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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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フォトセット【惣菜パンとコーヒー牛乳】

参考ゲーム

フォトカノ

ポケモンスナップ

顔シューティング


「いいよーいいよー。世界一かわいいよー」


「……なにやってんだ」

「グラビア撮影」

 カメラマンのイメージが古すぎる。

 今時こんなカメラマンはいないだろう。

「シャッターチャンスだ!」

 時代錯誤のにわかキャメラマンは携帯機をカメラのごとく傾け、ボタンを押した。


パシャッ


 どうやら携帯機と『フォトヒロ』なるゲームが連動しており、携帯機を動かすとゲーム内のカメラも動くらしい。

 フォトヒロのヒロインは3Dモデリングされているため、360度あらゆる角度から撮影できるようだ。

 携帯機とはいえ最新機種なのでグラフィックのレベルはかなり高く、そこらの2Dキャラよりずっとかわいい。

 3Dなのでイベント中も動きがあり、柔らかそうに色んな場所が揺れる。

 ……製作者が何にこだわっているかよくわかる。

「操作方法は切り替えることができて、タッチ操作にすると女の子に触ることもできるのよ」


ぱふぱふ


「……当たり前のように胸を触るな」

「胸を触らないでどこを触るのよ!」

「そもそもカメラマンは被写体に触らん」

 胸を触ったり、必要以上に顔を近づけたり、ローアングルで撮影したりするとヒロインの羞恥心が上がり、MAXになると恥ずかしさに耐えきれず逃げられてしまう。

 好き勝手にプレイできすぎると主人公が捕まるからだろう。

 正しい判断だ。


『850点』


「まーまーね」

「ヒロインを撮影するだけのゲームなのか、これ?」

「撮影するのが目的のギャルゲーよ」

「へえ」

 行動できるのは一日に4回。

 授業の合間の休み時間、昼休み、放課後だ。

 校内を移動し、その場所にヒロインがいると(時間割や部活が決まっているのでだいたいの居場所はわかっているものの、ランダム性があるので確実に狙ったヒロインに会えるとは限らない)コミュニケーションが発生。


 独特なリアルタイムの会話だ。


 システム的には音ゲーに近い。

 心電図のように上下している波線の上をアイコンが流れている。

 心電図の真ん中にはラインが引かれており、アイコンがラインの上にある時に、アイコンに対応する色の『話題(勉強や恋愛など)』を押せば成功。

 下にある時に押してしまうと失敗。


 空気を読んで、その場に応じた話題を選べば会話が弾むという感じのシステムだろうか。


 会話を成功させるとヒロインの好感度とテンションゲージが上がり、失敗すれば下がる。

 テンションMAX時に『アタック』すれば撮影させてもらえるらしい。

 このコミュでも羞恥ゲージがあり、MAXになると帰ってしまう。

 恋愛話や見つめる・手をつなぐなどの行為はテンションが上がりやすいものの、羞恥も上がりやすいので要注意。

 ちなみに好感度が高いほど色んなポーズで撮影できる。

 会話がリアルタイムで、撮影した写真を見せて好感度を上げないといけないゲームシステム上、どうしてもプレイに時間がかかってしまう。

 同時に数人のキャラを攻略したほうがいいだろう。

 好感度は目で確認できるので管理も楽だ。

 ただし、


「ああ!? 容量が足りない!?」


 写真をたくさん撮るため、複数のセーブデータを作るとファイルの容量が膨らんでしまう。

 お気に入りの写真を保存しておきたいのなら、一本のゲームをダウンロードできるぐらいの容量が必要だ。

「いらないデータ消せよ」

「いらないデータなんてないわよ!」

「ケチって安いの買うからだ」

「うぅ……」

 このゲームの推奨は3~8ギガ。

 4ギガのメモリーカードでプレイするのが無謀なのだ。


「パソコンに移すしかないわね」


 幸いこの携帯機は外部にデータを転送できるので、詰むことはない。

 ……それでも容量はカツカツだが。

「別のゲームしよっと」

 データ転送はしばらく時間がかかるらしく、他のゲームを物色し始めた。

 俺も小腹が空いたのでなにか作ることにする。

「なにがいい?」


「ひまわりバーガー」


「……なんだそれ」

「フォトヒロに出てくるのよ。具はハンバーグと玉子とレタス。ハンバーグはカレー風味で、焼目はひまわりっぽく網目状。花びらはチーズを混ぜた薄焼き玉子。これをヒマワリの種を混ぜた天然酵母のパンに挟めば完成よ!」

