ロボットゲームセット【アップル・ストゥリューデルとダージリン】
参考ゲーム
スーパーロボット大戦
「アップル・ストゥリューデルとダージリンね」
「あいよ」
アップル・ストゥリューデルはウィーンのスイーツ。
リンゴをストゥリューデルという生地で何重にも巻いたものだ。
表面には粉砂糖が振られ、甘くてパリパリなのでそのまま食べてもうまい。
ホイップクリームやアイスクリームを添えるとさらに味わい深くなる。
「あ、ダージリンはFTGFOPね」
「お前、FTGFOPの意味わかってるのか?」
「……ふぁ、ふぁいてぃんぐげーむふりーおーぷにんぐ?」
「ファイン・ティッピー・ゴールデン・フラワリー・オレンジ・ペコーだ」
「ようするに最高級ってことでしょ」
「最等級ならFTGFOPの上にスペシャルのSがつく。それに等級が高いからって味がいいわけじゃないぞ」
「え、そうなの?」
「まあ、まずいものはほとんどないけどな」
少なくともFTGFOPのダージリンはうまい。
クリームをのせすぎなければ、アップル・ストゥリューデルとの相性も悪くない。
「で、これはなんか元ネタがあるのか?」
「『リアルロボット大戦』よ。ダージリンはまず香りを楽しんで、次に色合い。そうすれば心が落ち着いてきて、ヒマラヤの景色がまぶたの裏に浮かんでくるんだって」
「へえ」
ムダに紅茶好きなキャラがいるらしい。
コクピットの中でも飲んでいそうだ。
「さて……」
件のリアロボを起動してみる。
前にプレイしたものはぬるかったが、これはかなり難易度が高い。
ロボをちゃんと改良し、パイロットも登場作品にこだわらずに入れ替え、『精神コマンド』をフルに活用しないとあっという間にやられる。
精神コマンドは一種の強化魔法で、パイロットが精神を集中することでステータスがアップする。
回避率と命中率を1ターンだけ30%上げる、一度だけ攻撃力が2倍になる、一度だけ敵の攻撃を確実に避わせる、一度だけ確実に攻撃を当てられる、1ターンの間ダメージを4分の1にする、一度だけダメージを10にするetc
精神力が尽きない限り1ターンで何度でも使える上に、すべてのユニットが使える。
「げ、精神コマンド使いわすれた!?」
「お約束」
移動と攻撃をしてしまうとユニットは『行動終了状態』になって色が変わる(どのユニットを動かしたか一目でわかるようにしているのだろう)。
ユニットが行動終了すると精神コマンドは使えないのだ。
ドカーン
……精神コマンドは敵や味方にも効力があるので、うかつに行動終了してしまうとひどい目に合う。
要注意だ。
「これでどうだ!」
主人公機を前線に突っ込ませた。
自軍では最も運動性が高いので回避率が高い。
精神コマンドも充実しているので、精神力が尽きない限りはほぼ無敵だ。
しかし、
すっ
「な!?」
なぜかザコが主人公機をことごとくスルー。
「今回のシリーズでは命中率0のユニットは無視されるから」
「……撃っても当らない敵はスルーか。嫌なところでリアルな仕様にしやがって!」
「評判悪かったから次回作では修正されたけどね。ちなみにこっちの命中率0も無視されるわよ」
「攻撃を当てることのできないユニットはいないのと同じってことか」
撃っても当らないエースパイロットには手を出さず、回避の上手いエースパイロットはザコを無視して突っ込んでくる。
わかりやすくいえばそういうことだ。
ロボットアニメっぽい展開といえないこともない。
回避率の高すぎるユニットは使いづらいものの、この思考ルーチンを利用すれば敵を誘い出すこともできるだろう。
あえて命中率0のユニットを量産し、集団で運用するのも面白そうだ。
精神コマンドによる命中率補正はルーチンに組み込まれてないのもいい。
戦術の幅が広がる。
「敵も精神コマンド使ってくるのが厄介だな」
低火力ユニットで集中攻撃を仕掛けた後、高火力のスーパーロボットで攻撃した方がいいのかもしれない。
一度だけ攻撃を100%避わす、もしくは一度だけダメージを10にするなどの精神コマンドはこれで無効化できるし、精神力切れやエネルギー切れも狙える。
それぞれの機体には精神コマンドを使えるパイロットの精神力(SP)と、エネルギー兵器を使うためのエネルギー(EN)が設定されている。
エネルギーは高火力の武器を撃つ、空を飛ぶ、バリアを張るなどに使われ、相手がバリア持ちだったら低火力ユニットで攻撃しまくればエネルギー切れを狙える。
エネルギー兵器は射程距離も長いので、通常兵器では届かない距離から攻撃すれば、エネルギー兵器で反撃してくれるのですぐにガス欠にできる。
「げ、なんか3体同時に攻撃されたぞ!?」
「コンボ武器ね。コンボレベル+1だけ、並んでるユニットを攻撃できるの」
○
○
○
○○○
○
○○
※隣接しているユニットを連続して攻撃できる
「コンボレベル3でも『ト』型に全部攻撃することは無理なんだけどね」
コンボレベル3なら4体に攻撃できるが、
