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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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236/382

ソードワールド2.0セット【スモアとマシュマロコーヒー】

「小高い山の上で古い祭壇を発見しました」


「調べてみましょ」

「では判定を」


ころころ


「判定成功。祭壇の中で女性型の人造人間ルーンフォークが眠っており、日の光に反応して目を覚まします。……ようこそ、サイヴァリア神殿へ」


「サイヴァリアなんて神さま、いたっけ?」

「いや、聞いたことないな」

「サイヴァリアさまは私のマスターであり、この地方を守護するマイナーゴッドです」

「マイナーゴッド?」

「神さまになったばかりの存在ですね。マイナーな上に若いので信者もあまりいません。神の力は信者の数に比例するので、信仰する者がいなくなると滅びてしまいます」

「古い祭壇なら100年ぐらい前のものでしょ。もう滅びてるんじゃないの?」

「いえ、祭壇からはかすかに力を感じます。ほんのわずかですが信仰している人がいるようですね」

「でもルーンフォークって妖精の姿も見えないし、神の声も聞こえない種族だよな。番人務まるのか?」

「……信者が減ったことでサイヴァリアさまとコミュニケーションを取るのが困難になってしまい、やむなく眠りについていました」

 なんたる無能。


「姿も見えない、声も聞こえないマスターのために頑張ってたんでしょ。健気でかわいいじゃない」


「そもそもサイヴァリアはなんで番人向きじゃないルーンフォークを番人にしたんだ」

「サイヴァリア様がマイナーゴッドになる前からお仕えしていたので」

「なるほど、それでか」

 ルーンフォークを神の番人にしたのではなく、たまたま仕えていた人間が神になったから成り行きでそのまま番人になったらしい。

「信者を増やしてサイヴァリアの力を復活させればいいの?」

「協力してくれるのですか?」

「できることならね」

「力を復活させる方法って信者を増やす以外にないのか?」

「一番手っ取り早いのは供物を捧げることでしょうか」

「……嫌な予感しかしないんだけど」


「サイヴァリアさまの好物はキツネなので、人間を捧げる必要はありません」


「お前がキツネを狩ればよかったんじゃないのか?」

「キツネはすばしっこいので」

 とことん無能だ。

 俺たちが狩るしかないらしい。


「ひゃっはー、キツネ狩りだー!」


「……このためのマギシューか」

 マギシューはマギテック・シューターの略。

 ガンを撃てる魔動機術マギテック技能と、シューター技能を組み合わせた遠距離狙撃専門のキャラ構成だ。

 今回は俺も瑞穂もルールブック3に載っているサンプルキャラ『タビットの魔道機師』、それもレベル10のデータを使っている。

 おまけに先生から経験点ボーナスをもらって、マギテックレベルを11にしてある。

 マギテックレベル11には射程距離を+50mできる魔法『スナイパーレンジ』があり、Sランクのガン『ランカスター』も支給されていた。

 ランカスターは射程距離60m、魔力+2、命中+1の銃だ。


 スナイパーレンジを使えば最大射程110m。


 通常戦闘で俺たちに手の届かない場所はない。

「ではキツネ狩りをしましょう。まず2dでキツネの距離を決めてください」


ころころ


 3と4


「キツネの回避力は7、シナリオ上はキツネまでの距離はおよそ70mということになります。エアガンで的を撃ち、8点以上取ればキツネに命中します」

「は?」

「エアガンでターゲットペーパーを撃ってください」

「リアルで撃って判定するのか……」

「楽しそう」

 瑞穂がノリノリでエアガンのライフルを手に取った。

「おもっ!?」

「ハンドガンが軽く思えるだろ」

 初めて触ったとき、想像よりもずっと重くて驚いたものだ。


「そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる!!」


