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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ベルトスクロールセット【鉄火巻きと粉茶】

参考ゲーム

ダウンタウン熱血物語 ダブルドラゴン


ふきふき


 いつものようにテーブル型筐体を拭いていると、


「ん?」

 いつの間にか中身のゲームが変わっていることに気付いた。


『デュアルドラゴン冷血物語』


「なんだこれ」

「有名なベルトスクロールアクション」

「ベルト?」 

「ちょっと説明しにくいわね。プレイしてみたほうが早いわよ」

「そうだな」

 バイト代のワンコインを投入してプレイ開始。

 デュアルドラゴンは双子のヤンキー竜介と竜蔵のあだ名で、敵対するヤンキーにさらわれた竜蔵の彼女を取り戻すのが目的のストーリーらしい。

 奥行きのある横スクロールアクションといえばいいのだろうか。

 ベルトスクロールではキャラは常に横を向いており、上下(前後)に向きを変えることができない。

 『横を向いている状態』で画面の上(奥)へ行き、下を押せば画面の下(手前)に行く。

「ぐ、手前の敵は殴りにくいな!」



 敵

←○→

 敵


※上下(前後)に向きを変えられないので、自分の上下にいる敵には攻撃しにくい



 だから攻撃方法が重要になる。

 パンチボタンを押すと向いている方向へパンチを出し、キックボタンだと向いている方向とは逆にキックを出す。

 つまり右を向いている時と左を向いている時では同じボタンでも攻撃する方向が違うわけで、


デュクシッ


「げっ!?」

 よく味方を攻撃してしまう。

 注意が必要だ。

 なお敵が攻撃してきた時にタイミングよくボタンを押すとガードできる。


 敵もガードしてくるので、位置を変えずにボタンを連打しているとお互いの攻撃を延々とガードし続けることもしばしば。


 石やメリケンサック、木刀、鉄パイプ、チェーンなど武器も豊富。

 倒れている敵を振り回して武器にすることもできる。

 ただし武器を持っている時はガードできない上に、一度攻撃を食らってしまうと武器を落としてしまう。

 拾った瞬間に殴られることも多い。


「敵が近くにいるときは、わざと敵に武器を拾わせたほうがいいわよ」


「なるほど。ガード不能になった瞬間にぶん殴るわけだな」

 格闘ゲームのようなコマンド技もあった。

 パンチとキックボタンを同時押しで飛び膝蹴り。

 ジャンプ中にタイミングよくキックボタンを押すと旋風脚。

 ジャンプの着地後やダウンからの起き上がりなどの『膝が曲がった状態』でパンチボタンを押すとアッパー。

 攻撃で相手の体が『くの字』になった時にボタンを押すと、相手の髪の毛を掴んで連続膝蹴りをしたり、投げ飛ばすことができる。

 ダウン中の相手を踏みつけることもできたりと自由度が高い。

 水や穴に落ちると即死だ。


『お前なんかぴゅぴゅぴゅのぴゅーにしてやる!』


 わけのわからないセリフを呟きながらボスが登場した。

 即座に穴へ落として瞬殺するものの、


『穴に落としても倒したことにはならないぞ』


 ……とボスが丁寧に説明してくれた。

 やむなく正攻法で叩きのめす。

「レトロゲームにしては完成されてるな」

「ベルトスクロールの基礎を作った作品だもの」

 現代のアクションゲームをベルトスクロールアクションにすればこんな感じのゲームになるだろう。

 敵がガード、武器、ダウン攻撃をしてくるので難易度が高い。


『りゅうすけはちからつきた』


 油断するとすぐに死ぬ。

「……敵強すぎだろ」

「横にばっかり移動しすぎ」

「縦に動けってことか」

 たしかに横軸が同じ場合、怒涛の連続攻撃を食らってしまう。

 ボコボコに殴られてダウンさせられ、ダウン攻撃を食らい、起き上がりに殴られて死ぬ。

 軸を少しずらすだけで攻撃を食らう回数は減った。


『りゅうすけはちからつきた』


 ……それでも難易度は高いが。

「貯めたお金でアイテム買ってパラメータ上げれば?」

「……どのアイテムに何の効果があるのかさっぱりわからないのがな」

「当たりを探すのが面白いんじゃない」

 適当に食い物を買って食べてみるものの、パラメータはほとんど上がらなかった。

 初期状態ではパラメータも低く、その辺の雑魚にも負ける。

 集中力も切れてきた。

「……俺たちもなんか食うか。なにがいい?」


「まぐろのさしみ」


「は?」

「気力が上がるのよ」

「……鉄火巻きでいいな」

「てっかまきは体力が32しか回復しないじゃない」

「知るか!」

「せめてふとまきにして」

 喫茶店でなにを注文しているんだ、こいつは。


 まあ、鉄火巻きの由来は鉄火場(賭場)で食べていたからだといわれているので、うちのメニューにあってもおかしくはないのだが……。


「高くつくぞ」

「え」

「そりゃマグロだからな」

「うう……、私のバイト代」

「泣くぐらいなら別のを注文しろよ」


「気力が高いと体力が0になっても復活できるのよ!」


 見事なまでのゲーム脳。

 仕方ないのでマグロの刺身を切り、しょうがを添えて酢飯をノリで巻く。

「あれ、わさびじゃないの?」

魯山人ろさんじんいわく『まぐろのとろ、てっか巻きなどはしょうがを載せて食え。まぐろは酢に好適のものなれども少しくさい点がある。これをおぎなうのがしょうが』」

