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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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名作シリーズセット【キッシュとミルクセーキ】

参考ゲーム

イース


「『Yithイース』はどれからプレイしたらいいんでしょうか?」


「え、Yithやるの? これアクションRPGよ?」

「『日本ファルコン』のゲームは音楽がフリーで使えるそうですから……。元ネタをチェックしておきたいんです」

「お、これフリーで流せるのか」

 ファルコンはゲーム音楽に定評のある会社だ。

 いまわしき著作権管理団体に委託しておらず、自社管理で『音楽フリー宣言』をしているらしい。


「アナログゲームやTRPGのプレイ中にファルコン製のBGMを流して、その様子を配信してもたぶん問題はないはずです」


「普通に店内BGMとしても利用できそうだな」

 店内BGMは古い曲ばかりなので、新しい曲を無料で流せるのはありがたい。


「でもYithってストーリーが明確に続いてるの1と2ぐらいだから、2以外ならどれからプレイしても問題ないのよね」


「……どこからでもプレイできるから困るんです」

「シリーズものにつきものの悩みだな」

 シリーズのどこから遊ぶか(あるいは初級者になにをオススメするか)はゲーマーの永遠の課題だ。

 たとえば『代打裁判』ならストーリーが時系列順に並んでいるし、ゲームシステムもほぼ変わらないので素直に1からプレイしたほうがいい。


 『虎が如く』も時系列順に並んでいるが、シリーズ最高傑作の0は1より前の時間軸だから最初に遊んでも問題ないし、最新作の7は新主人公でジャンルもアクションからRPGになったので7から始めることもできる。


