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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ソードワールド2.0セット【グラタンとラプサンスーチョン】

 本リプレイは「ソードワールド2.0」の公式シナリオである、「フェアリーガーデン 妖精たちの空中庭園」を使用しております。

 該当シナリオの内容に触れておりますので、未プレイの方はご注意ください。

 また、元のシナリオの一部を変更しております。


「暇だからこれやりたい」


『フェアリーガーデン ―妖精たちの空中庭園―』


「なんだこれ」

「ソードワールドのゲームブックみたいなやつ。ゲームブック風だからGMなしでもプレイできるんだって!」

「なら先生いなくてもプレイできるな」

 ルールブックでサンプルキャラの魔法拳士と妖精使いを選び、さっそくプレイ開始。

 PCたちは妖精郷なる場所に迷い込むと、古代種妖精のケットシーと出会った。


『ボクの名前はグラタン』


「おいしそう」

「……長くなりそうだから今の内になにか作っておくか」

「やった!」

 ここはやはりグラタンだろう。

 玉ねぎとイカ、エビ、アサリを炒め、ゆでたマカロニと一緒に耐熱容器へ敷き詰める。

 そしてベシャメルソースをかけ、


「あ、トムとジェリー!」


「こういうところだけちゃんと見てんな」

 トムとジェリーでよく登場する穴の開いたチーズをおろし金でおろす。

 このチーズはエメンタール。

 スイスのチーズだ。

 グラタンやチーズフォンデュ、キッシュなどでよくお世話になっている。

 ガスの気泡によってこのような穴が開くという。

 最近は別の説のほうが主流らしいが、詳しいことは知らない。

 あとはパン粉をまぶし、

「これでよし、と」

 オーブンで焼くだけ。

 焼きあがるまでにゲームを進めておいたほうがいいだろう。


『そうだ。まずはお客さんのことを教えてよ。お客さんはどうしてこの妖精郷へ?』


「ここでサイコロ振るのか」

「私が振る!」

「好きにしろ」

「なにが出るかな♪ なにが出るかな♪」


ころころ


 君はエマ・ローズワースという名の女性を探してほしいという依頼を受けた(報酬は1人あたり500G)。

 ただしすでに1ヶ月という時間が経過しているため、エマが生存しているとは限らない。


 その場合には、何でもいいのでエマが死んでしまったという証拠を見つけてきてほしいと両親は懇願する。


「……これ、両親はほとんど諦めてるわよね」

「まあ、1ヶ月経ってるからな」

 こうしてエマを探すことになったPCは、エマが行方不明になったという山に登り、気付いたら妖精郷に迷い込んでいたらしい。

 妖精郷でも異変が起こっていたらしく、妖精王の城が湖に沈んだり、妖精郷を作ったアラマユが姿を消してしまったそうだ。

 そのため空間が不安定になっているのだという。


「妖精郷から脱出するためには、湖底に沈んでいる転移の魔方陣を浮上させて、魔方陣の管理人であるフィットチーネ……」


「おいしそう」

「うるさい」

 ……魔方陣の管理人であるフィットチーネという名のケットシーを探さないといけない。


『妖精郷は確かに崩壊に向かっているけれど、この先も数百年は保つと思うから、帰るなんて言わずにここで暮らさない?』


チン


「さしずめ『おいしいグラタンもあるよ』ってところか」

「う……、いい香り」

 ちょうどいいタイミングでグラタンが焼きあがった。

 フランス語で『おこげ』を意味するだけあって、チーズやホワイトソースの焦げた匂いが食欲をそそる。

「濃厚なチーズと相性のいい紅茶は、クセの強い香りのラプサンスーチョンだな」

「この世界にラプサンスーチョンあるの?」

「似たようなのはあるだろ。……で、どうする? 帰る方法を探すか、それとも妖精郷で暮らすか」

「ここで暮らすを選んだらどうなるの?」


 君の冒険はここで終わりだ!


