TPSセット【ジャムトーストとニルギリ】
参考ゲーム
地球防衛軍
『TDFッ! TDFッ!』
携帯ゲーム機から妙な掛け声が聞こえてきた。
「TDF?」
「テラ・ディフェンス・フォース。ようするに地球防衛軍ね」
「TPSか」
「ダブル入隊パックあるからやってみる?」
「ダブルで入隊?」
「友達とすぐ遊べるように、同じゲームが2つセットになってるパック」
「お前友達いないだろ」
「なんか言った?」
「なにも」
デリケートな話題なのでこれ以上触れるのはやめておく。
かわいそうなのでダブル入隊することにした。
「ミリタリー系のスイーツがいい」
「ならジャムトーストと紅茶だな」
「……それはミリタリー系なの?」
「これが有名な『ダンケ飯』だぞ」
「あー、ダンケルクの映画で出たやつね」
作中で振舞われるジャムトーストが話題になり、視聴後にダンケ飯としてジャムトーストと紅茶を求めるファンが大量発生したという。
紅茶の種類はわからないが、ジャムなのでニルギリにしよう。
マグカップはホーローで。
これでラム酒があったら最高なのだが、それはさすがに自重した。
「移動が遅いな。ジャンプももっさりしてる」
「ジャンプはどうしようもないけど。走るより緊急回避のほうが早いわよ」
「そうなのか」
緊急回避は横っ飛びして地面を転がる動作だ。
たしかに走るより早い。
ただし、
「げ、回避できない!?」
「正面には緊急回避できないわよ」
移動したい方向を向いてしまうと、そっちに緊急回避できなくなるので注意が必要だ。
微妙にカメラを調節しないといけない。
横や斜めに移動することになるので慣れないと気持ち悪い。
「武器は2つか」
ボタン1つで装備を切り替えられる。
敵はアリやクモによく似たエイリアン。
とにかく数が多い。
質より量だ。
なのですぐに弾切れになるものの、なぜか装弾は無限にできる。
本当の意味で弾切れになることはない。
弾切れになれば自動的にリロードしてくれるので、序盤はとにかく連射していればいい。
「弾切れにならないとリロードできないから、もうすぐ弾が切れそうなら空撃ちしたほうがいいわよ」
「なるほど」
だいたい敵の群れを倒すと増援が来る。
増援がこちらへたどり着く前に空撃ちしてリロードしておいたほうがいい。
リロード中に武器を切り替えるとリロードがキャンセルされてしまうのでこれも注意。
ただし発射カウントは武器を切り替えてもキャンセルされない。
発射カウントとは武器を発射する感覚のカウント。
一度撃つと次の弾を撃つのに時間のかかる武器がある。
発射カウントは武器を切り替えてもキャンセルされないので、発射カウント中は武器を切り替えて対応、発射可能になったら即座に切り替えて主砲発射。
そしてまた武器を切り替えて発射可能になるまでもう1つの武器で頑張る。
そういう戦法だ。
「協力プレイといえばやっぱりこれね。合体!」
「頭に乗った!?」
「ふふふ、これでお互いの死角を補いつつ戦えるのよ。下のプレイヤーはジャンプできなくなるけど、この状態でも緊急回避はできるんだから」
「マジか」
ためしに緊急回避してみる。
たしかに上のキャラは振り落とされない。
……シュールなことこの上ないが。
下は防御に専念、上は攻撃一辺倒。
バランスも取れている。
究極のフォーメーションだ。
しかしこれだけでは面白くないので、難所以外では普通に戦う。
「くそ、当たらん!」
空を飛ぶ羽アリが厄介だ。
地上の敵なら段差がない限り横を向くだけで嫌でも当たる。
空中の敵だとちゃんと照準を合わせないと当たらない。
敵の数も多いので、攻撃を避けつつカメラを操作して照準を合わせるのが難しい。
