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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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213/382

マッチ3ゲームセット【ショートケーキとパイナップルジュース】

パズル回を分割して再構成した話です。



参考ゲーム

勇者のくせにこなまいきだG


「んー」


 ゲーム画面をにらみながら何やら考え込んでいた。

「なに悩んでんだ?」

「マッチ3ゲーム」

「マッチ?」

「画面が全部パネルで埋まってて、隣接するパネルを入れ替えて3つ以上そろえれば消せるゲームなの」



   △

   △

  ×○×

△△○△○△△ 中央の△が入れ替わることができるのは○だけ

  ×○×

   △

   △


入れ替えられるのは『上下左右に隣接しているパネル』のみ

なおかつ『入れ替えた後に、入れ替えたパネルが消える(3つ以上そろう)場合のみ』入れ替えることができる


○△××

×○□△

○□○×

△△□△←□と△を入れ替えると△が3つそろって消える


パネルが消えると、消えたパネルの上にあるパネルは下に落ちる

下に落ちた時にパネルがそろっても消える(いわゆる連鎖)

最上部のパネルがなくなると、画面上から新しいパネルが落ちてくる



「パネルが属性になってて、火のパネルを消すと火属性が、水のパネルを消すと水属性の数値が溜まって魔法が使えるのよ」

「使いたい属性のパネルを消しつつ、相手に使われたくない属性を消すわけか」

「そうそう」

「属性以外のパネルはなんだ?」

「経験値とお金」

「……RPGなのか、これ」

「そうよ。パズルに自信があるなら初期装備でもいけるし、自信がなければ地道にレベルアップして、装備を整えて、新しい魔法を覚えるの」

 自然界に存在する4大精霊を操作して魔法を使うという設定は面白い。

 パズルの必然性がある。

 ……経験値と金は若干意味不明だが。


「ターン制でプレイヤーと敵が交互に動かすのはいいとして、時間制限がないと緊張感に欠けるな。初級者でも時間をかければ最善手が打てる」


 しかも最善手を考えるのは面倒だから、適当にパネルを入れ替えてミスる。

 悪循環だ。

「時間制限がほしいな」

 時間に追われてミスをするのと、時間はいくらでもあるのに切り上げてミスをするのとではプレイヤーの感じるストレスが違う。

 頭も時間制限がある方が回るはずだ。

 ……パニックになる可能性も増してしまうが。

「まあ、人間とパズルソフトが戦えばソフトが勝つわけだから。RPG要素と時間無制限はある種の救済策なんでしょうね」

 たとえば将棋と同じ9×9マスだとしても、将棋は直接動かせる駒は20前後。

 一方マッチ3パズルはマス目と同じ81。

 このゲームはルールこそ単純だが、動かせるパネルが1枚しかない場合、81枚の中からたった1枚のパネルを見つけるのは意外に手間取る。

 これは難易度の問題ではない。

 人間の脳の問題である。


 目で見えていても、そのパネルが動かせることを認識するのに時間がかかってしまうのだ。


 慣れで認識速度は上がるものの、俺のような初級者だと一目瞭然なパネルにもぜんぜん気づけない。

「序盤は地味で、ザコとの戦いに時間がかかるのもネックだな」

 レベルが上がれば『火属性のパネルを全部消す』『縦もしくは横一列のパネルを消す』など、派手な魔法が増えて面白くなりそうなのだが……。

「リアルタイムでパズルだけやれるゲームはないのか?」


「そうね、『魔王のくせにこなまいきだG』とかいいんじゃない? 魔物を育てないといけないから、パズルだけってわけにはいかないけど」


「まおなまってタワーディフェンスだろ?」

「タワーディフェンス系マッチ3パズルなのよ。戦闘はリアルタイム。プレイヤーは魔王になってパネルをそろえて、魔物を生み出して戦うのよ。連鎖させてコンボを繋げるほど多くの魔物が生まれる。勇者が魔王のもとにたどり着いたらゲームオーバー。事実上の制限時間ね。ただマッチ3ゲームっていっても、パネルを入れ替えるんじゃなくて壊すゲームなんだけど」