「特別なエンディングは用意されてない」

「先に進むしかないわけね。……あつっ!?」

「出来立てだから火傷するぞ」

 エメンタールは加熱するとよく伸び、香ばしくて味はまろやか。

 マカロニやシーフードにからませれば、即席のチーズフォンデュだ。

 これにラプサンスーチョンを合わせると、妖精郷でグラタンを食べながら暮らすのも悪くない気がする。


『残念だけどラザニアとフィットチーネがどこにいるかはさっぱりわからない。でもペンネやニョッキなら、なんとなく想像はつくからそっちから探してみてよ。もしかしたら、あいつらなら、ラザニアとフィットチーネの居場所に心当たりがあるかもしれないし』


「ペンネ、パスタ、ドリア、ニョッキを探せばいいのね」

「どいつから探す?」

「ドリア」


「……お前、ドリア食いたいだけだろ」


「グラタンにお米つめればいいだけでしょ」

「そんな単純なもんじゃない」

 そもそもグラタンを食った後によくドリアまで食おうと思ったものだ。

 さすが三大欲求の1つ、求め始めるとキリがない。

「さて……」


 冒険は『固定:1七色猫のおもてなし亭』から始まった。


 ドリアは風車の谷にいるという噂だ。

 『31:風車の谷』のエリアを決定し、MAP上に記入せよ。

「どういうこと?」

「自動生成ダンジョンみたいなもんだな。MAPは9つのエリアに分かれてて、サイコロの目で風車の谷のあるエリアが決まるんだよ」

「プレイするたびにMAPが変わるってことね」



    1~2  3~4  5~6


1~2 北 西   北   北 東



3~4  西   中 央   東



5~6 南 西   南   南 東




「なにが出るかな♪」


ころころ


 1d、サイコロ1つを2回振る。

 1つ目で縦の、2つ目で横のエリアが決まる。

 出目は5と1。

 最初の5の目で北東・東・南東の縦のエリアが決まり、次の1で横のエリアが決まって、風車の谷は北東に配置された。

 現在地は中央エリアの固定1:七色猫のおもてなし亭。

 なお1つのエリアには6つの場所パラグラフしか配置できない。

 中央エリアには七色猫のおもてなし亭と『固定2:妖精王の城』がすでに配置されているので、パラグラフは4つしか配置できない。

 北東エリアには風車の谷が配置されたので、残りパラグラフは5つだ。


 移動は隣接する縦か横のエリアにしかできないので、北東にある風車の谷へ行くには、まず北か東へ移動しないといけない。


「どっちにする?」

「北へ!」

 北にも東にもまだパラグラフが配置されていない。

 なので1dを2回振ってパラグラフを配置する必要がある。


ころころ


 6と2。

 62のパラグラフは【のどかな果樹園】。

 これで北のエリアにのどかな果樹園が配置された。

 異なるエリアの道がつながっていないパラグラフへ移動する場合、移動判定をする必要がある。

 2d、つまりサイコロを2つ振る。



2~3 異なる隣接するエリアのまったく新しいパラグラフに移動する


4~5 移動先に指定したパラグラフの存在するエリアの、まったく新しいパラグラフに移動する


6以上 指定したパラグラフに移動する



ころころ


 1と3で4。

 4~5の『移動先に指定したパラグラフの存在するエリアの、まったく新しいパラグラフに移動する』になった。

 北部エリアへ移動することはできたが、のどかな果樹園には移動できなかったということだ。

 新しいパラグラフを配置しないといけない。


ころころ


 パラグラフは赤い河。

 こうして北エリアに36:赤い河が配置され、七色猫のおもてなし亭と道がつながった。

 道のつながった場所へ移動する場合、移動判定をしなくてもよくなるらしい。

 七色猫のおもてなし亭から赤い河へ移動する場合は道に迷わず目的地へたどり着けるということだ。


【36:赤い河】


>河に近づくならイベント決定表へ



イベント決定表


~13 [R]流れてきた箱

14~16 ノームのお願い

17~ [R]大砂流

自動 [R]砂上の敵(+★★/10回まで)