 『オタルギアソリッド』も3は1より前の話だから3からプレイしても問題はない。

 そもそもソリッド1からしてオタルギアシリーズとしては3作目であり、タイトルにソリッドのついていないオタルギア無印の1・2(ソリッド3より前の時間軸)が存在する。

 順番にプレイするなら無印1からということだ。

 そこに外伝・番外編などが絡むとさらにややこしくなる。


「Yithはストーリーが時系列順に並んでなくて、シリーズごとにシステムが違うから好みがわかれるのよね」


 1はトップビュー、3はサイドビュー、3のリメイクはクォータビューで、7からパーティーバトルが採用されて、8ではカメラも動かせる3Dアクションになったらしい。

 現在は10まで発売されている。

「プレイ時間で決めるのもありなんじゃないか?」

「なるほど。昔のYithは半日でクリアできるからプレイしやすいわよ」

「社会人には助かります」

 ボリューム不足は必ずしも悪いことばかりではないようだ。

 遊べる時間が限られているゲーマーには、短時間でクリアできる有名なシリーズというのはありがたい。


「『ぱぺぱぷー』には注意ね」


「ぱぺぱぷー?」

「昔から色んなハードに移植されてるから、機種ごとに曲調が違うのよ。昔のハードは性能が低かったから、音源を使いこなせないとぱぺぱぷーになっちゃうわけ」

「……そこまでひどいんなら、逆に聞いてみたくなるな」

「ちゃんとしたやつを先に聞いてからね」

「どのバージョンを聞けばいいんだ」

「評判がいいのは原曲とパソコンエンジン版、それとリメイク版かしら」

「一番人気は?」


「だいたい最初にプレイしたバージョンを好きになるわね」


「……刷り込みかよ」

 パソコンエンジン版はレトロゲームとは思えないレベルの曲調なので、音の少ない原曲バージョンからプレイしたほうがよさそうだ。

 逆の場合、原曲を聞くと物足りなくなる可能性がある。

 無難に原曲バージョンから聞けば、パソコンエンジン版も良アレンジ曲として楽しめるだろう。

 というわけで、先生は原作を忠実に移植したYith1からプレイすることにした。

「最初のフィールド曲からすでに気合が違いますね」

「シリーズの伝統よ。最初のフィールド曲でプレイヤーにインパクトを与えていくスタイル」

「へえ」

 実際、人気投票でもフィールド曲の人気らしい。

 中には場違いとも思える曲がある。


 たとえば『浪漫佐賀1』の『下水道』は、とても下水道とは思えないスタイリッシュな曲なので通称『世界一かっこいい下水道』と呼ばれている。


 ある意味ではそれに近い。

 たぶん音楽だけ聞いて、それが山や砂漠のBGMだとわかる人間はいないだろう。

 それぐらいノリがいい。

 2と6はオープニングからして名曲であり、シリーズを通してボス戦は名曲ぞろいなので、音楽好きなプレイヤーは序盤で心を掴まれる構成だ。

 BGMを聞くためだけにプレイする価値がある。


ぽちぽち


「……? ボタンを押しても何の反応もないんですが?」

「これ、古いタイプのアクションRPGだから。ボタン押しても剣振らないわよ。敵に体当たりしてダメージ与えるの」

「剣を持ってるのに体当たりですか?」

「剣を持ってるから体当たりするのよ」

 さすがに体当たりで敵を倒す系のゲームは黎明期にしか存在しなかったため、先生の世代でも知らないらしい。


「当たり方が悪いとダメージ受けちゃうから、基本は『半キャラずらし』ね」


 半分キャラの体をずらして体当たりするテクニックだ。

 正面から敵に体当たりすると相打ちになることがある。

 だが半分キャラをずらして敵に体当たりすると、こちらはダメージを受けない。

 体当たりすると敵はノックバックする(後ろに吹き飛ぶ)ので、半キャラずらしていれば前に歩くだけで敵を倒せるわけだ。


「ああ、壁!?」


 なお壁際や一本道には注意が必要だ。

 狭い一本道ではキャラをずらせないし、壁際だとノックバックで壁に激突した敵が動いてしまう(半キャラ状態がずれる)ので接触したらダメージを受ける。

 広い場所に誘い出すのが基本だ。

「……死にそうです」

「ダンジョン以外なら、その場でじっとしてれば徐々にHP回復していくわよ」

「しばらく立ち止まっていたほうがよさそうですね」

 ちなみにダメージを与えられるのは自分から敵に当たった場合だけで、棒立ち状態だと一方的にダメージを受けてしまう。

 だからHP回復のため棒立ちで放置しておくと、敵から一方的に攻撃されて死ぬ可能性がある。

 こういった注意事項さえ心得ておけば、比較的難易度は低い。


「……ボスが倒せません」


 ただしボス戦は除く。

 ボスはほぼ全身にダメージ判定があり、ノーダメージで走り抜けるのは難しい。

 そして攻撃方法は体当たりしかないため、相打ちだと打ち負ける。

 攻略法があるとすれば、


「レベルを上げて物理で殴る」


「……それだけですか?」

「このシリーズは適正レベルまで上げて装備を整えないとろくに攻撃が通らないのよ。ボスが強いってイメージのあるシリーズだけど、最小限の戦闘でボスまで行くから死ぬんであって、適度にレベル上げしてたらわりと簡単なんだから」

「ボタン押す必要がないから、敵が湧く場所を適当に歩くだけでレベル上がるしな」

「3もそんな感じね。3はシューティングみたいに、ボタン押しっぱなしにしてれば剣をブンブン振ってくれるから、敵の湧く場所でボタン押しっぱなしにしてれば自動的にレベル上がるし」

「初級者に優しい仕様ですね」


「高難易度が当たり前の時代に、『今、ゲームは優しさの時代へ』をキャッチコピーにしてた作品だもの。まあ、ファルコンのゲームがその難しい作品の代表格なんだけど」


 典型的な『お前が言うな』案件だ。

「俺は3のリメイク版にするか」

 3はもともとYithではなく、別のゲームとして制作されていたらしい。

 だがYithシリーズにしたほうが売れるだろうと会社が判断したらしく、無理やりYithとして発売されたそうだ。


 会社と開発チームの対立があったため、正式タイトルは『Wanderers from Yith』であり、Yith3ではない。


 あくまでYithの外伝である、ということを強調したタイトルなのだ。

 シリーズ唯一のサイドビュー(横スクロールアクションのようなシステム)で、外伝扱いまでされている3ではあるが、ゲームとしてはそんなに悪いものではない。

 相変わらず音楽のクオリティは高い。

 特に『翼の生えた少年』『バレンタイン城』『最強のボス』はシリーズを代表する名曲である。


「下突き強いな」


 リメイク版はクォータビュー(斜め見下ろし型)。

 比較的最近のアクションRPGなので、ボタンを押せば剣を振る。

 ジャンプすることもできて、下突き(ジャンプ中に下を押すと、剣を下に構えたまま落下して敵を突く)をすると多段ヒット(攻撃が連続でヒット)した。

 ジャンプで敵の攻撃を避わしつつ、下突きを当てるのが気持ちいい。


「なんで『リングパワー』なんだ。魔法のほうがわかりやすくていいだろ」


「Yith2で魔法が封印されたから、Yith2以降のシリーズでは魔法って言葉を使えないのよ」

「……大人の事情かよ」

 属性は火・風・地の3種類。

 炎を放つ、くるくる回転して敵を切り刻む(ジャンプ中に発動すると飛べる)、岩を全身にまとって体当たりする。

 ただ敵の攻撃を避わすことが重要なゲームなので、ほぼ風属性しか使わない(地属性には無敵時間があるものの、タイミングを合わせて発動するのが難しいため、風属性のほうが安全に戦える)。