「壊す?」

「タッチスクリーンのゲームで、パネルをタッチしたらそのパネルが壊れるのよ。魔王はツルハシでパネルを壊して上にあるパネルを落とすか、壊して空いた空間にスライドさせてパネルをそろえるの」

「へえ」

「勇者は一定時間ごとに攻撃してきて、パネルをお邪魔パネルにするの。これはツルハシで突いても破壊できないパネルで、お邪魔パネルと隣接しているパネルを消さないと破壊できないのよ」



お邪魔パネルに隣接しているパネルを3つそろえるとお邪魔を消せる



■お邪魔パネル


■■■□□□ 左のパネルを消せる


■ 下のパネルを消せる



「画面がお邪魔パネルで埋まって、パネルをそろえられなくなったらゲームオーバー」

「面白そうだな」

「基本無料だからダウンロードしたら?」

「無料なのか」

 さっそくダウンロードし、プレイしてみる。


つんつん


「ぐ、微妙にプレイしづらいな」

「指だもの」

 スクリーンをタッチする方式のゲームだが、この携帯機ではタッチペンではなく指でタッチしなければならない。

 指はペンより太いので繊細な操作が難しい。

 違うパネルを動かしてしまったり、スライドするつもりが破壊してしまう。

 タッチの仕方が悪くてパネルが反応してくれない。

 勇者は1ステージに3人やってくることもあり、あえなくゲームオーバーになった。

「やっぱりリアルタイムだと焦るな。3コンボがやっとだ」

 それもたまたま繋がる場合が大半。

 狙って連鎖できない。

「どうやって連鎖すればいいんだ?」


「パネルを破壊すると、その上にあるパネルはぐらぐらして一定時間経つと落ちてくるでしょ。実は『パネルが全部下に落ちない限りコンボは繋がる』のよ」


「パネルがぐらぐらしてさえいれば、パネルを消してから数分後にパネルを消しても連鎖として成立するのか?」

「成立するわよ」

「つまりずっとパネルを破壊し続けて、常にぐらぐらさせておけばいいのか」

「そういうこと。ただ勇者を倒すと連鎖はそこで切れるから注意ね」

「わかった」

 ぐらぐらしてるパネルとその上にあるパネルはスライドできないので注意が必要だ。

 あとは魔物のランク。

 魔物は5種類おり、基本的にランクが高いほど攻撃力が高い。

 パネルを3つそろえるとそのパネルは消え、1ランク上の魔物パネルが発生する。


 最高ランクの魔物ドラゴンはランク4のパネルをそろえないと発生しない。


 ドラゴンのパネルを3つそろえると画面内にある全てのお邪魔ブロックと土(なにも描かれていないパネル)を破壊できる。

 3人目の勇者が現れるまでに、できるだけドラゴンのパネルを作っておきたい。

 重要なのは栄養パネル。

 キラキラと輝いているパネルで、このパネルをツルハシで突くと周りのパネルのレベルが1つ上がる。

 パネルのモンスターのランクが高いほど栄養の範囲は広くなる。

 ランク1のモンスターの栄養パネルだと上下のレベルしか上げられないが、ランク2なら上下左右というように、レベルを上げられる範囲が広がるのだ。

 これを活用すればドラゴンを生み出しやすくなる。

 あとは戦闘アイテムだ。

 ドラゴンの卵はお邪魔パネルと土を全て破壊できる最重要アイテム。

 時計は勇者を入り口に戻す(制限時間がリセットされる)。

 ただし1ステージにつき1回しか使えない。

「この妖精みたいなのはなんだ?」


「それはリリスの歌っていうアイテムで。倒した勇者を確実に捕獲できるの」


「捕獲?」

「モンスターのエサにしてレベルを上げたり、ダンジョンで働かせたりできるのよ」

 モンスターにも固有のレベルがあるらしい。

 最大レベルは10。

 さらに勇者を食べさせると、上級モンスターにレベルアップする。

