表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/382

フリーシナリオセット【開口笑と海貝吐珠】

参考ゲーム

サガシリーズ

ジルオール


「RPGはクリアするのに時間かかるからプレイするのためらうな」


「佐賀開拓地のニート主人公ならプレイ開始直後にラスボスと戦えるわよ。勝てないけど」

「だろうな」

「青天井佐賀も6時間ぐらいでラスボスまで行けるわよ。勝てないけど」

「……勝たせろよ」


「フリーシナリオなんだから仕方ないでしょ」


「フリーシナリオ?」

「プレイヤーが自由に旅して好きなサブシナリオを遊べるゲーム」

「メインシナリオが短いからすぐラスボスに行けるわけか」

「そういうこと」

 とりあえず佐賀シリーズを押されたので『みん佐賀』をプレイしてみる。

 舞台は江戸時代(清王朝)の日本と中国。

 主人公は7人。

 佐賀の海賊、仙台藩の武士、清に滅ぼされた明王朝の武将などバラエティに富んでいる。

「こいつにするか」

 タイトルにちなんで明の武将でプレイしてみる。

「……で、これからどうすればいいんだ?」

「なにしてもいいのよ」

「は?」


「メインシナリオはあるけど、いつメインシナリオをプレイするかはプレイヤーの自由。やろうと思えばメインイベントも無視することができるし。バッドエンド直行だけど」


「……なるほど、フリーなシナリオだな」

 プロローグが終わったら身一つで放り出され、自由に行動してくださいときた。

 フリーダムすぎてなにをすればいいのかわからない。

 仕方ないので近場の村を回るとイベントが発生し、戦闘に突入した。

 戦闘システムが少しややこしい。


 BPブレイブポイントというものがあり、あらゆるアクションはこのBPを消費して行う。


 戦闘開始時のBPは4、1ターンごとに1ずつ増えていく。

 これだけなら特に問題はない。

 ややこしいのは1つのBPをパーティで共有していることだ。

 つまり誰かが4BPの技を使ったら、そのターンはもう誰も行動できないのである(ターンが終われば使ったBPは回復する)。

 BPの配分が難しい。

 戦闘はタイムライン制。


○●○●●●○


 敵と味方が素早さ順に並んでおり、素早い順に行動する。

 どのキャラを動かすのか、BPをどれだけ使うのかはプレイヤーの自由。

「一番弱そうなこいつに集中攻撃するか」

「あ、バカ!」

「なに?」

 なにかミスしただろうかと思ったものの、危なげなく狙ったザコを倒すことに成功。

 そう思った瞬間、


『連撃発動!』


「な!?」

 敵から連続攻撃を食らい、仲間が即死した。

「なんだこれ?」


「連撃よ。簡単にいえばタイムラインでやる『ぶよぶよ』ね」


「は?」

「たとえばこのタイムラインで、ここの敵を倒したとするでしょ」


 ↓

○●○●●○


「ああ」

「で、この敵がいなくなったらその敵の両隣にいる○が2つ並ぶでしょ」


○○●●○


「こうやって同じ陣営のキャラが並ぶと連続攻撃が発動するの」

「でも右側では最初から2つ並んでるぞ」

「それは関係ないの。連撃の発生条件はあくまで『敵を倒すか、味方が倒された時に2つ以上並ぶ』こと」

「つまりわざと味方を殺させて連撃を発生させることもできるってことか?」

「そういうこと」

「敵を倒して連撃を発動させて、その連撃で敵を倒してまたタイムラインが並んだら?」


「もちろんもう一回連撃が発動するわよ」


「……たしかにパズルゲームだな」

 さっきは●●●の真ん中の敵を倒してしまったので連撃が発動したらしい。

 ぶよぶよと違い2つ並んだだけで発動するので注意せねば。

