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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ハンティングアクションセット【春巻きとミントティー】

参考ゲーム

ワンダと巨像

ドラゴンズドグマ

「『トドメの一撃は、せつない』」


「ん、CMで見たことのあるゲームだな」

 キャッチコピーが印象的で今でも覚えている。

「これ面白いのか?」

「私のゲームランキングベスト10に入るわね」

「そこまでか」

 残り9本のゲームも気になったが、長くなりそうなので聞くのはやめておいた。

「少しやってみてもいいか?」

「おやつ作ってくれたらやらせてあげる」

「……足元見やがって。なにが食いたいんだ?」


「春巻き」


「あいよ」

 せっかくなので晩飯用にたくさん作っておく。

 品数も増やそう。

 モロッコの春巻き『ブリック』や、ベトナムの春巻き『チャージョー』がいい。

 チャージョーは豚挽き肉、エビやニンジン、春雨などを炒めてライスペーパーで包んで揚げる。

 比較的、中国の春巻きに近い。

 ブリックはひき肉やジャガイモ、玉子などをライスペーパーで包むものだが、特徴的なのは包み方だ。

「がぶりっく!」

 普通の春巻きのように棒状ではなく、四角いライスペーパーで三角形に包むので他の春巻きとはまた違った食感を味わえる。

「んー、トロトロでおいしい!」

 半熟卵もそこらの春巻きでは味わえないタネだ。


 お茶はタマリンドジュースかミントティー。


「酸っぱい梨みたいな味がたまらんど」

「……言うと思ったよ」

 俺はミントティーだ。

 モロッコ風に砂糖多め。

 さわやかなミントに、日本ではありえない猛烈な甘さ。

 異国情緒を感じる。

「さて……」

 待望のニコと巨人を起動する。

 ストーリーは単純明快。


 ニコは死んでしまったヒロインを生き返らせるため、16匹の巨人族(巨人や恐竜などの巨大生物の総称)を殺す。


 それだけだ。

 雑魚との戦闘はない。

 16のボスバトルだけだ。

 基本アクションは『つかむ』『登る』『刺す』の3種類。

 矢を射ることもあるようだが、それにしてもシンプルすぎる。

「面白いのか、これ?」

「ここ最近プレイしたものではトップクラスね」

「へえ」

 相当評価が高い。

 これは期待できそうだ。

 ヒロインを救うために荒れ果てた辺境に向かい、巨人族を探す。

 手がかりを頼りに広いマップを探索すること数分。


「でかい!?」


 ついに最初の巨人族を発見した。

 体長10メートルはあろうかという人間型の巨人族だ。

 これは2Dのゲームにない迫力だろう。

 3Dだからこそ味わえる圧倒的な巨人の存在感。


『おおおおおっ!』


 巨人の雄たけび。

「あ、見つかった」

 動きこそスローなものの、踏み潰されたら一貫の終わりだ。

 巨人が一歩歩くごとに大地が割れ、コントローラーが強く振動する。

 踏み潰されないように逃げ回るので精いっぱいだ。

「どうやって倒すんだ、こんなの!」


「つかんで登ってふくらはぎを刺すのよ!」


「ふくらはぎ!?」

 何とか後ろに回り込み、足首に飛び付いてふくらはぎへ登ると、渾身の力を込めて剣を突き刺した。


『おおおおおっ!?』


 ふくらはぎを何度か刺すと巨人が膝を突き、音楽が切り替わる。

 一種の勝利確定BGMだろうか。

 テンションが上がる。

 演出の上手いゲームだ。

 巨人が膝を突いたことで、膝、太もも、背中、頭部にかけての体のラインが傾斜のきつい斜面になった。

 すかさず巨人の体を駆け上がり、一気に頭頂部までよじ登る。

「どこを攻撃すればいいんだ?」


「肩のうしろの2本のツノのまんなかにあるトサカの下のウロコの右」


「どこだよ!」

 わけがわからないながらも、なんとなく弱点そうな場所に剣を突き刺す。

『おおおおおっ!?』

 巨人が激痛で暴れ回った。

 巨人族の動きに合わせてニコを動かすものの、これでは振り落とされてしまう。


「R押して!」


「またか」

 Rを押すとニコが巨人の髪の毛をつかんだ。

「右下の丸いやつに注意してね。それが握力ゲージで、握力がなくなると振り落とされるから」