 捕獲した勇者はダンジョンで強制労働させることもでき、一定確率で魔物や戦闘アイテム、魔物を成長させるのに必要な食糧キノコなどを発掘する。

 だがダンジョンの壁は固い上に1マスずつしか掘れないので時間がかかる。

 アイテムや特殊なモンスターは発掘することでしか入手できないのがもどかしい。


 特殊な職業の勇者を食べさせると麻痺、眠り、毒、栄養(栄養パネルの出現率が上がる)の能力を持つモンスターになるそうだ。


 勇者を行動不能にできる麻痺と眠りの能力はぜひ手に入れたい。

 ただし3人目の勇者はそのステージのボス的な扱いで、状態異常にはならない。

 3人目だけは実力で倒さなければいけないのだ。

 一番強い勇者なだけに厳しい。

「ん、次のステージに進めんぞ」


「無課金だと3回しかプレイできないの。プレイ回数は時間経過で回復するけど、無課金だと8時間で1回よ」


「1日に3回しかプレイできないのか……」

「8時間で1回といっても、ストックできるのは3回までね。プレイ可能回数3回の時に8時間待っても、それ以上回数は増えないから」

「快適に遊ぶにはいくら課金すればいいんだ?」

「300円課金すれば約2時間で1回回復して、10回までストックできるわよ。650円なら1時間に1回、ストックは24。1000円なら制限なし。いくらでもプレイできるわよ」

「300円余ってるから課金するか。1日10回も遊べれば十分だ」

 それに課金は積立式で、300円課金したら次は350円課金するだけでいい。

 つまり最大でも1000円しかかからない。

 良心的だ。

 安心してぽちっと課金する。

「お!? ストックが回復した!」

「課金したサービスね」

 プレイ回数がMAXの10回になっている。

 予想していなかっただけにうれしい。

 さっそくプレイして勇者を捕獲し、モンスターを強化。

 しかしステージが進むほど敵も強くなっていく。

 HPも高くなるので制限時間内に倒しきれないことも増えた。

「くそ、時間が足りん!」


「パネルが落ちるのを待ってるからよ。パネルを突いてから落ちるまで数秒かかるから、突いたらできるだけパネルを動かして。スライドした瞬間に落ちるから」


「でもパネルを早く落とすとパズルについていけなくなるんだよな。考えるのが間に合わん」

「3枚そろえるだけなんだからパターンは決まってるでしょ」



■■←■



 ■

 ■

■→



 ■←下の■を右へスライドすれば、これが下に落ちて3つそろう

■■→



□□←これを破壊して、上下を■に囲まれてる□をスライドすれば■は落ちてそろう



「それと勇者が攻撃してくるパネルはだいたい固定されてるでしょ。最悪お邪魔パネルは無視していいのよ。動かさなければそれ以上パネルは増えないんだから」

「なるほど」



□□

□■←勇者に攻撃されてお邪魔になったパネル。だいたい同じ場所を攻撃してくるので、無駄に動すとそこへスライドしたパネルを攻撃されてお邪魔パネルが増える。



「画面全体のパネルを動かすより、画面の一番上だけに集中したほうがいいかもしれないわね。全体を見てるとどれを動かせばいいのかわからなくなるし」



□■□■□■←次に落ちてくるパネルが見える

■□■□■□←画面の一番上の列


とにかく一番上のパネルを突きまくってパネルをそろえていく



「特に終盤のステージのボスになると、一撃で何枚もお邪魔パネルにしてくるから」

「マジか」

「ドラゴンを悠長に作ってる暇はないわね。とにかく連鎖連鎖で、30コンボぐらいしないと倒せないし」

「30連鎖!?」

「ラスボスは画面の半分を一撃でお邪魔パネルにしてくるんだから。お邪魔パネルを1列ずつ消していっても、しばらくしたらまた半分をお邪魔にしてくるからキリがないし。どうせお邪魔にされるんなら放置が一番」