「へー」

 お茶は寿司と相性のいい粉茶だ。

 ガリはお好みで。


「キックの鬼!」


 デュアルドラゴンらしく協力プレイ開始。

 飛び膝蹴りで敵を吹き飛ばし、次々に穴へ落としていく。

 敵が扉から出てきた瞬間に落とし、画面端で待ち伏せて敵が出てきた瞬間(というか画面端なので敵の姿は見えない)に膝蹴り。

 ダウンしたら起き上がりに飛び膝蹴り。

 膝・膝・膝で敵に何もさせない。

 戦闘中は移動手段すら飛び膝蹴りだった。

 しかし多勢に無勢。

「くそ、敵多すぎだろ!」


「ここでメニュー画面」


「は?」

 よくわからないタイミングでメニューを開いた。


「このゲーム、256フレームごとにエンカウント判定が行われてるのよ。そのタイミングでメニュー画面を開けばザコキャラの出現エンカウントを阻止できるわけ」


「256フレーム?」

「わかりやすくいうと4.27秒」

 細かい。

 どうやら4.27秒経つと、新しいキャラが乱入してくるらしい。

 なのでタイミングを計ってメニュー画面を開くとエンカウント判定が行われず、敵の出現を阻止できるようだ。

 さらに、


『お前なんかぴゅぴゅぴゅの……』


デュクシッ


 ボスがしゃべっている最中に殴る。

 セリフが終わるまで動かないので先制攻撃できるらしい。

 ボスもダウンさせてしまえば、起き上がりに膝でハメやすい。

「……どっちが悪者かわからんな」


「こっちも不良じゃない」


「たしかに」

「いちいち強化するのも面倒だし。ある意味ザコのほうが強いでしょ」

 たしかにボスよりもザコの方がこわい。

 ボスはしゃべっている間は無防備=ガードできないが、ザコにはチャンスタイムがないのでこちらの攻撃をガードしてくる。

 ガードされてしまうと倒すのに手間取る上に、後ろから攻撃されるリスクも高い。

 一発殴られると連打を食らい、ダウン攻撃、起き攻めの凶悪コンボでごっそり体力を削られてしまう。

 だからメニュー画面でザコをエンカウントさせないのが重要になるわけだ。


「スクロール前に軸をずらしておくのも重要ね」


 隣のマップにいる敵と軸が同じ状態で横へスクロールすると、スクロール移動した瞬間に殴られる。

 特に狭くて敵が密集しているマップでは、うかつにスクロールすると大変なことになるのだ。

「あ、バールのようなもの見っけ」

「それ強いのか?」

「重要なのは威力よりも射程距離ね。このマップ、真ん中に壁があるから向こう側へ行くのに時間かかるでしょ。そこでバールよ!」

「お、壁越しでも殴れるのか」

 レトロゲームによくあることだが、リーチの長い武器だと壁の向こう側にも届く。


「あとはATMね。スクロールすれば何度でもボスと戦えるから、いくらでもお金を稼げるわよ」


「……ただのカツアゲじゃねえか」

 何度もスクロールして『ぴゅぴゅぴゅ』を5回ほど殴り倒し、必要なアイテムを買いそろえる。

 セリフをしゃべっている間はノーガードなので、ザコよりも安全確実に倒せるのだ。


『ツーヘッドドラゴン参上!』


 ラスボスはツーヘッドドラゴンという双子の兄弟だった。

 ただでさえ強いのに2人がかりだ。

 2人いるとしゃべってる間に殴ってハメ殺すのも難しい。

「三歩進んで二歩下がる」

 ラスボスがしゃべっている間に、なぜか来た道を微妙に戻る。

「なにしてんだ?」


「画面を左にスクロールさせたのよ。これで双子の一人が画面から消えたでしょ? こうすると右にスクロールしない限り、画面外に消えたキャラは参戦できないのよ」


「マジか」

「昔の横スクロールアクションではわりと有名な裏技よ」

 近づいてきたラスボスの右へ回り込み、膝で左側へ吹き飛ばす。

 左から攻撃すると右へ吹き飛んでしまうからだろう。

 一度ダウンさせてしまえば必勝。

「これで私の勝ち!」

 起き上がりに飛び膝蹴りを重ねる。

 しかし、


スカッ


「あ」

 技を出すのが一瞬早かった。

 膝は空しく空を蹴り、怒りの鉄拳でぶん殴られる。

 そうなったら当然、

「ぎゃー!?」

 吹き飛ばされたキャラごと画面が右へスクロールし、双子の片割れが出てきてしまった。

 完全に挟まれてボコボコにされる。

 辛うじて命は取り留めたものの、二人いるのでダウンさせて起き上がりを狙うハメ殺しはできない(一人を攻撃している間にもう一人に狙われる)。


「こうなったら二人同時にハメ殺すまでよ!」


 画面の右端に逃げた。

「そうきたか」

 これでツーヘッドドラゴンは左からしか攻撃できない。

 そして細かく軸を調整すると、ツーヘッドドラゴンのグラフィックが横に重なった。

「キックの鬼!」

 飛び膝蹴りで二人まとめて吹き飛ばす。

 いや、吹き飛ばそうとした。


パリィ


「あ」

 双子の片割れが膝蹴りをガードした。

 グラフィックが重なっているといっても、完全に重なることはない。

 どうしても半キャラずれてしまう。

 そのズレの分、膝蹴りに反応されてしまった。

 万事休す。


『りゅうぞうはちからつきた』


「……もうワンコインちょうだい」

「働け」

 絶望した表情でテーブルに突っ伏した。

「……これクリアしないとやる気でない」


「マグロの刺身を食え」


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