○
○○
○
こういう形に並んでいた場合、
●
●○
●
●
●●
○
このように一方向にしか攻撃できない
「敵がコンボ武器を持ってたら、市松型にユニットを並べた方がいいってことか」
● ● ●
● ●
● ● ●
「でもこの並べ方だと援護できないのよね」
「援護?」
「援護攻撃と援護防御。味方のユニットが横並びになってる時に発動するの。特に援護攻撃はこっちが攻撃した後に、ノーコストで追撃してくれるから便利よ。行動終了状態だと援護できないけど」
「……システムが多すぎる」
他にも気力(これが高いほどパラメータが上がり、強力な攻撃ができる)やMAP兵器(広範囲を攻撃できる特殊攻撃・だいたい気力が高くないと使えない)などがある。
システムを完全に把握するだけでも大変だ。
「……ん? なんだこれ? ツメリアロボ?」
メニュー画面を見ると、妙な項目が増えていた。
「特定の条件を満たすと遊べるミニゲームよ。簡単にいえばリアロボでやる詰将棋」
「面白そうだな」
ツメリアロボを選択する。
どうやらこれまでクリアしたステージで遊べるらしい。
ユニットは完全に固定。
武装もパイロットも変更できない。
命中率は常に100%。
確率を導入すると詰将棋として成立しないからだろう。
命中率だけでなく、一定確率で敵の攻撃を無力化する特殊能力の類は絶対に発動しない。
一定確率で発生するクリティカルヒットもない。
精神コマンドやMAP兵器、コンボ、援護攻撃の使い方が重要になる。
「ん、敵の装甲が厚い上にHPが高すぎるな。2対1でも打ち負けるぞ」
精神コマンドの使用回数にも限度がある。
迷うこと数分。
味方のユニットに隣接すると、修理コマンドが出ることを忘れていた。
つまり1体は敵に反撃し続け(攻撃してしまうと反撃され、敵のターンにもう1回攻撃されて撃墜されてしまう)、もう1体は修理で回復し続ける。
そういうことらしい。
やり方がわかれば簡単だ。
だがツメリアロボの本番はここからだった。
「ぐ、敵が多すぎる! どうやってクリアするんだ、これ」
「宇宙戦艦に味方ユニットを全部載せて中央突破」
「戦艦が撃墜されるだろ」
「宇宙戦艦からの発進は、宇宙戦艦が行動終了状態になってもできるでしょ。発進は宇宙戦艦じゃなくて、あくまでユニットの行動だから」
「なるほど」
宇宙戦艦で敵陣に突っ込み、すべてのユニットを発進させて敵陣の奥にいるボスを一斉攻撃。
自陣から敵陣のボスまでは2回移動しないと届かないが、戦艦が1回分運んでくれるのでギリギリ届く。
しかし次のステージでまたしても詰まる。
「ここは精神コマンドで1ターンの間スーパーロボットのダメージを4分の1にして、できるかぎり敵の攻撃を食らうの」
「敵のHPが高くて、スーパーロボットの反撃でも倒せないだろ」
「反撃じゃなくて、パイロットの特殊スキル『気力+(ダメージ)』で、わざとダメージを食らって気力をアップさせるのが目的なのよ。気力が溜まったらMAP兵器で薙ぎ払う」
「特殊スキルもフル活用しないといけないのか」
次こそ自力で解いてやろうと、パイロットの特殊スキルをチェックする。
『気力+(撃墜)』
「……」
前のステージと違って敵のHPは低い。
スーパーロボットを前線に突っ込ませて、反撃で撃墜しまくって気力を溜めるということだろうか?
だがそれでもMAP兵器を撃つだけの気力は溜らなかった。
全軍突撃しても倒せる敵の数には限界がある。
すぐにターン制限でミッション失敗してしまう。
「うーん」
もう一度パイロットのスキルをチェックする。
『気力+(撃墜):撃墜するたびに気力+1』
「ん?」
『撃墜するたびに』
書かれているのはそれだけだ。
「まさか……」
しかしそれしか考えられない。
前回と同じく、精神コマンドでスーパーロボットのダメージを4分の1にし、リアルロボットよりもさらに火力の低いパワードスーツユニットで殴る。
味方ではあるが、攻撃された以上スーパーロボットは反撃する。
普通ならリアルロボットよりも回避率の高いパワードスーツユニットに攻撃は当たらない。
だがツメリアロボでは命中率100%。
一発でパワードスーツユニットを撃墜する。
『気力+1』
「やっぱりか!」
スキル説明には『敵を撃墜』とは書いていなかった。
味方を撃墜しても気力は上がるのである。
なんという鬼畜仕様。
その後の問題も似たようなものだった。
リアルロボットやパワードスーツユニットを犠牲にしてボスの精神力とエネルギーを削り、スーパーロボットで叩く。
味方ごとMAP兵器で敵を吹き飛ばす。
敵と敵の間に味方ユニットを移動させ(○●○)、コンボで味方ごと撃ち殺す。
そして最新面。
クリア条件は『1ターン以内に戦闘を終わらせる』だった。
どう考えても火力と時間が足りない。
「ここはどうやってクリアするんだ?」
「主人公を撃墜」
「はあ!?」
「『敗北条件を満たせば戦闘は終わる』でしょ」
「わかるか!」