「Rってなに?」

「何度でも起こるイベントらしい。つまりノームのお願いは1度しか起こらないわけだな」

「★は?」

「これは経験点だ。星1個200点」

「自動は?」

「イベント後に自動的に起こる強制イベントだな。今回のイベント決定表の場合、どのイベントをこなしても、その後に砂上の敵と戦わないといけないってことだ」

「サイコロは何個振ればいいの」


「1dだ。それにPCの冒険者レベルの平均を足す。……ん? 2人とも冒険者レベル2だから、流れてきた箱と砂上の敵しかないぞ」


「じゃあ箱ね」

 何を出しても同じではあるが、


ころころ


 一応サイコロを振っておく。

 5だ。

 冒険者レベル2+5で流れてきた箱のイベント発生。

 木箱が流れてくる。

 木箱を開けるなら1dして『箱の中身決定表』で中身を決定せよ。


ころころ


 箱の中ではルーンフォーク1体が眠っていた。

 1dでルーンフォークの外見を決定せよ。



1 成人男性型

2~3 少年型

4~5 少女型

6 成人女性型



「少女! ぜったい少女!」

「……なんでだよ」

「かわいいは正義!」

 天に祈りながらサイコロを振る。


ころころ


 4


「きたー!」

 箱を開けると、少女型ルーンフォークは目覚め、君またはランダムに選んだPC1人をご主人様と認識する。

「ランダムだとよ」

「奇数が私、偶数があんたね」

「わかったわかった」

「半! 半!」

 再び祈りながらサイコロを投げる。


 5


「イエス、マイマスター!」

「それはマスターのセリフじゃない」

 以後、ルーンフォークは主人と認識したPCに従い、行動する。

 ルーンフォークにはこれまでの記憶がないため、名前は主人になったPCが付けても構わない。

「アリスね」

 ルーンフォークはルールブック1の48~51ページにある『ルーンフォークの魔動機師』と同じデータを持ち、PCと同じように成長するらしい。

 自動イベントでは何も起こらなかったので、アリスを連れて風車の谷へ向かう。

 ……だが移動に失敗して凍て付く山へ。


【25:凍て付く山】


ころころ


 イベント決定表を振ると、『妖精のいたずら』が発生した。

 雪に混じって無数の妖精たちが飛んできて、冷たい魔法のキスをしていく。


ころころ


 1日の間、語尾が『ピヨ』になる。


 妖精以外の相手と話すときは『バカにしてるんですか?』と言われる。

 ただし情報を聞き出せなくなったりはしない。

「……なんだこれ」

「ピヨつけなさいよピヨ」

「……なんだこれピヨ」

 シュールないたずらだ。

 特に実害がなかっただけマシか。

 ピヨりながら風車の谷へ向かう。


「えーと、同じエリアで道のつながってないパラグラフへ移動するときは……ピヨ」



2d


2 異なる隣接するエリアの全く新しいパラグラフに移動する

3~4 同じエリアの新しいパラグラフに移動する

5以上 指定したパラグラフに移動する



ころころ


 4と6で10。

 移動成功だ。

 待望の風車の谷へ。


『ドリアさんなら、しばらく前に出かけたよ』


 村人はドリアが走り去った方角を指さして教えてくれる。

 ドリアは同じエリア内にある別のパラグラフに移動する。

「凍て付く山ピヨ」

 道がつながっているので移動判定なしに移動できた。

 ドリアに追いついたわけだが、まずイベントを処理しないといけない。


ころころ


「……また妖精のいたずらピヨ」

「これ、私は結構好きピヨ」


ころころ


 1日の間、君の持っている武器は命中すると『ピュコーンッ!』と鳴り、クリティカルすると『キュイキュイキュインッ!』と鳴る。

 この効果が失われるまで、君は武器を変更できない。


「……もう意味が分からないピヨ」

「楽しいピュコーンッ!」

 使い方を完全に間違っている。

 ちなみに妖精のいたずらの効果は重複する。

 ただし同じ効果は重複しない。

 ……厄介ないたずらだ。

 とにかくイベントを処理したので、ドリアイベントのクライマックスを処理する。


『ゲゲゲッ、見つかってしまいましたわ! かくなる上は……』


 ドリアが小瓶を投げつけてきた。

 地面に落ちて砕けた小瓶からは、魔法生物が現れる。


『オーホッホッホッ! この子たちに勝てるかしらね?』


 (剣)ガストルーク1体とガスト2体だ。

 GMがいないので魔物知識判定には自動的に成功する。


ころころ


 あっさり先制ゲット。