「これでどうだ!」

 今度は味方の間にいる敵を集中攻撃して連撃発動。

 その連撃で敵を倒すことに成功する。

「よし!」

 しかも連撃を発動させると、連撃に参加したキャラのBP消費が少なくなっていた。

 2BPの技を1BPで使える。

 よくみたら3BPの技も1BPになっていた。


「連撃はあくまで通常攻撃を連続で出してるだけだから思ってたより威力はないんだけど、消費BPを減らせるのが大きいから積極的に狙っていったほうがいいわよ」


「わかった」

 HPの低い敵や攻撃力の高い敵よりも、連撃を発生させられる位置にいる敵を優先して狙う。

 タイムラインの並びは行動によって変わる。

 つまりターンごとにタイムラインの並びは変わるので、HPを削った敵が連撃を狙えない位置に行くこともよくあった。

 敵と敵の真ん中に移動されると連撃が発動してしまうので手が出せない。

「こいつにするか」

 ターゲットを変更して集中攻撃。

 そして連撃発動。

 狙い通りだ。

 しかし、


『連撃発動!』


「うああ!?」

 プレイヤーは連撃でどの敵を攻撃するか指示を出せない。

 運が悪いと真ん中の敵を倒してしまい、敵の連撃を発動させてしまう。

 特定の敵へ集中攻撃をする時も要注意。

 敵を倒すと、その倒した敵を狙っていたキャラは別の敵へ攻撃する。

 この場合もプレイヤーはどの敵を攻撃するか選ぶことができないので、敵の連撃を誘発してしまうことがある。

 敵へ与えるダメージはよく計算し、倒してはいけない敵へ攻撃しないようにしたほうがいい。

 全体攻撃も危険だ。

 特に魔法。


 このゲームでは魔法に詠唱時間があり、どんなに短くても発動に1ターンはかかる。


 基本的に詠唱を始めると、敵から攻撃を食らう以外に詠唱を止める方法がない。

 魔法が発動するターンに敵が真ん中にいるとまずい。

 魔法が発動する前にその敵の両隣のどちらかを始末しておかないと連撃が発動してしまうからだ。

「面白いな、このシステム」

「でしょ?」

 タイムラインを管理し、狙い通り連撃を発動させるのが快感だ。

 タイムラインは技によって管理する。

 たとえば『音速剣』や『瞬速の矢』という技を使うと、キャラに素早さのプラス補正がかかってタイムラインが前に来る。



○音●○●●音○

 ↑    ↓

 ↑←←←←←


音速剣を使った場合



 『エイミング』や『スパイラルチャージ』では逆にマイナス補正がかかってタイムラインが後ろへ回る。

 攻撃する順番が遅くなるわけだが、敵を倒して連撃する場合、倒す敵を味方で挟むようにタイムラインを調節しないといけない。

 減速技も重要なのだ。

「捨て技がないな」

 他にもリザーブ技やバンプ技など、タイムラインを操作できる技が豊富で使えない技がほとんどない。

 序盤に覚える技を終盤に使うのも当たり前。

 むしろ終盤に覚える技は消費BPが多いので連撃で消費BPを減らさないと使いにくい。


 基本技でタイムラインを調節し、連撃を発生させ、次のターンで大技を連発。


 そういう戦闘システムだ。

 よく考えられている。

 ……問題は敵が強いこと。

 ザコですら油断できない。

 メインシナリオはひとまず置いておき、フリーシナリオらしく各地を回りながら徐々にレベルを上げていくことにする。


 だが戦闘の回数で敵のレベルが管理されているため、こちらのレベルを上げると敵のレベルも上がるという地獄。


「プレイヤーの戦闘の仕方で敵に入る経験値も違うから、レベル上げしたいなら同じ場所で戦ったほうがいいわよ。初めて戦う敵は経験値+10で、戦ったことのある敵だと経験値+2だし」

