ワイヤーアクションセット【にんにくと昆布茶】
参考ゲーム
悪魔城ドラキュラ
海腹川背
セプテントリオン
「にんにくと昆布茶!」
「……まともな注文をしろ」
「にんにくを丸ごと使ったのない?」
「蜂蜜漬けならあるぞ」
「じゃあそれ」
「あいよ。そういやなんでニンニクと昆布茶なんだ?」
「サブウエポンのニンニクを置いとけばラスボスのヴァンパイアも簡単に倒せるのよ!」
「……またメトロイドヴァニアか」
「メトロイドヴァニアは外伝みたいなもんよ。本来は横スクロールアクションだし」
「昆布茶は?」
「特定のボスを倒すと流れるCM」
「ゲーム中にCM?」
「時代を先取りしてたのね。釣り竿のCMなんていうのもあったんだから」
タイアップした商品がアイテムとして登場するというのはたまに見かけるが、CMが流れるのは珍しい。
しかもなぜ昆布茶なのか。
繋がりがわからない。
とりあえずマイルドな甘さの蜂蜜漬けニンニクをつまみながら(もちろん昆布茶には合わない)プレイしてみる。
メイン武器は鞭。
上下左右斜めの8方向に攻撃できる。
初代は横だけの2方向、2は上下左右の4方向だったらしく、正当に進化しているらしい。
ただ斜め方向に攻撃できることで、サブウエポンの価値が若干下がっている。
まあ、サブウエポンは種類が豊富なので違う武器を選べばいいだけの話なのだが。
攻撃ボタンを押したまま十字キーを操作すると、鞭を体の周りで振り回すことができる。
振り回しは攻撃力こそ低いものの、敵の攻撃を弾くことができる重要な技だ。
『ぬわー!?』
シンプルな横スクロールアクションで、鞭による豊富な攻撃方法があるものの、メトロイドヴァニアより難易度が高い。
すぐに死ぬ。
メトロイドヴァニアの特徴であるRPG要素のないことが、難易度に直結している印象だ。
レベルが上がらない、武器や防具で自分を強化できない、いつでも使える回復アイテムがない、苦手なステージを後回しにすることができない、セーブポイントがない(一応、無限コンティニューではあるのだが、残機が少ない上にボスでゲームオーバーになるとステージの最初からやり直しになる)。
なぜメトロイドヴァニア系が海外で受けたのかわかる気がする。
『アーアアー』
ターザンジャンプで穴を飛び越えた。
鞭の先端には鉤がついており、壁に引っ掛けてさまざまなアクションをすることができる。
この鞭アクションが最大の売りだ。
壁や天井に引っ掛けて上に登る、床に引っ掛けて安全に下へ降りる(画面は横長なので下が見にくく、うかつに下へ降りると敵にぶつかったり針山で串刺しになる)、振り子のように反動をつけて遠い足場へターザンジャンプする。
足場が遠ければ天井に何度も鞭を引っかけて進むしかない。
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/\ /\ /\ /\
○ ○ ○ ○ ○
空中で何度も鞭を天井に引っかけて渡る
敵にフックを引っかければこちらに引き寄せたり、武器や盾を奪うこともできる。
ただしこっちへ引っ張っている最中に敵が穴へ落ちると、逆にこちらが引きずり込まれて穴に落ちてしまう。
←
○━━━━━敵
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↑
敵がここに落ちると、逆に主人公が引っ張られて穴に落ちる
似たようなシチュエーションだと、向こう側に渡ろうとして鞭を飛ばすものの、敵やサブウエポン(アイテムは鞭で取れる)にぶつかってしまい、一緒に落ちるということもある。
○━━━━━敵
■■■
敵やサブウエポンなどがなければ、主人公の落下と同時に鞭も下に落ちるので床にフックが引っ掛かる
プレイヤー殺しのためにわざと敵やサブウエポンを置いているのが嫌らしい。
「鞭アクション難しいな」
「ボスにやられるより落下死する可能性の方が高いゲームだもの。ステージ制だけどゴールが複数ある場合があるから、メトロイドヴァニアみたいに簡単なルートを進んだ方がいいわよ」
「ルート選択できるのか」
難易度が高いだけにありがたい。
というか好きなルートを選べるというより、そもそも難易度の高いルートはテクニックがないと行けない。
ライトゲーマーは自然と簡単なルートから攻略することになるということだ。
……しかしここまで露骨に『上に何かありますよ』というステージを見せられると、無理をしてでも上に行きたくなる。
「よし、こっちだ!」
「え、上行くの」
「いい機会だからここで練習する」
主人公が使っている鞭は警棒のような仕組みらしく、段階的に鞭の長さが変わった。
壁に引っ掛けている時に↑を押すと鞭が長くなり、↓を押すと短くなる。
しかも鞭はゴムのように伸縮性があった。
まず鞭を上に引っかけてぶら下がり、↑を押して鞭を長くする。
鞭が長くなれば主人公の体は下に落ち、落ちた衝撃でゴムが伸びる。
鞭がゴムのように伸びている時に、↓を押して鞭を短くすると勢いよく引っ張られた。
この勢いを利用して飛ぶのだが、これだけでは厳しい。
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○ 鞭がゴムのように伸びきっている時、↓を押して鞭を短くすると反動で上に大きく跳ね上がる
たとえば上にあるブロックに移動したい場合、そのブロックにフックをかけていれば、ジャンプしてもブロックに頭を打つだけだ。
ブロックの上に乗るには左右に体を振って振り子運動を行い、ブロックを中心に弧を描かなければならない。
これが難しい。
慣れるまでかなり時間がかかる。
さいわい5分程度で成功したが、もう一度やれといわれても成功させる自信はない。