「戦闘開始ピヨ!」

「通常移動で殴るピヨ」


ころころ


「ピュコーンッ!」

 2連撃で22ダメージ与えてガスト1体撃破。

「アリスのクリティカルバレットで削って、私がトドメ刺すピヨ!」

 アリスの攻撃は命中、ガストのHP残り4。

「私のターンピヨ! 接近してショートソード!」

 命中3しかないのに普通に殴りに行った。


ころころ


 運よく命中。

「ピュコーンッ!」

 ガスト2体目撃破。

 残るはボスのガストルークだけ。


ころころ


 魔物の行動決定表を振る。

「どんとこいピヨ!」

 ガストルークは瑞穂を近接攻撃。


ころころ


「ピヨー!?」

 回避失敗。

「ゆ゛る゛さ゛ん゛ピヨ!」

「落ち着けピヨ」

 まずは俺とアリスで攻撃。


ころころ


 2人合わせて20ダメージ。

 想定外の低さだ。

 瑞穂で残り8を削れるだろうか。

「ショートソードで攻撃ピヨ!」

「ちょっと待て、なんで魔法使わないピヨ!?」

「武器じゃないと効果音が鳴らないピヨ!」

「バカかお前はピヨ!」


ころころ


 こちらの制止もむなしく、サイコロは振られてしまった。


「キュイキュイキュインッ!」


「クリティカル!?」

 ショートソードのC値9を超えたので、もう1度2dを振ってダメージを上乗せできる。


ころころ


「キュイキュイキュインッ!」

「また!?」


ころころ


「ピュコーンッ!」

 さすがに3連続クリティカルはなかったものの、

「ピヨー!」

 前衛ではないはずの妖精使いが、ピヨピヨ鳴きながらショートソードでキュイキュイキュインッしてガストルークをバラバラにしたのだった。

 文字にすると意味がわからない。


『……オーホホホホホホホッ! やりますわね。ところであなた。グラタンに頼まれて、アタシを連れ戻しにきたのですわよね?』


「そうだピヨ」

 ピヨで答えた場合のリアクションは書いてないが、たぶん『バカにしてますの?』と言われるだけだろう。


『では参りましょう』


 もし君がさっき魔法生物をけしかけたことを非難するなら『あなたの腕前を確かめさせていただいただけですわ』と笑う。

 面倒くさいケットシーだ。

 これでようやく1人確保。

 ……まだミッションを1つクリアしただけなのに、えらく疲れてしまった。


「この調子で本当にエマを連れ帰ることができるのか? ……ピヨ」


 色々な意味でぐったりしつつ、赤い河から七色猫のおもてなし亭へ移動。

 道がつながっているので、ランダムイベント判定だ。


ころころ


 イベント発生。

 妖精たちが振り撒く光の粉を浴びて魔法にかかる。

「……また妖精のいたずらピヨ」

 うんざりしながらサイコロを振ろうと思ったら『この表の効果はパーティ全体に適用される』の文字が目に入った。

 妖精のいたずら表Aにこのような注意書きはない。

 ということは、


「俺はピヨって言わなくてもいいんじゃねえか!」


「気づくのが遅すぎるピヨ」

 半ば呆然としながらサイコロを振る。


ころころ


 どこからともなく現れた妖精たちといっしょに歌って踊る。

 妖精は『妖精の粉』または『妖精の酒』のいずれか好きなほうを1つだけくれる。

「妖精に変身できる粉のほうがいいな」

 酒はアルコール度数が高く、使っても酔っぱらって眠るだけ。

 酒好きの妖精が出てきそうだが、ここは妖精の粉を入手しておく。

「これでミッションコンプリート、と」

 七色猫のおもてなし亭に帰還。

 ドリアのミッションを達成して経験点を獲得し、レベルを上げ、次のミッションへ。


『ペンネは薬草園をとても大切にしていたから、きっとそこにいるんじゃないかな』


ころころ


 11:薬草園は北西エリアに配置された。

 まず北部エリアののどかな果樹園に寄り、イベントを処理する。

 パック(小さな男の子のような姿をした木霊の精)×1体に遭遇した。

 パックは3つの果実の中に1つだけすっぱいものがあるので、それを当てるゲームをしようと持ちかける。

 ゲームをするなら1・2・3の果実の中から1つを選べ。

 このとき1dして酸っぱい果実を決定しておくこと。

 出目が1~2なら1、3~4なら2、5~6なら3の果実が、それぞれ酸っぱい。


 もし果実を観察するなら見識判定(目標値10)せよ。


 成功すると酸っぱい果実を見分けることができる。

 選んだ果実がすっぱければPCの勝ちだ。

 まずはセージ技能1と知力ボーナス2のあるアリスで判定。