「照準を上に向けて、連射しながらぐるぐる回ってれば当たるわよ」
「攻撃食らうだろ」
「低難易度ならほとんど当たらないわよ。敵はプレイヤーのいる位置に攻撃してくるでしょ? ぐるぐる円を描いて回ってれば、敵が攻撃してきた時にはもうそこにいないし」
「……シューティングと同じテクニックが使えるのか」
基本は縦・横・奥スクロールのシューティングに通ずるものがある。
TPSも大きなくくりではスクロール系のシューティングと同じなのだ。
「羽アリはどんな小さいダメージでも、とにかく攻撃を当てさえすれば地面に落ちるから。連射の効く銃か空中でも攻撃範囲の広い火炎放射器で薙ぎ払って、落ちたところを確実に仕留めて」
「ラジャー」
「それとこのゲーム、市民はどれだけ攻撃を食らっても死なないから。助けようと思わないほうがいいわよ」
「むしろ危なくなったら市民を盾にしたほうがいいのか」
「そういうこと」
わかりやすくて簡単なテクニックが多い。
プレイすればするほど効率よく敵を倒せるようになる。
「無双系のゲームに近いな」
というか、無双ゲームよりもよっぽど無双している。
特に爆発物が気持ちいい。
着弾すると、爆発によって広範囲を攻撃できる。
敵の群れの中央にぶち込むのが快感だ。
建物に当たると建物がガラガラと崩れ落ちるのも気持ちいい。
弾切れにならないので無駄に撃ちたくなる。
適当にビルを破壊しているだけでもストレス解消になりそうだ。
もちろん崩れ落ちる建物に敵を巻き込むこともできる。
直接敵を狙わず、建物に当てて爆風で攻撃するのも1つのテクニックだ。
空中の敵を攻撃するなら、直接狙うより爆風で攻撃したほうがいい。
しかし建物を破壊しすぎるとその戦法は使えなくなる上に、ガレキが邪魔で移動しにくくなるし、身を隠せる遮蔽物もなくなる。
おまけに、
ドカン!
「げ、自爆した!?」
「調子に乗るから」
爆風には自分もまきこまれる。
乱戦やエイリアンの巣穴などの狭い場所では特に自爆しやすい。
敵の攻撃よりもはるかにダメージがでかく、一発で体力ゲージの半分以上、下手をすれば一発で即死。
ハイリスクハイリターンだ。
それでも爆発物はやめられない。
水辺の手榴弾は最高だ。
水深の深いところだと、敵はプレイヤーのそばにいても攻撃できない。
だがハンドグレネードは投げられる。
水辺へ誘い出せば一方的に虐殺できた。
ただしハンドグレネードもピンポイントで攻撃するのは難しい。
正面に投げれば敵に当たって自爆するし、放物線だと近くにいる敵を飛び越えてしまう。
周囲の敵を倒そうと真上に投げればやはり自爆する。
「ここにも乗り物さえあればな」
乗り物に乗っている状態ではプレイヤーはダメージを食らわない。
ダメージは乗り物に蓄積され、一定以上のダメージを受けると壊れる。
爆発物を投げ、素早く乗り物に乗って盾にすれば自爆し放題だ。
ただ乗り物の機動力は捨てがたい。
バイクに乗ればあっという間に敵と距離が取れるし、プレイヤーの射程距離は敵よりもはるかに長いので、敵が近づくまで遠距離から一方的に攻撃できる。
近づかれたらまたバイクに乗ればいい。
自爆は最後の手段だ。
「いかに自爆を防ぐかが課題だな」
「逆に考えるのよ。わざと自爆すればいいじゃない」
「は?」
「ダウン中は無敵でしょ」
「敵の数が多すぎて、無敵時間がないと二度と起き上がれないからな」
「それを利用するのよ。高火力の爆発物を投げたら素早く武器を切り替えて、高火力の武器が爆発する前に小火力の爆発物で自爆!」
「な!?」
たしかにこれなら最小のダメージで最大の戦果を挙げられる。
「爆発は芸術だ!」