「それスナイパーライフルじゃないぞ」

「世界一腕の立つ殺し屋が愛用する名銃なのよ!」

 アサルトライフルはあまり暗殺には向かない思うのだが、漫画やアニメの世界ではこういうのが普通なのだろうか。

「試し撃ちしていい?」

「いいですよ」

 ライフルを構え、スコープを覗く。

 ちなみにこれは本物のライフルで使われるスコープだ。

 本物でもエアガンでも用途は同じなので、実戦用のものが装着できる。

 ただし、


「え、あれ? 何も見えないんだけど。これ、どうすればいいの?」


「スコープの倍率を調節しろ」

「あああ!? なんかもっとわけわかんないことに!?」

 実戦では100mから1Kまで、様々な距離で標的を撃つことになり、そのたびにスコープをいじらないといけない。

 だがエアガンの平均射程距離は30m前後だ。

 範囲が狭い。

 なので範囲の広すぎる実戦用のスコープはサバゲーに向かないのだ。

 それでも実戦用のスコープを愛用するスナイパーは多い。

 ロマンである。

「スコープは斜めについているんですね」


「水平に銃身へ取り付けたら、スコープの目線と銃の弾道が重なりませんから」



ス━━━━

銃━━━━


水平に取り付けると、スコープで見ている場所に弾が飛ばない



   /\

ス━/━━\━

銃/


スコープを斜めにつける(スコープでまっすぐ標的を見ると銃は斜め上を向く)と弾道と目線が重なる

弾丸は空気抵抗や重力で下へ落ちるので、弾道と目線は二度重なる



「よいしょ」

「……ストックを肩に担ぐな」

「だって重いんだもん」

「我慢しろ。ストックは肩に当ててライフルを固定するんだ」

「こう?」

「スコープを覗くときは頭を傾けないほうがいい。頭が傾くと体のバランスが崩れる。それとスコープに近づきすぎだ。覗くときは少し離れた位置からでいい」

「はーい」

 スコープから少し顔を離し、


BANG!


 なかなかいい感じだ。

 しかし、

「……もっと軽いのない?」

「じゃあこっちを使え」

 アサルトライフルは重いようなので、もっと軽い銃を渡す。

「あれ、ぜんぜん当たんない。感覚が違う」

「照準方法が違うからな」

 レンズに映る『+(レティクル)』を標的に合わせるもの、丸いドットサイトで合わせるもの、フロントサイトとリアサイトを重ねて合わせるもの。

 どれを使うかで標的の見え方や狙い方が変わる。


 標的の形や大きさにもよるが、レンズに表示されているレティクルやドットが邪魔で標的が見にくくなったりするからだ。


 標的までの距離を測ったり、素早く照準を合わせたりするのに便利なので一長一短ではある。

 グリップでも変わるだろう。

「左手は添えるだけ」

 右手で引き金を引くのなら左手で銃身を支えないといけない。

 スタンディングで撃つのなら手で直接支えるか、銃身の前方に取り付けたグリップを握って支える。


 握ると力んでしまいそうなので、個人的にグリップは使わないほうがいい。


 最終的には体格と好みの問題だ。

「やっぱりアサルトライフルにしよっと。……って、あれ? ターゲットペーパーには1から10までの数字しか書かれてなくない?」

「はい。なので+2で判定します。当たればイチコロなので、ダメージ判定は必要ありません」

「キツネがいなくなったらまた2dね」

「そうですね。2dを振って新しいキツネの位置を決めます。6ゾロだと120mになり、弾が届かないのでそのプレイヤーは自動的に失敗になります。制限時間は10ラウンド。できるだけ多くのキツネを狩ってください」

「さー、いえっさー!」

 ルールも把握したところで、さっそくライフルを構え、


BANG!


 BB弾でターゲットペーパーを撃ち抜く。


 6点。

 いや、+2なので8点だ。

「ちょろいもんだぜ!」

 さっそく一匹ゲット。

 こっちも負けていられない。


ころころ


 5と6


「げ!?」

 キツネまで110m。

 同じ数値では回避されてしまうので、ど真ん中の10点を撃ち抜くしかない。


BANG!