「酸っぱい果実にご用心!」


 どこぞの駄菓子のようなことを叫びながらサイコロを振る。


ころころ


 1ゾロ。


「自動失敗だな」

「うー、酸っぱい果実にご用心!」

 次にセージ技能も知力ボーナスもない瑞穂で判定する。


ころころ


 1ゾロ。


「ピヨー!?」

「マジか、お前」

 まさかの2連続自動失敗。

「あ、人間の種族特徴の『運命変転』が使えるピヨ!」

「ここで使うのかよ」

「ペンネ探しの推奨レベルは1だし、使う機会なんてあんまりないピヨ」

「それもそうだな」

 運命変転は1日に1回だけサイコロの目をひっくり返すことができる能力だ。

 それも2d、両方の目を引っくり返せる。

 1の裏は6。

 つまり6ゾロで自動成功である。


 酸っぱい顔をする君を見て、パックは『あ~あ。負けちゃった~~』と笑いながら言い、『風精鉱』×1と『パックの宝石』×1をくれる。


 そこそこ価値がありそうなアイテムだ。

 というか運命変転まで使ったのだから価値がないと困る。

 イベントを処理したので、次は自動イベントで『“蜂蜜姫”ラナの店』に寄る。


ラナの店のメニュー


3G クルミと葡萄のパン

4G 甘々みかんのムース

5G 蜂蜜リンゴのパイ

6G 苺のふわふわマフィン

7G 蜂蜜漬け梨のクリームケーキ


 ラナが作る料理自体に特殊な効果はない。

 どれでも3日の間はおいしく食べられる。

 しかし妖精には大人気なので、妖精に渡すと喜んでもらえる。

 運が良ければなにかいいものをもらえるかもしれない。

「安いから全部買っとこう」

「そうね」

 イベントが終わったので薬草園へ向かう。


『待てや、この薬草泥棒! 逃がさへんでぇ!』


 薬草園ではケットシーとゴブリンが揉めていた。


『おっ! ええところに来た。薬草泥棒や、やっつけるの手伝うて』


 敵はゴブリン2体。

 1ラウンドキルであっという間に終わった。

『こいつらの仲間が逃げたんや。すまんけど、追いかけて薬草を取り返してきてくれへんか? 頼むわ』

 蛮族は同じエリアにある別のパラグラフへ移動する。


ころころ


 【雲海の岬】だ。

 移動判定に成功し、イベントを処理する。


ころころ


「……出たぞ」

 お馴染みの妖精のいたずらだ。

 強い風が吹き抜ける。

 気が付くと君はたくさんの妖精たちに運ばれて空を飛んでいる。


ころころ


 気が付くと【22:光の樹】に移動している。

「げ」

 出目によって色んなパラグラフへ飛ばされるいたずらだ。

 どんな出目であっても『どこかへ飛ばされることは確定』している。

 しかも飛ばされたパラグラフには道がつながらない。

「悪質な嫌がらせピヨ!」

「……妖精にとってはいたずらなんだろうよ」


 もしかしてこのシナリオの一番の敵は妖精のいたずらなんじゃなかろうか。


「そういえばもう1日経ってるんじゃないか?」

「もうピヨって言わなくていいピヨか? あ……」

 ……完全にピヨがクセになっている。


 気を取り直して蛮族を追う。


ころころ


 雲海への移動判定成功。

 難関は通常イベントだ。

「5以上だ! 5以上こい!」


ころころ


 4


「あああ!?」

 悪夢の妖精のいたずら。

 やはり運命変転は温存しておくべきだったか。


ころころ


 再び【22:光の樹】へ飛ばされた。

 さっさと移動して雲海に戻る。

「さて……」

 三度目の正直。

 妖精のいたずらにならないように、新しいサイコロを振る。

「お願い!」


ころころ


 6


「やった!」

 シルフとのイベントが発生したが、妖精のいたずらで疲れているのでパス。

 自動イベント【空の散歩者】を処理する。

 なにかが空を飛んで近づいてくる。

 もう一度イベント決定表を参照せよ。


 このとき1dに-3の修正を加える。


「はあ!?」

 1dの結果、すでに発生したことがあるイベントになった場合も、そのイベントが発生する。

「……妖精のいたずらを回避するには8以上の達成値が必要だ。冒険者レベル3に6を足しても9だぞ」

「-3したら絶対に妖精のいたずらで飛ばされるじゃない!」

「詰んだな」


「では魔物知識判定をしてみましょう」


「うわ!?」

 いつの間にか先生が後ろに立っていた。

「散歩者の知識判定すればいいの?」

「そうです」


ころころ


「フェアリーテイマー技能を持っているので自動成功。散歩者の正体は風の巨人ジンです」


「巨人人?」

