3Dシューティングセット【ヴァニラアイスと抹茶】
参考ゲーム
スターフォックス
「対戦しましょ」
また新しいゲームを買ったらしい。
『メテオフォックスアサルト』
有名な3Dシューティングだ。
「『アースコンバット』の会社が開発したんだって。……開発したのはアスコンのチームじゃないんだけど」
「なんで別のチームが作ったんだ?」
「大人の事情」
……これ以上突っ込むのは危ないのかもしれない。
いきなり対戦しても勝負にならないので、ストーリーモードで操作に慣れることにする。
ちゅどーん
「あ」
自爆してしまった。
メテオフォックスではロックオンサイトを自由に動かせる。
フライトシミュレーションではだいたいロックオンサイトが自機の正面にあった。
つまり自機を動かすとロックオンサイトが動き、敵をロックオンするためには自機の正面でとらえなければならない。
だがこのゲームではサイトを動かした方向へ自機が動く。
ライトユーザーに優しい操作体系だ。
LもしくはRボタンを2回素早く入力すると、機体がドリル回転する『ローリング』になり、敵の弾を弾き飛ばすことができる。
スティックを下に入れてボタンを押すと宙返りし、敵に後ろを取られた時も安全にやりすごせるし、敵の攻撃を避わす緊急回避としても便利だ。
機体を加速させるブーストや、減速させるブレーキもある。
強制奥スクロールシューティングではあるが、ブーストすれば早く、ブレーキをすればスクロールを遅くできるのも斬新だ。
体力ゲージ制ではあるものの、ライフ回復アイテムがあるのはありがたい。
レーザーもアイテムを取ると2段階にパワーアップし、ハイパーレーザーになればシャレにならない破壊力になった。
画面全体の敵にダメージを与え、敵の弾を消すボムもある。
味方機も多いので数的不利になりにくい。
ただし、
『たすけてフォックス~!』
やたら味方が救援を求めてくるのがうっとうしい。
しかも、
『なにをしとるんじゃフォックス!』
助けようとすると(味方の後ろにいる敵を撃とうとすると)味方を誤射してしまい、怒られてしまうことが多い。
理不尽だ。
『オールレンジモードに突入する!』
「げ!?」
奥スクロールが終わり、360度自由に動けるようになった。
ボス戦では自由に戦えるらしい。
突然感覚が変わって戸惑ったものの、ここは他の3Dシューティングでつちかった経験が役に立つ。
無事にミッションをクリアした。
「よし!」
安心したのも束の間、
『降下作戦開始!』
「は?」
いきなり白兵戦が始まった。
「……なんだこれ」
「3Dシューティング」
「3Dは3DでもTPSだろうが!」
キャラを後ろから眺める視点だ。
ブラスターやマシンガン、グレネードなどさまざまな武器を使い分けて敵を倒すシューティングアクションである。
「これはこれで面白いわよ」
「……操作に慣れんな」
一定時間内に敵を倒すとコンボが繋がってHIT数が増えていく。
最初は微妙だったが、HITを繋げられるようになるとなかなか面白い。
操作こそ複雑だが、全体的な難易度は低かった。
俺でも初回プレイでクリアできる。
これなら対戦できそうだ。
「はろー」
「こんにちは」
「ん、ちょうどいい時に来たな」
一区切りついたところに全員そろったのでおやつにする。
作るのが面倒なのでヴァニラアイスだ。
飲み物はコーヒーだろうか。
変わったものだと鉄観音もいい。
熱いお茶とアイスが口の中で溶け合い、ミルクティーのようになる。
「調味料ちょうだい」
「は?」
「ちょい足しよ。抹茶、醤油、きな粉、黒蜜、七味、みたらし、ゴマ油、ゴマ塩、天かす。どれも美味しいんだから」
「そういえばアイスクリーム専用の醤油とか売ってたな」
「面白そうですね」
「いっつちゃれんじ!」
試しに醤油をかけてみる。
とろみがついているのでチョコレートソースと錯覚してしまいそうだ。
おそるおそる一口。
「……美味い」
まるでカラメルだ。
しょっぱさが甘さを引き立たせる。
それはゴマ塩や天かすでも同じだった。
出汁の効いた天かすのカリカリ感や、七味のピリっとした刺激。
みりん焼きと一緒に食べても美味い。