「ヒマワリの種を混ぜた天然酵母のパンなんかうちにないぞ」

「えー」

「1から作るのも時間がかかる。別のにしろ」

「はーい」


 結局、ダブルカツサンドと焼きそばフランクパンとコーヒー牛乳に落ち着いた。


 これもフォトヒロでヒロインが食べていたものであり、両手にパンを持ってガツガツ食っているシーンを撮影できるのでなかなか印象に残るイベントだ。

 トンカツと焼きそばも微妙に手間がかかるものの、晩飯用に残せばいいので問題ないだろう。

 パパっと焼きそばの野菜を炒め、トンカツを揚げてパンにはさむ。

「ほれ」

「ありがと」

 焼きそばパンを頬張りながら、


パシャッ


 片手でモンスターを撮影する。


『パチモンスナップ』


 パチモンを撮影するゲームらしい。

 ただこのゲーム、移動が自動だ。

 プレイヤーが自由に移動することはできない。


 バスに乗って車内から動物を眺めるサファリパークのような感じだ。


 車内から視点を変え、パチモンを撮影する。

 難易度は低い。

 被写体のポーズや大きさ、数、シチュエーションによってスコアが違うものの、慣れれば簡単だ。

 リンゴなどを投げてパチモンを誘い出したりもできるが、移動するコースとプレイヤーのできるアクションが限られているので、隠れているパチモンもだいたい見つかる。

 パチモンファンにはたまらない作品だが、あまり長く遊べるゲームではない。

「さすがに撮影できるゲームはあんまりないか」


「あとは『フェイタルカメラ2』ぐらいね」


「どっかで聞いたタイトルだな」

「カメラで魂を吸い取るやつよ」

「あー、前にお化け屋敷でやったやつか。前作とのストーリーの繋がりはないみたいだから、これプレイしてみるか」

「え、やるの?」

「……なぜそこで驚く? お前、もしかしてこれプレイしてないのか?」

「う……」

「怖くてプレイできないものをなぜ買った」

「し、仕方ないでしょ、名作なんだから!」

 名作だからという理由で買っていたら金がいくらあっても足りない。

 これだからゲーマーは困る。


ピー、ガガガッ


「ひゃっ!?」

「なんだ?」

 ゲームを始めると、画面やスピーカーにノイズが走った。

 一瞬、怪奇現象かと思ったが。

 どうやらゲームの演出らしい。


『……いる!』


 コントローラーが震え、主人公がなにかに気づいた。

 しかし周りにはなにもいない。

 壁にカメラを向け、シャッターを切る。


パシャ


「いやー!?」

 すると霊が写りこんでいた。

『早く逃げないと』

 霊の姿は写真にのみ写るらしい。

 重要なのは霊の位置を特定することであり、写真に写っていないということは不在証明アリバイになる。

 敵が近くにいるのがたしかならば、そのいない場所へ逃げればいい。

 写真を撮れば除霊できるものの、位置を特定するのに写真を撮る必要があるため、乱射しているとフィルムが足りなくなる。

 基本は逃げだ。


『はあ……はあ……はあ……』


 体力もなく、走り続けていると疲れてしまう。

『死んでもはなさない』

「やばい、憑りつかれた!?」

「あわわわわ!?」

 体力が減っていく。

 このままではまずい。

「れ、連打! 連打して!」

「わかってる!」

 必死にボタン連打で霊を体から追い払おうとするものの、途中で重大なことに気づいた。


 霊が見えている。


「憑りつかれることで一時的に霊感が得られるのか?」

 画面の右上に表示されているマップにも霊が映っていた。

 霊の気配を感じることができるらしい。

 一定の範囲内しか撮影できないカメラと違って、これなら360度カバーできる。

「……一時的に操作不能になるものの、わざと低級霊を憑かせて霊の位置を確認するのがコツってことか」

「わ、わざと憑りつかせるの?」

「体力に余裕があればな」

 まだ序盤なので体力の減りも少ない。

 今の内に慣れておこうと低級霊を憑りつかせ、霊を目視すると……


ギロッ


「うおおっ!?」

「ひっく!?」

 霊の首が180度回転してこっちをにらんだ。

 視線に気づいたらしい。

 慌ててボタンを連打して低級霊を追い出し、その場を逃げ出した。

 霊が見えるようになることで『霊に見られる』ようになる。

 これも計算された演出だろう。


「お、人だ」


 ようやく生存者らしき人物を発見。

 さっそく話しかけようとするものの、

「……悪霊に憑りつかれてるに100万ドラクマ」

「まあ、そうだろうな」

 だが何らかのアクションを取らないと始まらない。

 カメラを構えたまま接近する。


『わたしきれい?』


「知るか!」

