アクションゲームセット【ウィークエンドシトロンと抹茶】
参考ゲーム
ゼルダの伝説 神々のトライフォース2
リンクの冒険
「……サイドビューだと感覚が狂うわね」
「『リンクの伝説』にサイドビューなんてあったんだな」
「基本はトップビューよ。能力を発動するとサイドビューになるの」
「……? どういうシステムだ?」
「やってみたほうが早いわよ」
携帯機を受け取って最初からプレイする。
サブタイトルは『神々の三鱗紋2』。
最初はトップビュー(上からキャラを見下ろす視点)でゲームが始まった。
主人公はいつものようにリンク。
ただ記憶喪失で何も思い出せないらしい。
そしてなぜか特殊な能力に目覚めていた。
壁と接触している時にボタンを押すと『壁画になって壁の中を移動できる』のだ。
壁画化するとトップビューからサイドビューに変わる。
サイドビューは横からキャラを見る視点で、横スクロール的なシステムだ。
トップビューでは通れなかった道も、サイドビューになれば通ることができる。
たとえば、
壁壁壁壁壁壁壁
□□穴穴穴□□
壁壁壁壁壁壁壁
トップビューだと穴があるので先に進めない。
だが壁画になれば壁伝いに歩いて先へ進むことができる。
ただ『壁画になれる壁』は決まっており、すべての床や天井は壁画になれない。
アクションゲームでよくある『動く足場(動く壁)』を利用すればさらに移動範囲は広がった。
■→
□□穴穴穴□□
※左右に動く■に張り付いて壁画になり、向こう岸へ渡る
壁に亀裂があれば、その間を通り抜けることもできる。
壁壁壁|壁壁壁壁
↑
壁の亀裂
※壁画になって亀裂へ行けば、その亀裂を通って壁の向こうへ行ける
基本的に壁画になっている間は敵から攻撃を受けないので、危ないときは壁の中へ逃げてもいい。
ただし壁画化はスタミナを消費する。
「げ、壁画化できない!?」
「調子に乗ってアイテム使いまくるからよ」
今作では爆弾や魔法の杖などの特殊アイテムもスタミナを消費するので(逆にいうとスタミナさえあればいくらでも使える)、アイテムを乱発すると壁画化で緊急回避できなくなる。
要注意だ。
スタンプ系のアイテムがあり、特殊なインクを消費して壁にスタンプすれば壁画の中でアイテムを入手できる。
『神々の三鱗紋は砕け散ってしまいましたが、精巧に描かれた壁画があれば実体化できるかもしれません』
すでに失われた物体も、精巧に描かれた壁画があれば取り出すことができるという。
神々の力の結晶である三鱗紋の壁画を探し出すのが当面の目標だ。
「お、ボス戦か」
いかにも『壁画化してください』という感じの四角い盾を構えている。
プレイヤーが気づかない可能性があるからだろう。
攻撃すると盾でガードされてしまい、満足にダメージを与えられない。
もちろんこれはチャンスだ。
攻撃してボスに盾を構えさせ、壁画化で盾の中に入る。
『!?』
するとボスがリンクを見失ったことでパニックを起こし、隙だらけになった。
そこで盾から脱出して連打を叩き込む。
このゲームならではの戦い方だ。
ゴーレム系の敵も多い。
立方体のブロックで組み立てられているので、ゴーレムの体に壁画化して攻撃を避わすのが基本だ。
敵が振り下ろした拳、一定のダメージを与えたらこぼれ落ちるブロック(ゴーレムがブロックを拾って体にはめると体力が回復してしまう)などに壁画化すれば、通常では届かない位置にある弱点まで移動できるので実体化して叩く。
爆弾で壁を破壊して倒す壁画系ボスもいた。
「面白いな」
「2D系リンクの良さが凝縮されてる作品だもの」
従来のシリーズに比べればダンジョンも短くてサクサク攻略できる。