 ……当然のように失敗した。

 もちろん瑞穂も失敗する。

 これは射撃の腕だけでなく運も重要なゲームだ。

 サイコロの神さまに嫌われると厳しい。

 ……結局、2人で10匹も狩れなかった。

「これで足りる?」

「マイナーゴッドとして活動するには不足していますが、コミュニケーションを取るだけなら充分です。しばらくすればサイヴァリアさまにコンタクトできるようになるでしょう。ありがとうございます。ルーンフォークが深々とお辞儀をしました」

「苦しゅうない」

「キツネ狩りに明け暮れていたので、あたりはすっかり夜になっていました」

「じゃあフラッシュライト」

 半径10mを魔法の光で照らす。

「ここで判定を」

「このタイミングで?」


ころころ


「判定成功。夜の闇にまぎれて蛮族が近づいてきている気配を感じます」

「……フラッシュライトの範囲外か」

「ルーンフォークは暗視があるので姿を確認できます。では知識判定と先制判定を」


ころころ


「……知識判定失敗。先手も取られましたね。正体不明の魔物が、遠距離から魔法を撃ってきます」

「くそ!」

 さいわい魔法の威力は大したことなかったものの、

「じゃあ接近」

「敵は逃げます」

「追いかけます」

「逃げます」

 ……距離が縮まらない。

「撃つしかないんじゃないの?」

「射程距離にいるっていっても、フラッシュライトの範囲外だぞ。見えないのにどうやって当てるんだ」


「ルーンフォークには見えてるでしょ」


「は?」

「ルーンフォークに指示してもらって撃てばいいじゃない」

「スイカ割りの要領ですね。では目隠ししてエアガンを撃ってください」

「……当たるのか、これ」

 真横や真後ろから照準とターゲットペーパーを見比べ、

「もう少し右だ」

 なんとか微調整していく。

 そして、


BANG!


「外れです」

「……これは当たらんな」

「昔の偉い人はこう言いました。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」

「1ラウンドに2発しか撃てないんですけど」

「大丈夫よ。死なない限り撃ち続けられるんだから」


 下手な鉄砲死ぬまで撃てば当たる。


 このありがたい教訓を胸に刻み、


BANG!


 どちらかが死ぬまで撃ち続けた。

「あ、クリティカルですね。落ちました」

「……ようやく終わりか」

 敵のHPはそれほど高くなかったものの、命中率が死ぬほど低かったのでとてつもなく苦戦した。

 暗視がどれだけ重要かよくわかる。


 そして翌日。


「サイヴァリアさまは力を蓄えるため、まだ眠っておられます」

「力が復活するのはしばらく先か」

「ではここで判定を」

「またか」


ころころ


「判定成功。マイナーゴッドの力を狙っているのか、山が敵に包囲されています。その数30」

「30!?」

「知識判定を」


ころころ


「アイアンゴーレムが30体、指揮しているモンスターの正体は不明。彼我ひがの距離は約50m。祭壇は山の上に設置されているため、ゴーレムは坂を上ることになり、全力移動をしても12mしか進めません」