「握力を回復させるために、定期的に巨人から手を離さないといけないわけか……」

 髪の毛から手を離し、絶妙のバランス感覚で握力ゲージを回復させ、再びつかんで刺す。

 その繰り返し。

 やることはシンプルだ。

 だがそれだけに神経を使う。


「トドメの一撃は、せつない!」


「お前が言うな!」

 それでも最後の一撃には力が入った。

 オーバーアクションでターンッとボタンを押し、最後の一撃を巨人に突き刺す。

 巨人は断末魔を上げながら倒れた。

 ふうっと息を吐いて力を抜くと、かなりの手汗をかいていることに気づく。

 相当力が入っていたらしい。

 操作はシンプルだが、それだけに没入感がある。


 相手はたった一匹なのに、100の敵を薙ぎ払う無双ゲームに匹敵する爽快感。


 アクションを突き詰めるとこうなるというのがよくわかるゲームだ。

 その後もさまざまな巨人を倒していく。

 操作はシンプルなれど、巨人族との戦いはバラエティに富んでいた。

 初戦で巨人の背中をよじ登ったように、2戦目は巨大な虎の背中の上を駆け抜けた。

 剣を刺して背中を切り裂きながら頭部まで走る疾走感が素晴らしい。

 他にも高所から巨人の体へ飛び降りたり、巨人の振り下ろした武器の上を駆け上がったり、こっちへ突っ込んでくる巨鳥に飛び付いたりetc

 そしてどの巨人族でも最後はやはり、


「トドメの一撃は、せつない!」


 物悲しい断末魔を迎える。

 16の巨人族を倒して迎えたエンディングも、決してハッピーエンドとはいえない切なさを感じさせるラストだった。

「これで終わりなのがもったいないな」


「物足りないなら『タイガースドグマ』もやってみたら?」


「ん、日本のゲームなのに洋ゲーっぽいな」

 グラフィックやキャラメイキングに海外のゲームっぽい雰囲気が漂っていた。

 オススメするだけあって戦闘システムはよくできていて面白い。

 各ボタンにスキルをセットすることができ、Rボタンを押しながらボタンを押すとセットしたスキルが発動する。

 ダッシュ突き(敵に突進しながら攻撃)で先手を取り、先制攻撃で敵がバランスを崩している内に連続攻撃を叩き込み、反撃される前に倒すのがセオリーだろう。

 動きの速い狼や、空を飛ぶハーピー、徒党を組んで襲撃してくる盗賊など、ザコにも厄介な敵がそろっており、油断すると死ぬ。

 スリリングだ。

「お、本当に敵がつかめる!」

 スタミナを消費してしがみつき、敵を刺すことができた。

 たとえば一つ目の巨人サイクロプス。


 右手にしがみついて攻撃すれば武器を落とし、足を集中攻撃すればダウンし、頭を攻撃すれば兜が外れて弱点の目を攻撃できるようになる。


 ライオンとヤギの頭、蛇の尻尾を持つ『合成獣キメラ』の場合、尻尾にしがみついて攻撃すれば毒蛇の首を斬れる。

 空を飛ぶ敵はしがみつきで空中戦に持ち込み、一定のダメージを与えて地面に落とす。

 ゴブリンのような小さなモンスターにもしがみつくことができ、ゴブリンを羽交い絞めにして味方に攻撃させることもできた。

 逃げるNPCを捕まえるイベントや、暴れるNPCを鎮める時もしがみつきを使うことになる。

 意外に用途が広い。

 スタミナは時間経過で回復するものの、回復にはかなり時間がかかるのでスタミナの管理が重要になる。

 攻撃を回避しつつスタミナを回復し、敵にしがみついて首を切り落とすスリルがたまらない。

 ニコと巨人ほどのスケールの大きさはないが、戦闘の面白さはトップクラスだ。


 そしてシナリオを進めると伝説の虎が復活し、宿屋のおっさんがさらわれてしまう。


「ん?」

 意味が分からなくてもう一度確かめてみる。

 間違いなくさらわれたのは宿屋のおっさんだ。

 元は凄腕の冒険者だったとか王族の血を引くとかそういう設定はなにもない。

 まぎれもなくただの宿屋のおっさんである。

「なんだこれ、まるで意味がわからんぞ」


「このゲーム、会話するだけで好感度が上がるのよ。虎にさらわれるのは一番好感度の高いキャラだから、必然的に宿屋のおっさんがヒロインになるの」


 ……なんて恐ろしい罠だ。


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