 大きなモーションでこっちを攻撃してきた。

 それをすっと避わし、写真を撮って除霊する。

 だが一発では除霊できない。

 どうやら距離によって威力が変わるらしく、破壊力を上げたいのなら接近して撮影しないといけないようだ。


「シャッターチャンスだ!」


 それと悪霊の体勢によって威力も変わる。

 通常時は抵抗力が高く、こちらへ攻撃を仕掛けてきた直後は抵抗力が下がる。

 つまり敵の攻撃を避わして近くから撮影しないと大ダメージは与えにくい。

 人間に憑りついている悪霊は攻撃力が高く、執拗に追跡してくるので逃げるのは難しい。

 動物にも憑りつくので厄介なことこの上ない。

 周りに目に見えない悪霊がいると最悪だ。

「ぐ、硬いな」


「研究したほうがいいんじゃない?」


「研究?」

「普通のフィルムで撮影すると敵を研究できるのよ。研究すると敵の弱点がわかって、そこに焦点を合わせて撮影すると大ダメージが与えられるの」

「色んな撮影パターンがあるんだな」

 他にもテレビやパソコンなど、その辺にあるオブジェクトを撮影すると新しいアイテムや攻撃方法を閃くことがあるらしい。

 たとえば望遠鏡で射程を長くしたり、監視カメラをハッキングして間接的に撮影できたり、立体映像を投影して悪霊をダマすこともできる。

 また珍しい形態の敵や、敵が同士討ちをしているシーンなどを撮影すると『スクープ画像』になり、高く売ることもできるそうだ。

 奥が深い。

 こうしてシステムをだいたい把握し、プレイすること数時間。

「こっち向いて」


「なんだ?」


パシャ


 振り向いた瞬間、許可も出していないのに顔を撮影された。

「なんだそれ」

「顔を取り込むの」

 どうやら俺のプレイを観ているだけでは飽きたらしく(というか怖い?)、別のゲームをプレイし始めたらしい。

「あはは! 変な顔!」

 どうやら取り込んだ写真が加工される携帯機のゲームのようだ。


『フェイスシューティング』


 ジャンルは3Dシューティング。

 それもただの3Dシューティングではない。

 このゲームも携帯機に連動しており、携帯機を動かすとゲーム内のカメラも動く。

 プレイ中もカメラが作動しており、ゲーム画面にはガラガラの店内が映し出されていた。

 そして、


パリン


 空間がひび割れ、俺の顔をした敵が現れた。

 敵は360度あらゆる方向から襲い掛かってくる。


 つまり背後から攻撃されたら、プレイヤーは現実で後ろを向かないと敵を攻撃できないのだ。


 携帯機を上下左右に動かしつつ、その場でくるくる回る様子はかなり間が抜けている。

 本人も途中でそれに気付いたのか、

「トリプルアクセル!」

 回転するイスに座り、くるっと回転しながら敵を撃墜していく。

 座っただけなので間抜けなプレイスタイルなのは変わらないものの、イスでスムーズに回転できるようになったのは大きい。

 ショットでプチプチとザコを倒し、敵の数が多くなってきたらボムで一掃。

 難易度はかなり低い。

 本体を購入すると無料でついてくるソフトなのでこんなものだろう。


「あ、写真が足りない」


「足りない?」

「敵が1体しかいないから、新しい写真を撮らないと次のステージに進めないのよ」


パシャッ


 フォトヒロのパッケージに描かれているヒロインを撮影する。

 取り込む写真は二次元のイラストでもいいらしい。

 1人でプレイするならむしろそれがメインだろう。

 友達のいないプレイヤーに優しい仕様である。

「あはは!」

 俺の顔写真を撃ちまくるシュールな光景。

 そこにフォトヒロや北方プロジェクトのキャラも混じるのだからカオスなことこの上ない。


「ちょっと貸せ」


「あ、なにすんのよ」

 携帯機を取り上げ、カメラを向ける。

「不公平だろ。プレイヤーなんだからお前も撮れ」

「仕方ないわね。かわいく撮りなさいよ」

「うるさいモデルだな。……もうちょっと上向け」

「こう?」

「もっとだ」

 くいっと手でアゴを上げる。

「ん、いい感じだ」

 ついでに髪をなでる。

「……なんで髪に触るの?」


「タッチ操作だ。……ああ、そういえばさっき誰かさんが言ってたな。胸を触らないでどこを触るんだって」


「ふあああ!?」

 もちろん胸を触りはしなかったが、照れて赤くなったところを逃さず撮影。


 世界一かわいいモンスターが誕生した。


「……なにこの羞恥プレイ。自分の恥ずかしい顔と戦うとかありえないでしょ」

「自分に撃ち勝て」


「意味が違う!」


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