「逃げましょ」

「山を囲むようにゴーレムが配置されているので、徒歩で逃げることはできません」

「……戦うしかないのか。でもどうやって勝つんだ、この状況で」

「正体不明のモンスターがゴーレムに指示を出しています。未知の言語なので詳細はわかりませんが」

「そういえばゴーレムみたいな魔法生物は知能が低いから簡単な命令しか理解できないんだよな」

 ソードワールドの魔物データには知能という項目がある。


 知能の種類は『なし』、『動物並み』、『低い』、『人間並み』、『高い』、『命令を聞く』の6種類。


 項目だけ見るとバカばっかりだ。

「マスターを倒せば動きは止まるんじゃないの?」

「そうかもな」

 ……ただしマスターの命令の仕方によっては、マスターが死んだ後もゴーレムが行動する可能性はある。

 いずれにしろ、現状ではマスターを倒すしか道はない。

「えーと、全力移動で12、24、36、48だから……。攻撃されるのは5ラウンド目ね」

「その前にマスターが襲ってくるだろ」

「あ、そっか」

 さすがにマスターの攻撃一発で死ぬことはないだろうが、正体がわからないので油断はできない。

「では外へ行きましょう」

「は?」


「実際に12、24、36、48mの距離で撃ってもらいます」


「外で狙撃するの!?」

「……エアガンで48mはギリギリですよ。うちのエアガンではたぶん届きません」

「そうなんですか?」

「はい。安全のためにエアガンはパワーを規制されてますから。アサルトライフルもスナイパーライフルも飛距離は同じです」

「でも上からなら届きますよね?」

「そりゃ上から撃てば届きますけど……。どこから撃つつもりですか?」


「すべり台の上から」


 この場には知能の低い人間しかいないらしい。

「外へ行く前に腹ごしらえしとくか」

「じゃあスモアね」

「スモア? グラハムクラッカーにマシュマロはさむやつか?」

「ぐらはむ? チョコビスケットじゃないの?」

「別にチョコビスケットでもいいぞ」

 はさむのはあぶったマシュマロだ。

 余熱でチョコを溶かせば、口当たりがよくなり甘みも増す。

 サクサクでカリカリでふわふわ。

 それがスモアだ。


「マシュマロを使うならコーヒーにするか」


 エスプレッソにスチームドミルクとホイップクリームをのせ、さらにその上に小さ目のマシュマロをのせる。

「わ、まっしろ」

 白で覆い尽くされているので、一見するとコーヒーとは思えない。

 フルーツ味やチョコ味のマシュマロにすれば見た目に変化も出るし、味の幅も広がってオススメだ。

 甘いマシュマロやクリームと苦いエスプレッソが混ざり合うのがまたいい。

「さて……」

 腹ごしらえもすみ、外へ出かける。

 とりあえず一射目はすべり台から撃つことになった。

「俺の後ろに立つな」

「……世界一腕の立つ殺し屋のマネはもういい」

「はーい。スナイパーライフルって、こうやって伏せて撃つのよね?」

「ああ。伏射プローンってやつだ」

 地面に伏せ、両肘で上半身を起こし、ライフルを構える。

「三脚ないの?」


「取りに戻るのが面倒くさい。どうしても三脚トライポッドがほしいんなら、こういう技もあるぞ」


 3本の木の枝を組み合わせ、ヒモで結んで即席のトライポッドを作る。

「なにこれかっこいい」

「エアガンを直接乗せるなよ」

「なんで?」

「枝も銃も硬い。硬いもの同士だと密着しないから安定しない。間にタオルみたいな柔らかいものを挟んで密着させるんだ」

「へー」

 アドバイス通りにトライポッドとエアガンの間にタオルをはさんでライフルを安定させる。

 これで準備は完了。


寒夜かんやに霜の降りるごとく!」


 引き金を引くときのコツを叫びながらライフルを撃つ。

 ……叫ぶことでトリガーを引く指が力み、まったく意味はないが。

「外れです」

「ちっ、右に三度ずれちまったか」

「三度どころじゃねえよ」

 次は俺の番だ。

「スリング使ってみるか」

 スリングは銃につけているヒモやベルトだ。

 銃を持ち運ぶとき(特に本物の銃は重いので)便利だ。

 狭い場所へ突入するときも、スリングがあれば長いライフルなどから手を放してハンドガンを抜ける。

 スリングを腕やベルトに巻いて銃を固定すれば射撃の安定性も増す。

 慣れない内は邪魔になるだろうが、慣れれば慣れるほど応用が利く。

 銃には欠かせないアイテムなのである。


 トライポッドを使わないので、ライフルの下に肘を置き、左手の人差し指と親指で支える。


 右肘にはほとんど体重をかけない。

 ストックを肩に押し当て、スリングの位置を調節してライフルを固定。

 そして引き金を引く。


BANG!


 ……まあ、48mの遠距離狙撃は初めてなのであっさり外してしまったのだが。

「では36mです」


 ゴーレムたちが12m前進する。


 平均射程まで近づいた。

「他にも変わった撃ち方ないの?」

「パートナーシューティングならできるぞ」

「なにそれ」

「パートナーの肩にライフルを乗せて撃つ」

「それやりたい」

「失敗しても知らんぞ」

 架台が人間なので、どうしても鼓動と呼吸で体が動く。


 なので射手とパートナーが息を合わせないと逆に命中率が下がるのだ。


「ひっひっふー」

「……それで合わせるのかよ」

 わかりやすいにこしたことはないが、緊張感に欠ける。

 とりあえず俺がスリングをつかんで銃身を肩に密着させ、ライフルを安定させると、

『ひっひっふー』

 ラマーズで呼吸を合わせて狙撃。


BANG!


