協力型ゲームセット【クッキーと茎茶】
参考ゲーム
ドラスレ
「『ドラキラ』をやりましょう!」
「どらきゅら?」
「ドラゴンキラー。2人から5人でプレイする協力型ゲームです。冒険フェイズではクエストをクリアしてアイテムを入手しつつレベルを上げ、決戦フェイズではドラゴンと戦います」
「1人で2キャラ操作すればソロプレイできますか?」
「問題ありません。好きなキャラを選んで始まりの街に配置してください」
「お、メタルフィギュアか」
金属製のミニチュア人形だ。
塗装されていないから銀色で、ずっしり重い。
「ニンジャとグラディエーターにするか」
パワー系とスピード系でタッグを組み、メタルフィギュアをボードに置く。
「ではタイルも置きましょう」
タイルを裏返しにして置き、さらにその上にタイルを積む。
「上に積んだのはクエストタイルです。隣に移動したらタイルを表にしてクエストに挑戦します」
「下のタイルはクエスト報酬ですか?」
「はい。アイテムを獲得しないと勝ち目はないので、積極的にクリアしてください」
「わかりました」
「ではゲームを始めましょう。ニンジャがいるので、ニンジャがスタートプレイヤーになります」
「さすがスピード型」
「『移動』のパラメータの数だけサイコロを振ってください」
「移動4だから4dか。他のキャラは3だから心強いな」
「そうでもありませんよ?」
「え」
「まずは振ってみてください」
……嫌な予感しかしない。
だが振らなければ始まらない。
ころころ
4 4 5 6
出足は好調。
「ボード左上の『移動に必要な出目』を参考に、サイコロの数だけ移動してください」
移動に必要な出目
2以上 街・村・街道
3以上 平地
5以上 森
「えーと、つまり2以上のサイコロがあれば街道を移動できるのか。4で移動できるのは街道と平地。5と6があるから森も移動できる、と」
移動できるサイコロが2~5個あれば、ボード上のすべてのクエストタイルの横へ移動できる。
ニンジャの移動4が必ずしも強いといえないのは、2~3回移動すればどのキャラもクエストタイルに移動できるからだ。
「じゃあ横に3マス移動するか」
「あ、待ってください。6があるのでドラゴンゲージを1つ進めます」
「ドラゴンゲージ?」
「これです」
S字のゲージに赤いマーカーを置いて1マス進めた。
「ゲージに爪のアイコンが描かれていたマスがありますよね? マーカーがこのマスに進むとドラゴンがアクションします」
ボードには『ドラゴンアクション表』というのがあり、1dを振ってドラゴンの行動を決定するようだ。
……高確率で1~2ダメージ食らう。
ニンジャのライフは4なのでシャレにならない。
「ドラゴンゲージが最後まで進む、もしくはボード上のクエストタイルをすべてクリアすると決戦フェイズになります」
「あ、移動で6を出したらゲージが1つ進むわけだから、移動力の高いニンジャがいるとゲージが進みやすいのか!」
「そういうことです」
その場から移動したくない場合も、必ずサイコロは振らないといけない。
ニンジャを選んだのは失敗だったのかもしれない。
「振りたくないが、移動するか」
ニンジャをクエストタイルの横に移動させ、タイルをめくる。
『ゴブリンの大群・戦闘3・失敗時:1ダメージを受ける』
「……判定の仕方がわからん」
「ニンジャは『調査』ですでにアクションをしたので、ニンジャのターンはこれで終わりです。クエストに『挑戦』することはできません。挑戦できるのは次のプレイヤーからです」
「あー、調査もアクションなのか」
「アクションの種類は全部で4つ。『調査』『休息』『冒険』『挑戦』です。休息は街または村で移動を終えた場合に行えるアクションで、ライフを2回復できます。これは無条件で回復できるのでサイコロを振る必要はありません」
「冒険っていうのは?」