 もっとも重要なシステムは『ブースト』。


 時間経過でゲージが溜まっていき、ブースト中は全能力値が上昇、そして連続攻撃の回数が最大10回になる。

 ゲージを2つ溜めると『ダブルブースト』になり、発動するとHPが徐々に回復していくおまけつき。

 このおまけがでかい。

「ん? 回復アイテムはどこだ?」

「そんなのないわよ」

「げ!?」


 つまり戦闘中にアイテムでHPを回復することができない。


 定期的にダブルブーストでHPを回復しないと死ぬ。

 ボスはHPが減ると攻撃パターンが変わるので、一番楽なパターンの時にダブルブーストしておかないと削り殺される。

 それでもゲージを溜めるのに時間がかかるし、HPの回復量も決して多いとはいえず、ボスの攻撃を食らったらやり直しという三重苦。

 長期戦だ。


 完全に優しさを失っている。


 ただ土日でクリアできるぐらいのボリュームなので、むしろこれぐらいの難易度のほうが歯応えがあっていい。

 ……下手をしたらプレイ時間の半分はボス戦だが。

「お腹空いた。完熟マンゴーある?」

「完熟はないな」

「じゃあ海鮮キッシュとミルクセーキ」

「……なんだその組み合わせ」


「キッシュは8のヒロインが作ってくれたやつで、ミルクセーキはリメイク版4の最初のクエストよ。野生の牛型モンスターのミルクをしぼって作るマッスル・ミルクセーキ!」


 マッスルの意味はよくわからないが、とりあえずキッシュとミルクセーキを作ってみる。

 8では料理ができるらしく、一応材料のレシピがあった。

「麦、卵、貝に……白肉? 霜降り肉か?」

「モンスターを倒したら手に入る肉だけど、魚を釣っても手に入る素材よ」

「海鮮キッシュだから白身魚にしよう」

 キッシュはパイ生地にベーコンやひき肉などを入れ、チーズを載せて焼く料理だ。

 海鮮でも問題はない。

 ミルクセーキは牛乳、砂糖、ヴァニラエッセンス、卵黄を混ぜて作る飲み物。

 コンデンスミルクで甘く仕上げることもある。

 アメリカではアイスやシロップを混ぜてシェイクすることもあるが、ゲームの世界観からするとフランス式だろうか。


「んー、しょっぱ甘い!」


 塩気のあるキッシュに、甘いミルクセーキ。

 かなりアンバランスな感じではあるが、しょっぱいものと甘いものを交互にやるのだと考えれば悪くない。

 マンゴージュースもありかもしれない。

 8にはココヤシの実も回復アイテムとして登場する(完熟しているフルーツは、死んだ仲間を生き返らせる効果もある)ので、ココナッツジュースという選択肢もある。

 料理のできるゲームならではの食べ合わせだ。

 こうしてキッシュをつまみながら全員でYithをプレイしていると、


「はろー!」


 3時のおやつでも食べに来たのか、アリスがやってきた。

「ぬ、アリスだけ仲間なまかハズレですか?」

「じゃあ、お前もプレイしてみろ。どれがいい?」

 パッケージをテーブルに並べる。


「オススメは1です」

「リメイク版3はいいぞ」

「8に決まってるでしょ」


 見事に意見が分かれた。

「……最新作はどれデスか?」

「10よ」

「では10をぷりーず」

「ぐ、最新作派か!」

「いえす」

 個人的にリメイク3や7、8ほどのインパクトはなかったが、


「ラストバトルは間違いなくシリーズNO1デスね!」


「ぐ……、悔しいが否定できん」

「最近のシリーズではよくわからないラスボスと戦わされることが多かったからなおさらよね」

「正体の明確なラスボスを最高に燃えるシチュエーションで出してくれたのは感謝しかありません」

「……『シリーズのどこから遊ぶか問題』がまた難しくなるな」


「ちなみにもうすぐ11が出るわよ」


「なに!?」


 そしてまたゲーマーたちの間で終わりのない論争が始まる。


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