「……風の巨人のジンです」

「よくわからないけど、とにかく倒せばいいのね」

「ちょっと待て。こいつレベル17だぞ」

「17!? どうしようもないじゃない!」

「いや、こいつは風の妖精だ。妖精語が通じる」


「……っていうことは、先生がGMをしてくれればこいつと交渉できるのね!」


「そうなりますね」

 今まではGMなしでプレイしていたからプレイヤー間で相談するのが精いっぱいで、シナリオに書いてあること以外はできなかった。


 事実上、ただのゲームブックである。


 だが今は違う。

 プレイヤーがどれだけ無理な要求をしようとも、GMが認めればそれが通るのだ。

「ジンが近づいてイベント決定表を振りなおすってことは、風に飛ばされて岬のスタート地点に戻されるってことですか?」

「そうですね」

「つまりジンの散歩を停めればいいのね。ヘイ、ジン!」

 タクシーを止めるように、手を挙げながら妖精語でジンに話しかけた。


「おお、久しぶりに妖精郷に客人か」


 先生が顔に似合わぬ渋い声を出す。

「はてさて、わしに何か用かな?」

「えーと……」

 停めることだけで、何を話すか考えていなかったらしい。

「これ、本来はイベント決定表の17で発生するイベントですよね? じゃあ情報を聞くことできるんですか?」


「高レベルにならないと発生しない★3つイベントですから、17と同じことはできないことにしましょう。ここでジンの宝石を手に入れたらゲームバランスが崩れますし」


 イベント決定表は冒険者レベルの平均+1d。

 つまり1dが6だとしても、冒険者レベルの平均が11でなければ発生しないイベントなのだ。

 ジンのレベルが17なのを考えると、同じことができないのも当然だろう。

「ただジンをタクシー代わりにして【23:虹の根元】に運んでもらうことはできます」

「それだと妖精のいたずらと変わりませんから!」

 もう妖精にわけのわからない場所へ飛ばされるのはごめんだ。

 どうせ運んでもらうのなら、


「私を薬草泥棒のところに連れてって!」


「まあ、虹の根元よりはそっちだよな」

「運ぶだけで一緒に戦わないが、それでも構わないのなら運んでやろう」

「OK」

 こうしてジンに蛮族のもとへ運んでもらい、ペンネミッションのクライマックスに突入した。

「君たちは薬草泥棒らしいズダ袋を担いだ蛮族を発見する。蛮族を倒し、盗まれた薬草を回収せよ」

 敵は(剣)ゴブリン1体とゴブリン1体。


「キュイキュイキュインッ!」


 妖精への鬱憤うっぷんを込めてショートソードを一閃(キュイキュイキュインッ! と叫んでいるが、クリティカルではない)。

 俺たちに八つ当たり気味にボコられ、哀れなゴブリンは力尽きた。

 南無。

「さらに帽子を手に入れました。帽子の裏には交易共通語で『エマ・ローズワース』と刺繍されています」

 エマの帽子×1を獲得。

 エマの貴重な手がかりだ。


「この遺品を両親に届ければクリアね」


「いや、まだ生きてるかもしれないだろ」

 薬草園に戻ってペンネにズダ袋を返す。

「エマの帽子を見せますか?」

「はい」


「ペンネは帽子に見覚えはないと言います。たぶん蛮族どもがエマって名前の誰かを襲うて奪うたんちゃうかな? あるいは拾ったんかもしれへんけど。……もしこのエマっちゅうヤツのことが気になるんやったら『鏡の池』を探すとええわ。鏡の池はだれかの持ち物を沈めると、いまその人がどうしてるかわかるっちゅう場所なんや。まあ、どこにあるかは知らへんけどな」


 これでミッション完了。

「よし、戻るか」

「そうね」

 のどかな果樹園へ移動。


ころころ


 ランダムイベント発生。

 見たこともない小道があるのを見つけて移動判定。


ころころ


「あ」

 【44:鏡の池】だ。

 タイムリーな場所に飛ばされた。

 自動イベントで三日月形の池へ。

「池に探してる人が映るんだっけ?」

「はい」

 手掛かりを求めて鏡の池のほとりへ。

 エマの帽子を沈めると、純白の百合が咲き誇る小川のほとりに膝を抱えて座り込んでいるエマの姿が映る。

 エマはそこにいるらしい。


「沈めた品物は溶けて失われます。所持品から消しておいてください」


「え」

「どうした?」


「両親に渡す遺品がなくなったら、エマ見つけないといけないじゃない!」


「だから見殺しにしてクリアしようとすんな!」


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