「平地や森でのみ行えるアクションですね。キャラシートに記載されている冒険のパラメータの数だけサイコロを振ります。これを『ピークロール』と呼びます。サイコロで4以上が出ると成功で+1。1が出るとファンブルなので-1。6はクリティカルなのでサイコロを1つ振り足せます。クリティカルで振り足すサイコロは、2以上で成功になります」
「クリティカル強いな」
冒険表
成功数 効果
-1以下 1ダメージ
0 なにもなし
1 経験値+1 1ダメージ
2以上 経験値+1
キャラの冒険と同じ数だけサイコロを振り、4以上が出た数で判定する
1の目は-1
2~3は0
4以上で+1
6の目はクリティカルでサイコロを1つ振り足せる
「ニンジャもグラディエーターも冒険のパラメータが2つあるんですけど」
「平地と森では冒険の難易度が変わります」
キャラの得手不得手を考えて移動したほうがよさそうだ。
「挑戦も冒険と同じ調子でピークロールを行います。たとえばこのゴブリンクエストの場合、戦闘3とあるので、戦闘のパラメータでピークロールをしてください」
「えーと、グラディエーターは戦闘が4だからサイコロ4個。クエストは戦闘3だから、4が3つ以上出れば成功なのか」
「はい。一度のピークロールでクエストをクリアできなくても、成功数は引き継がれます。成功した数だけクエストタイルの上に達成マーカーを置いてください」
ころころ
2 2 3 5
1つ成功だ。
マーカーを1つ置き、クエストをクリアできなかったので1ダメージ食らう。
「クエストタイルに複数のキャラが接触していれば、そのキャラと協力してクエストに挑戦できます」
「失敗したら全員にペナルティですよね?」
「もちろんです。ただ成功すれば全員に経験値が1点入るのでお得ですよ? ちなみに1人でクリアした場合は経験値2です」
「プレイ人数が多い場合は協力したほうがいいわけか」
2キャラしかいないので、協力してゴブリンと戦う。
ころころ
「お、クエストクリア!」
ドラゴンの財宝を手に入れて、シートに記載されているアイテムが使えるようになった。
グラディエーターは『マンモスの肉』。
決戦フェイズ開始時にライフを上限まで回復する。
ニンジャは『朧月』。
アイテムのイラストがないのでよくわからないが、刀の名前だろうか?
決戦フェイズでピークロールのサイコロを振りなおせるアイテムらしい。
しかも毎ターン1回使える。
かなり強力だ。
「この調子でいくぞ!」
ころころ
……クエスト失敗。
地味にライフが削られるので、回復しつつ経験値を稼ぐ。
ころころ
1 6 6 6
「げ!?」
運が悪いとドラゴンゲージが一気に加速し、ドラゴンアクションも発動。
アクション表の半分はダメージだ。
すべてのキャラが1ダメージ、全員でサイコロを振って一番出目の低いキャラが2ダメージ、逆にもっとも高い目を出したキャラが2ダメージ。
ライフが低いのでどれも痛い。
「4つ目のアイテムゲット! ……5個目は取らないほうがいいな」
「状況にもよりますね」
5個目のクエストをクリアすると決戦フェイズになってドラゴンと戦う。
だが報酬タイルさえ取らなければ、移動で6を出してドラゴンゲージがMAXにならない限り決戦フェイズにはいかない。
ここは冒険を続けてレベルを上げたいのだが……。
「出るなよ、絶対に出るなよ!」
ころころ
3 5 6 6
「あああ!?」
悪夢のドラゴンアクション&決戦フェイズ開始。
「ドラゴンとの決戦も冒険や挑戦と同じピークロールです。決戦表を参考にして戦ってください」
決戦表
-1以下 丸呑みにされて即死
0 攻撃されて4ダメージ
1 ブレスで全員に1ダメージ
2 連携攻撃のチャンス → 全員が1ダメージを受ける
3 一進一退の攻防! 1ダメージを与え、2ダメージ受ける
4 背後からの攻撃! 1ダメージ与える
5以上 会心の一撃! 2ダメージ与える
「……なんだこれ。最低でも3個成功しないとダメージを与えられない上に、ほとんどの出目で攻撃を受ける」
「いえ、連携攻撃があるので成功が2つあればダメージは与えられますよ?」
「え?」