 百聞は一見にしかずと瑞穂が自分の携帯機を取り出し(ちなみに無課金だ)、ラスボスと対決する。


『レベル99 勇者ああああ』


「来た!」

「おおう!?」

 本当に一撃で画面の右半分をお邪魔パネルにした。

 しかも次に落ちてくるパネルまでお邪魔パネルになっている。

 この状態で左半分を攻撃されるとゲームオーバー。

 次に落ちてくるパネルもお邪魔なので、最低でも右の列を2列消さないといけない。

 勇者の攻撃感覚も短い。

「ぎゃー!?」

 右、左と交互に攻撃され、画面がお邪魔パネルで埋まった



□□□■■■

■■■■■■

■■■■■■

■■■■■■

■■■■■■



 たしかにお邪魔パネルを無理に消そうとするより、画面の一番上にだけ集中していたほうがいい。

 というか、攻撃が苛烈すぎて画面の一番上以外使えない。



□□□■■■

□□□■■■

□□□■■■ 半分お邪魔パネルにされる

□□□■■■

□□□■■■


  ↓


□□□□□□

□□□□□□

□□□□□□ 仮に3列消したとする

□□□■■■

□□□■■■


  ↓


■■■□□□

■■■□□□

■■■□□□ 逆サイドを攻撃されてしまうと、消しきれなかった下の列を消すのは難しくなる

■■■■■■

■■■■■■


  ↓


□□□■■■

■■■■■■

■■■■■■ 最終的に一番上の列の3マスだけが残る展開になりやすい

■■■■■■

■■■■■■



 素早くパネルを入れ替えまくって横の列を消さないとやられる。

 次に落ちてくるパネルはランダムなので、パネルの巡り会わせが悪いと死ぬ。

 この状態で連鎖しないといけないのだからきつい。

 ラスボスの体力は膨大で、コンボを繋ぎまくって数百匹のモンスターを生み出しているにもかかわらず、なかなか最後の体力ゲージにたどり着かなかった。

 おまけに時間制限がある。

 三重苦だ。

 レベル99の勇者と戦う魔王の絶望的な気持ちがよくわかる。

「勇者のくせに生意気よ!」

 それでも諦めず、数が少なくて邪魔になりがちなランク4のゴーレムと5のドラゴンのパネルを躊躇なく破壊して連鎖を繋げる。

 そして、


『ぬわー!?』


 とうとう勇者を撃破した。

「ふふん」

 38コンボ、生み出した魔物の総数700オーバー。

 次元が違いすぎる。


「じゃあ勝利の祝杯ね。いちごのショートケーキとパイナップルジュース」


「あいよ」

 ケーキとパイナップルはモンスターを成長させるのに必要なアイテムだ。

 ……なぜダンジョンを掘るとケーキやちくわが出てくるのだろう。

 カオスな世界観だ。

「さて……」

 ケーキを突きつつ俺のゲームを進める。

 モンスターを強化するにはアイテムや勇者だけでなくポイントも必要で、コンボを繋げてスコアを稼がないとなかなかポイントは溜まらない。

 倒しても確実に勇者を捕獲できるわけではないので、モンスターを成長させるために何度か戦わないといけない。

 するとすぐにプレイ回数を使い切ってしまう。

「あと30分か」

 地道にプレイ回数が回復するのを待つ。

 やることがないので勇者がダンジョンを掘るのをぼけーと眺めていると、


「くー」


 腹いっぱいで眠気に襲われたのか、瑞穂がテーブルに突っ伏していた。


つんつん


「んん……」

 柔らかいほっぺたを突ついても身じろぎするだけで起きる気配はない。


 これならいくらでもコンボが繋がりそうだ。


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