マップも見やすくて迷いにくく、宝箱のありかもわかりやすいので、ストレスがたまらない。
シリーズをやりこんでいるゲーマーには物足りないだろうが、一番最初に遊ぶ2D系リンクシリーズとしては最適だ。
「でもここからが本当の地獄よ」
「なに?」
ゲームを進めるとリンクが記憶喪失になっていた理由が判明する。
『あなたは人間ではありません。英傑リンクの壁画が実体化した存在なのです』
「……壁画からデルタフォースを取り出せるんだから、人間も取り出せるわな」
壁画は前作『神々の三鱗紋1』のものらしい。
自分が壁画であることを思い出したリンクは壁画化してもスタミナが減らなくなり、壁画内でのアクションが多くなった。
サイドビューではいつでもジャンプできて、しゃがむこともできる(トップビューでは特定の条件下でしかジャンプできず、しゃがむことはできない)。
トップビューではボタンを押さないと盾を構えないが、サイドビューでは攻撃をしていないときは常に盾を構えている。
常時ガード状態ということは、ガードがそれだけ重要だということだ。
ネックはリーチの短さ。
剣を装備しているのにナイフぐらいの長さしかない。
一応ライフが満タンなら剣の先からビームが発射されるものの、ノーダメージで戦い続けるのは不可能。
最弱のスライムでさえ、いきなり飛びかかってくるので非常にうっとうしい。
天井から攻撃してくるクモやコウモリは、飛び掛かってきた後すぐ天井に戻るのが厄介だ。
一直線に突っ込んでくるザコは対処こそ簡単だが、倒しても無限に出現する。
どこかにザコをスタンプしている敵がおり、そいつを倒さない限り画面外から無限に湧いてくるようだ。
こちらの攻撃を盾でガードする騎士は確実な目押しが必要になる。
騎士は盾を上下に細かく動かすので、こちらも立ったりしゃがんだりを繰り返して盾を構えていない場所を的確に突かないとダメージを与えられない。
しかも盾だけでなく、剣まで上下に打ち分けてくる。
立っているときに下を、しゃがんでいるときに上を攻撃されるとダメージを食らう。
「……剣を意識すると盾のない場所を攻撃できない、盾を意識すると剣で斬られる。最悪だな」
「しゃがみ攻撃がキモね。実はしゃがみ攻撃中って下段ガードが発生してるから」
「つまり同時にしゃがみ攻撃をしたら打ち勝てるのか?」
「そういうこと」
背の低い(しゃがんで攻撃しないと当たらない)敵も多いので、ガード効果のあるしゃがみ攻撃を多用することになる。
高所からのしゃがみ攻撃も有効だろう。
リ←段差の上でしゃがみ攻撃
□敵
※しゃがみ攻撃は常時ガードが発動しているので、段差を利用すれば安全に敵を倒せる
「……神経がすり減っていくから一服したいな。パウンドケーキを頼む」
「えー、私が作るの?」
「レモン風味のパウンドケーキのことを『ウィークエンドシトロン』って呼ぶんだぞ」
「なんでウィークエンド?」
「週末に恋人と一緒に食べるケーキだからだ」
「ちょっと作ってくる」
ちょろい。
パウンドケーキは卵・バター・砂糖・小麦粉を1パウンド(1ポンド)ずつ使って作る簡単なケーキだから、よっぽどのことがない限り失敗はしないだろう。
脳を活性化させる糖分は確保できたので、俺はゲームに集中する。
「……ジャンプ攻撃やら飛び道具やら空飛ぶ敵がうざいな」
レトロゲームでよくある難関だ。
ジャンプ攻撃を仕掛けてくる敵は天井の低い場所で戦う。
天井が低ければリンクの上にジャンプできないし、簡単に撃ち落せる。
飛び道具は軌道やこちらのジャンプ攻撃が問題だ。