「……それを先に言えよ」

 初見の敵と戦うほど敵に多くの経験値が入る。

 フリーシナリオにとって最悪の罠だ。

 フリーシナリオ特有の罠はまだある。

「……なんだこのボス、強すぎだろ」

「固定ボスだもの」


 ザコのレベルは戦闘回数で変動するものの、ボスのレベルは固定。


 どうやら製作者が想定しているレベルよりも早くイベントを発生させてしまったようだ。

 逆に弱すぎるボスもいる。

 イベントを発生させるのが遅かったらしく、明らかにザコより弱い。

「ザコ戦でも時間かかるから何か作るか。中国のスイーツでうちでもやれそうなのだと開口笑あたりか?」

「なにそれ」


「簡単に言えば表面に白ごまをまぶしたサーターアンダギーだ」


「へー」

 開口笑は揚げると裂ける。

 その裂け目が笑っているように見えるので開口笑という。

 サーターアンダギーと同じく丸い形なので、ドーナツのように輪っかにする必要はなく簡単。

 ただし低温でじっくり揚げないと割れ目ができないので注意。

 ドーナツ生地に練りこまれたラードに、油で揚げた白ゴマの香ばしい風味が食欲をそそる。


「お茶は海貝吐珠かいばいとじゅにしよう」


「なにこれ? ほんとに茶葉?」

「ハマグリみたいな形に加工された工芸茶なんだよ。お湯を注ぐとこうなる」

「あ、口が開いた!」

 茶葉(貝の口)が開いて中から花が出てくる面白いお茶だ。

 開口笑にふさわしいユニークなお茶である。


「……シナリオの発生条件がわからん」


「攻略本必須のシリーズだもの」

 戦闘はおやつをつまみながらじっくり堪能できるようになったものの、どこで何のイベントが起こるかわからない。

 また何らかのイベントを発生させたとしても、そのイベントの続きがどうやったら発生するかわからない。

 一本道のゲームと違って思うようにイベントが進まない。

 時間経過でイベントの続きが起こることもあれば、時間が経つとイベント期間が終了していることもある。

 何も起こらない時間が続いたかと思えば、連続でイベントが起こったりもする。

 特に冒険者や情報の集まる酒場はイベント多発地帯だ。

 墓場も墓参りや幽霊系のイベントが多い。

 イベント多発地帯ではその場所に出入りするたびにイベントが起こる。


 フラグ管理も雑なのか、同じ人物が同じ日に何度も墓参りしたり、墓参りした後にデートしていたりする。


 フリーシナリオならではのカオス。

 色々と問題はあるものの、旅先で様々なイベントが起こるのは面白いし、新しいイベントを探すのも楽しい。

 一本道のゲームにはない楽しさがある。


「ここが分岐点か」


 ストーリーを進めると重要な選択を迫られた。

 中国で活動するか、日本へ密入国(鎖国しているので正攻法では入国できない)するかでメインシナリオが変わるらしい。

 幕府は明の残党から救援を求められているものの、モンゴルに侵略された歴史があるので、明(中国人)に協力すると清王朝(満州族)が攻めてくると考え、救援要請を無視していた。

 そこで主人公は日本へ密入国し、協力してくれる人間を探そうと考えたのだ。

 中国での活動だけでは清王朝を倒せそうにないので密入国をする。

 お家を潰されて路頭に迷う武士を集めるものの、絶望的に戦力が足りない。


 そこで将軍の御座船『安宅丸』乗っ取る計画を立案する。


 満州族と武士の髪型はよく似ていた。

 武士が頭をきれいに剃り、マゲを後ろに垂らせば満州族の辮髪べんぱつになる。

 その類似性を利用して武士を満州族に変装させ、遊覧する安宅丸をシージャックし、将軍を人質にして江戸湾へ突入。

 これで江戸に大砲を打ち込めば、満州族は日本を狙っていると考え、幕府も海外派兵を決定するだろうという計画だ。

 ボスは柳生一族。

 カウンター系の技が充実しており、連撃を発動する前にやられる可能性が高い。

 やむなく攻略本をめくると、

「ん、なんだこれ?」

 文字で埋め尽くされたページが目についた。


「佐賀シリーズの攻略本には小説が掲載されてるのよ。ボツになった8人目の主人公のシナリオとか、本編の裏設定をもとにした話とか」


「へえ」

 しかも妙にクオリティが高い。

 思わず読みふけってしまう。

「早く本編進めなさいよ」


「プレイヤーの好きな順番で進められるのが佐賀シリーズだろ」


 これぞフリーシナリオの醍醐味だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