「あああ!?」

 息が合わなかったのか、またしても外れ。

「……バックパックを使って撃ったほうがいいかもな」

「バックパック?」

「バックパックは柔らかいから安定させやすい。膝立ちになってバックパックの上にライフルを置き、角度をつけて上から撃つ」

「いかにも歴戦のスナイパーって感じ」

 あえて三脚ではなくバックパックを使って撃つのが、狙撃に慣れている感じがしてプロっぽい。


BANG!


「ぐ」

 しかし的にかすりもしなかった。

 かなりまずい。

 残りは24と12と0。

 3ラウンドで仕留めきれるか?


「くそ、当たれ!」


ターン!


「よし!」

 24mにして初ヒット。

 ターゲットペーパーではなく、狙うのはただの的なのでダメージ計算はサイコロでやる。

 1ラウンドごとに大群が近づいてくる恐怖はあるものの、近づくほど当てやすくなるゲーム展開。

 ギリギリ感があっていい。

「ヒット!」

 12mでも確実に的へ当て、とうとう0距離。

 いや、正確には2mだ。

 的をターゲットペーパーに変更し、当たった場所でダメージ計算する。


「リピートアクション!」


 ここでレベル10の魔法リピートアクション発動。

 術者の分身を作り出し、術者と同じ主動作をする魔法だ。

 1ラウンドに1回、しかも強力な魔動機術を発動するのに必要なマギスフィア(大)を消費して使う大技である。

 これでほぼダメージが倍。

 マギスフィア(大)は俺も瑞穂も1つしか持っていないので、リピートアクションを使えるのは1回だけだ。

「クリティカル!」

 クリティカルでダメージを上乗せしつつ、最後の弾丸をマスターに叩き込む。

「算出ダメージ36! これでどう!?」


「ざんねん。落ちませんでした」


「ぎゃー!?」

「頑張ってアイアンゴーレムの攻撃を避わしてください」

「30体もいるのよ! 避わせるわけないでしょ!」

「いや、可能性はある」

「え」


「そうですね。TRPGではすべてをアナログで処理します。ですが30回も行為判定していると、時間がいくらあっても足りません。なのでこういう場合、サイコロを振るのは最初の一度だけ。その達成値をすべてのアイアンゴーレムに適用します」


「……つまりその達成値でゴーレムの命中を超えることができれば、30体の攻撃をまとめて避わせるってこと?」

「そういうことです。では攻撃を開始しましょう。桃園さんへ集中攻撃」

「いやー!?」

 アイアンゴーレムの命中は12。

 対するこっちの回避は8。

 かなり厳しい。

「固定値で計算するとアイアンゴーレムの命中は19。避わすのが難しいので、ここは2dを振りましょう」

 19より高くなる可能性もあるが、それは仕方ない。

「いきます」


ころころ


 2ゾロ


「16ですね」

「う、8以上出さないと避わせないの?」

「確率は40%だ。いける」

「そんなに高いんだ。てい!」


ころころ


 4と6


「当たらなければどうということはない!」

 見事にアイアンゴーレムの連打を避わした。

 TRPGだからこそ起きる奇跡である。

「では続いて左半身の攻撃です」

「はあ!?」


「アイアンゴーレムは右半身と左半身、2部位に分かれているモンスターなので。それぞれの部位で1回ずつ主動作ができます。というわけで『狙い打つ』でダメージを-8するかわりに、命中を+4して桃園さんへ攻撃」


「ぎゃー!?」

 さすがに+4の効果は大きく、回避判定に失敗して撲殺された。

 撲殺するのに必要なアイアンゴーレムはせいぜい半分。

 ……とうぜん残りのアイアンゴーレムは俺に攻撃してくる。

 瑞穂とステータスは同じなので回避はほぼ不可能。

「……終わったな」

「戦わずに逃げるべきでしたね」

「いや、逃げられないから戦ったんですけど」


「マギテックレベル8の魔法『グライダーマント』なら、移動速度20mで空を飛べますよ? 山の上にいるので、アイアンゴーレムの頭も簡単に飛び越せますし」


「あ」

 気づいた頃には時すでに遅し。


ころころ


 ……あえなく俺もアイアンゴーレムにやられてしまった。


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