アイスへのささいな工夫だけでこんなに斬新になるものか。
少し甘く見すぎていたのかもしれない。
和風なので抹茶を立てることにした。
抹茶の中にアイスを浮かべるのもまた一興。
「納豆もあるわよ」
「……正気か?」
「納豆の粘りでトルコアイスっぽくなるんだって」
なぜ最初からトルコアイスを食わないのか。
根本的な疑問を抱いたものの、
ねばー
「あはは、すっごい糸引いてる!」
「くれいじー!」
楽しそうなので放っておく。
ちなみにひき割り納豆がオススメだそうだ。
「じゃあ対戦ね」
「シューティングゲームで対戦というのは珍しいですね」
「実は対戦が一番評価高いのよ。4人対戦できるし、戦闘機だけじゃなくて戦車とかパイロットでも戦えるんだから」
「パイロット?」
「生身で戦うってこと」
「……それは勝負になるのか?」
「ならないわね。生身だから一発食らえば瀕死、二発でゲームオーバーだし」
「じゃあ、お前パイロットな」
「なんでよ!」
「そうでもしないと勝負になりませんから」
「アンフェア!」
「しょうがないわね」
やむなく瑞穂がパイロットを選択する。
これで俺たちにも勝ち目が出てきた。
スタートと同時にこいつを撃ち殺そう。
他の二人もそう思っていたらしく、対戦開始と同時にパイロットへ殺到した。
「そう来ると思った」
だが俺たちの考えは読まれており、まんまと市街地へ逃げ込まれてしまう。
障害物が邪魔でなかなか当たらない。
おまけにパイロットはレーダーに映らず、ロックオンもできないので手動照準のショットを撃つしかない。
小回りの利かない戦闘機で初級者が市街地に隠れるパイロットを撃ち抜けるはずもなく、
「落ちろ、カトンボ!」
「のー!?」
あえなく全員パイロットに撃墜された。
まさか生身の人間相手にここまでやられるとは思わなかった。
作戦変更。
「では戦車でいきましょう」
「ぱんつぁーふぉー!」
「ちょっと卑怯よ!?」
先生とアリスの戦車が市街地へ突っ込む。
「ああ、もう! 戦車嫌い!」
戦車なら市街地でも走り回れる上に、体当たりをすれば大ダメージを与えられる。
パイロットの天敵らしい。
市街地から出たら俺が上空から撃ちまくる。
完璧だ。
ドーンッ
「げ!?」
「油断大敵ですよ?」
「くそ、パイロットより的が大きいのに当たらん!」
戦車ならレーダーに映るし、ロックオンも使える。
だがやはり障害物が邪魔だ。
ショットを撃つにしても、ロックオンするにしても、敵を正面でとらえなければならない。
もし攻撃を外せば急旋回やUターンをしなければならず、敵へもう一度照準を合わせるのに時間がかかってしまうのだ。
その間は隙だらけ。
戦闘機よりも簡単に方向転換できる戦車から撃ちまくられる。
いくら戦闘機がスピードや破壊力に優れているからといって、簡単に勝てるものではないのだ。
4人対戦、戦闘機・戦車・パイロット、市街地。
それに広範囲へダメージを与えられるボムや、レーザーのパワーアップアイテム。
ルールも最後に生き残ったプレイヤーが勝つ『バトルロワイヤル』や、制限時間内に撃墜した数を競う『タイムバトル』、決められた撃墜数に到達したプレイヤーが勝つ『ポイントバトル』などがあり、さまざな要因が絡み合って対戦は混沌とする。
たしかに面白い。
4人対戦できるゲームでは一番かもしれない。
戦闘機・戦車・パイロットをランダムで決定すると最高だ。
組み合わせによって展開がまるで違うものになる。
「よし、後ろを取った!」
「ふふ、甘いわね」
ちゅどーん
「な!?」
瑞穂の戦闘機が障害物に突っ込んで自爆した。
ポイントバトルは決められた撃墜数に到達するまで対戦を続ける方式なので、死んでもすぐに復活する。
「ポイントバトルでは死にそうだったら自爆したほうがいいのよ。自爆すれば相手にポイント入らないし、ライフも回復するんだから」
「……なんて戦法だ」
ちなみに戦車やパイロットは障害物にぶつかってもダメージを食らわないので自爆はできない。
戦闘機にだけ使える裏技だ。
もちろん欠点はある。
ちゅどーん
ちゅどーん
ちゅどーん
ちゅどーん
ちゅどーん
「みんな自爆しすぎ!」
「お前のせいだろうが!」