「成功2の『連携攻撃のチャンス』になったら、全キャラが1dを振ってピークロールできます。成功2にプラスするので、高確率でダメージを与えられます。全員がダメージを受けるのは、あくまで1つも4が出なくて連携攻撃に失敗した時です」
「成功2でいいんなら、まだ勝ち目はあるな」
「なおドラゴンのライフは9。ダメージを与えるごとにライフゲージにダメージトークンを置いてください」
「……ゲージに爪が描かれてるんですけど」
「爪の描かれてる場所はドラゴンランページという、ドラゴンアクションよりも強力な攻撃が発生します」
ドラゴンランページはライフゲージに4つある上に、1dで1を出さない限り必ずダメージを食らう。
……強すぎる。
「くそ、やるしかないのか!」
ころころ
1 1 3
「即死しました」
「はあっ!?」
「あ、ニンジャは朧月を持ってるので振りなおせますね」
「……助かった」
たった1回でドラゴンの恐ろしさを痛感する。
ころころ
「4ダメージです」
「うああ!?」
その後も祈りながらサイコロを振ったものの、ライフを半分削ることすらできずに虐殺された。
勝てる気がしない。
「……本当に勝てるんですか、これ?」
「むずかしいですね。運がよければ勝てますが、悪くなくても死にますし」
「プレイ人数増やして、なるべく経験値を稼いでレベルを上げるしかないな。あとは完全に運ゲーだ」
「ソロプレイには向きませんね。どちらかというとパーティーゲームです」
「……たしかに皆で悲鳴を上げながらプレイすると面白そうなゲームではあるな」
サイコロの出目で一喜一憂。
状況によって出目が爆発すれば盛り上がるだろう。
単純なゲームなので、短時間で何度もプレイできる。
戦略性を求めるゲーマーには向かないが、たまにはこういうのも悪くない。
「全員呼ぶか」
盾を増やすために全員集合。
「はろー」
「おなか空いた」
「あとで何か作ってやる」
先生も参加し、4人でドラゴン討伐を目指す。
キャラが1人余ってるので、全員で1キャラ動かす(そのキャラのサイコロは全員で1つずつ一斉に振る)ことにした。
ニンジャ、グラディエーター、ハンター、プリンス、パラディンの5人パーティ。
これなら勝てるだろう。
ころころ
「ドラゴンアクションですね」
「ぎゃー!?」
……しかし運の悪さはいかんともしがたい。
「運を引き寄せましょう」
「引き寄せるって、どうやって?」
「今日のラッキーカラーは青なので青いサイコロを使いましょう」
「……これはひどい」
まあ、運ゲーの攻略法なんてこれぐらいしかないのだろうが。
「風水では馬がラッキーアイテムですネ」
「左馬しかないぞ」
馬の文字が逆に描かれた縁起物の将棋の駒をテーブルに置く。
「馬なら蹄鉄も幸運のアイテムですね」
「じゃあ蹄鉄クッキーと茎茶にしましょう」
「なんで茎茶なの?」
「茶柱って茎のことだぞ。だから茶柱が立ちやすい」
「へー」
茶葉だけのお茶には、柱になる茎が入ってないので立たない。
その点、茎茶は縁起物として最高である。
「あ、財布におみくじ入れてたかも」
初詣で引いた大吉のおみくじをお守りに入れる。
「そういや四葉のクローバーのしおりがあったな」
児童文学の本を片っ端からひっくり返し、小学生の頃に作ったクローバーのしおりを発掘。
「凶兆の逆を行くっていう方法もあるわね」
「なんだ、それ?」
「『黒猫が横切る』とか『鼻緒が切れる』のが不吉なら、白猫を連れてきて靴ヒモを新しいものに取り換えればいいのよ」
「げっつ!」
「にゃー!?」
白猫には程遠い三毛猫のちはやを捕獲し、靴ヒモを新しくしてギュッと結ぶ。
……どんどんオカルトじみていく。
「ふふ、これだけやれば大丈夫でしょ!」
「では最後に『笑う門には福来たる』。どんな状況でも笑顔でサイコロを振りましょう」
「OK!」
にぱー
怪しい笑顔を浮かべ、全員で1つずつパラディンのサイコロを振る。
ころころ
1 1 2 3
「ぎゃー!?」
「しっと!」
「……まあ、だいたいこうなることは予想できてたよ」
どれだけ周到に用意しようと、負ける時は負ける。
それが運ゲーだ。