リンクの剣が短いので、飛び道具をジャンプで避わしながら攻撃すると敵にぶつかってしまうことがある。
ただ直線的に斧を投げてくる敵や、山なりにハンマーを投げてくる敵はまだ対処しやすい。
山なりの軌道なら、一度ハンマーを避わして懐に入ってしまえばもう攻撃は当たらない(山なりなので近距離でハンマーを投げてもリンクを飛び越えてしまう)。
厄介なのはブーメランだ。
避わしても後ろから戻ってくる。
しかもブーメランは1つではないので、最悪ブーメランに前後からはさまれる。
おまけにブーメランで攻撃してくる敵は普通のザコキャラだ。
その辺のザコ相手でさえテクニカルな操作を要求されるので気を抜けない。
……とことん疲れるゲームだ。
チン
「焼けたわよ」
「あとはグラスアローだな」
「ぐらすあろー?」
「アイシングだ」
粉砂糖を溶かしてパウンドケーキに塗り、さらに少し焼けば真っ白にコーティングされたウィークエンドシトロンの完成だ。
「レモンピールが余ってるから抹茶に入れよう」
抹茶は粉末なので色々と混ぜて味を調えやすい。
もともと濃厚なので、見るからに甘いウィークエンドにも負けない風味がある。
「はい、あーん」
「……」
いろんな意味で甘酸っぱい。
胸焼けしそうだ。
これを店で出したらもっとひどくなるだろう。
メニュー化は考えたほうがいいのかもしれない。
「ぐ、こいつ強いなっ……!」
ラスボスはかつてリンクが倒した『カノン』の壁画が実体化したものだった。
もともと『魔人カノンを倒した英傑リンクの壁画』だったので、カノンが実体化したことで近くにあったリンクも実体化してしまったらしい。
カノンへの攻撃はことごとくガードされてしまう。
爆弾では破壊できない壁なので実体でもダメージを与えられない。
「どうすればいいんだ?」
「地形を利用しろってことでしょ」
「地形?」
戦場は塔だ。
塔の中なので部屋は円筒形になっている。
「あ」
閃いた。
後ろを向いて矢を射つ。
矢はぐるっと部屋を一周してカノンの背中に突き刺さった。
しかしそれが通用するのも最初の一発だけ。
カノンが背中を警戒するようになり、後ろから矢を射っても飛び越えられてしまう。
矢も1周半ぐらいで下に落ちてしまった。
「じゃあ後ろに矢を射って、ジャンプで避わす瞬間に攻撃するまでだ!」
『ぬわーっ!?』
見事に命中。
だが今度はカノンがこちらから距離を取った。
近づけば逃げられる。
同じ戦法ではダメージを与えられない。
「なら背中を追いかけた後、逆方向から回り込む!」
カノンは車のごとく急には止まれない。
後ろから追いかければ全速力で逃げ、こちらが止まっても惰性で半周近く走り続ける。
それを利用し、逆方向からカノンの正面に回り込むのだ。
だが正面からの攻撃ではガードされてしまう。
「これでどうだ!?」
今度はカノンの背中に矢を射ってから正面に回り込む。
正面からの攻撃はガードされてしまうものの、
『ぬわーっ!?』
正面をガードすれば背中はがら空き。
三本の光の矢を受け、とうとうカノンは力尽きた。
リンクは『魔人カノンを倒した英傑リンクの壁画』の元へ戻る。
実体化の影響なのかリンクとカノンの部分だけ削られたように空白になっていた。
「スタッフロールも凝ってるな」
壁画は巻物のように物語仕立てだった。
スクロールやスタッフロールの『ロール』とは巻物を意味する。
巻物のように右から左、あるいは上から下に読んだり動いたりするのでロールと呼ばれるのだ。
リンクは神々の三鱗紋1の壁画を追体験するように左から右へスクロールし、カノンを倒して姫と再会したシーンで元の壁画に戻った。




