
坂本龍馬は明智秀満の子孫とされ、名字の坂本もここからきている。
大津城は関ヶ原の戦いで西軍の進行を止めた城だ。
まあ、城の聖地といっても、天守が現存しているのは彦根城だけなのだが……。
復元されているのも長浜城ぐらいで、あとは城跡である。
『どうやらサコン様が黄泉への入口を閉じてしまったらしい』
「関ヶ原の戦いみたいな戦争があって、戦死者がゾンビ化してるのね」
「日本神話をモチーフにしたシナリオだな」
日本列島を生み出した神イザナギは、死んでしまった妻イザナミを探しに死者の国・黄泉へ降りるものの、イザナミは黄泉の食べ物を食べて『黄泉大神』になっていた。
死の国の女王になったイザナミを地上へ戻すわけにはいかず、イザナギは泣く泣く黄泉の入口を大岩でふさぐ。
日本神話ではこれ以上語られていないが、入口がふさがれてしまうと死者が黄泉へ行くことができず、地上は死者であふれてしまう。
おそらく大岩は黄泉の入口を完全にふさいでいるわけではない。
死者は岩の隙間から黄泉へ降りているのだ。
たぶん神であるイザナミは体(霊体?)が大きいので、その隙間をくぐれないのだろう。
サコン(モデルは関ヶ原の総大将である石田三成の側近・島左近)は岩の隙間をブロックでふさぎ、関ヶ原の死者が黄泉へ降りられないようにしたのだ。
そして死者の霊は死体に戻り、ゾンビとして地上を徘徊する。
「廃城から資材を調達して、自分の城を強化してゾンビから身を守るのね」
「何気に面白い設定だな」
湖族(海賊の湖版)の力を借りて琵琶湖周辺の廃城を巡り、資材を集める。
モデルは『堅田衆』だろう。
棟梁の猪飼昇貞の息子の名は明智秀貞。
明智光秀から明智の姓と光秀の秀の字をもらっているだけあって、立派な琵琶湖の水軍である。
『魔物の群れが現れた!』
「ぎゃー!?」
関ヶ原の死者がほとんど全員ゾンビ化しているだけあって、今まで以上に敵が多く襲撃の間隔が短い。
無理に迎え撃とうとするとやられる。
敵には破壊できない硬い壁を積み、徐々に城を拡大していく。
硬い壁は現在のレベルと素材では作れないので、廃材を調達してくるしかない。
敵を避けながら資材を集め、敵の目を逃れながら壁を積む。
レベルが上がると防衛兵器の大砲や弩を建造できるようになってきた。
兵器を城壁に設置し、難攻不落の要塞が琵琶湖周囲にいくつも建っていく。
これで安心かと思いきや、
『ハラペコで目が回ってきた……』
「あ、やばい!」
廃城探索中に『満腹度』が限界を迎える。
土地が荒廃しているので食べ物が少ない。
畑を作っても植えられる野菜の種がなく、収穫にも一定の時間がかかる。
その辺に生えてる野菜や果物を食べれば満腹度は回復できるものの、素材と料理では回復量が違う。
たとえばキャベツは10、野菜炒めにすれば20だ。
『だめだ! もう倒れそうだ!』
「あああ!? 満腹度の回復が追い付かない!?」
『早く……なにか食べないと……』
『飢え死にしてしまう!』
「そこに作業台があるぞ!」
「らっきー!」
廃墟の隅っこでホコリをかぶっていた『作業台』でたき火を作り、調理して回復率を上げ、その場をしのぐ。
「作業台とたき火は持ち歩いたほうがいいわね」
「……その発想はなかった」
叩けば何でも小型化できる。
物を加工するには『作業台』が、金属を精製するには『炉』が、料理をするにはたき火が必要だが、これらも小型化して持ち歩けば、出先で加工できるのだ。
「防衛兵器で近距離から殴る!」
「うお!?」
本来なら城壁に固定して発射する防衛兵器まで持ち運びし始めた。
固定された砲台は正面にしか撃てないものの、持ち運べば射線にいない敵も撃てる。
それにブロックと同じで、大砲を目の前に置けば盾にもなった。
アイテムは敵に破壊されても小型化するので、大砲を撃ったらそれを敵に破壊させ、素早く回収しつつ敵の側面に回り込んで大砲発射。
……MPが必要ないことを考えると、ある意味トラ食え本家の勇者より恐ろしい。
大砲を複数作って携帯すれば大抵の敵は爆殺できるし、廃城を丸ごと吹っ飛ばして素材を回収するのも簡単。
『資材の加工は拠点で行う』『防衛兵器は要塞に固定する』という先入観があるプレイヤーには想像もできないプレイスタイルだ。
ビルダーという名の機動要塞である。
「芸術は爆発だ!」
とうとう黄泉の入口にまで大砲を持ち込み、入口の隙間をふさいでいたブロックを破壊。
「あ」
「……破壊力がありすぎたな」
勢い余って神が設置した大岩まで破壊してしまった。
『恨めしや』
「ぎゃー!?」
数千年の時を超え、ジパングを創造した女神が黄泉帰る。
最悪の事態だ。
にもかかわらず、
「あれ? もしかして黄泉に降りられる?」
「みたいだな」
「地獄巡りだー!」
「ちょっと待て!?」
地上に降臨した女神をスルーして黄泉に降り、大砲を撃ちまくって素材を集めていく。
ビルダーの収集本能恐るべし。
……どっちが死の女神かわからない。