「ん、天井が針山になっててフックがかけられんな。どうやって先に進めばいいんだ、ここ」
「壁に引っ掛けて鞭を短くすれば向こう側に引っ張られるから、その瞬間にジャンプ」
▽▽▽▽▽▽▽
→
○━━━━━■
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△針山
壁に引っ掛けている状態で鞭を短くすると、向こうへ引っ張られる
引っ張られる力を利用して大ジャンプし、針山を飛び越える
「床に引っかけた鞭を短くすれば、引っ張られる勢いを利用してダッシュすることもできるわよ。タイムアタックには必須のテクニックね」
「……操作が難しくてろくに使えないけどな」
操作には繊細さが求められる上に、応用範囲が広すぎて使いこなせない。
だがここまで来てしまったからには覚悟を決めるべきだ。
鞭を上手く使って敵を倒していく。
天井を這う敵はフックを引っかけて地上に落としてから殴る。
ジャンプだけでは避わしきれない攻撃を多用してくる敵は、天井にぶら下がるか、床にフックを引っかけてから穴に落ちて攻撃を避わす。
ナマズのような化物はフックをかけると電気を流して感電させてくるので、フックはかけずに叩いてつぶす。
鞭の届かない場所にいる敵は、別の飛んでいる敵にフックをかけて空を飛んで叩き落とす。
重い鎧に包まれてダメージを与えられない敵は、吊り上げて高いところから落とし、落下ダメージで倒す。
○
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敵
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○ ■\
敵
ブロックの上から敵にフックをかけ、飛び降りて敵を吊り上げて落とす
フックを引っかけられない場所に重い敵(引っ張っても動かない)を落とし、ブロックの代わりにフックを引っかけて突破するステージもあった。
▽▽▽ ▽▽▽
敵
▽\
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○
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想像以上に鞭アクションが多彩で面白い。
横スクロールアクションの可能性を見ている気がした。
特にこのゲームの素晴らしいところは、同じゴールでも複数の攻略法があることだ。
たとえばスタート地点から水を挟んでゴールが見えているとする。
うまいプレイヤーなら何らかの方法で水を飛び越えて一瞬でゴールできる。
それができないならハシゴで上にのぼる。
少しテクニックのあるプレイヤーなら一番高いところからジャンプしてゴールできるだろう。
それもできないなら地道に足場をぴょんぴょん飛び越えて横に進み、ハシゴで降りてゴールするしかない。
プレイヤーのテクニックによってあらゆる場所でショートカット可能であり、うまくなればなるほどタイムが短くなる。
新規ルートの開拓や、思いもしなかったルートの発見も面白い。
『万里夫メイカー』のように好きなステージを作ってプレイできるようになれば完璧だ。
「……ここ針山だけで足場がないんだが」
「天井にぶら下がりながらボスと戦うのよ」
「ぶら下がりっぱなし!? 攻撃できないだろ」
「シャンデリアにぶら下がれば落ちるから、それをボスにぶつけるの」
「なんて戦い方だ……」
厄介なのはシャンデリアが落ちると自分も下に落ちてしまうこと。
なのでシャンデリアが重みで落ちる前に振り子を作り、落ちた瞬間に振り子の反動で飛び上がって天井にフックを引っかけないといけない。
しかもボスを倒すにはエリア内にある3つのシャンデリアを全部落とさないといけない。
かなり難しい。
たぶん50回は死んだ。
ぶらさがっている間はボタンを押しっぱなしで、鞭の長さや振り子を調節するために十字キーも上下左右まんべんなく操作しないといけないので指が痛い。
ゲームで両手の親指が痛くなるのは久しぶりだ。
がしゃーん
「よし!」
それだけに3つ目のシャンデリアをぶつけた時の感動もひとしお。
高難度のエリアをプレイし続けたおかげで鞭さばきにも磨きがかかり、他のエリアを楽々と突破していく。
難易度の高いエリアやボス戦では死にまくったものの、鞭アクションの基本は変わらない。
50回ほど死ねばだいたいどのエリアも突破できる。
……死にすぎて感覚がマヒしている気がしないでもない。
「ラストダンジョンが船の中っていうのが変わってるな」
おそらくタイタニックがモデルなのだろう。
確実に沈む。
「食らえニンニクパワー!」
ありったけのニンニクを仕掛ける。
すると一瞬でヴァンパイアロードが死んだ。
これまでのステージが嘘のようなあっけなさだった。
ごごご
「なんだ!?」
「ラスボスを倒すとラストダンジョンが崩れて、一定時間内に脱出しないといけないお約束の展開よ」
「くそ、やっぱり沈むのか!」
船が転覆した。
必然的に床が天井になり、天井が床になるという天地逆転が起こる。
これは言葉以上に厄介だ。
なぜなら船というものは人間が床を歩いて移動することを前提に作られている。
わかりやすいのがドアだ。
天地が逆転するとドアは天井と接することになる。
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□←ドア
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□
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ドアをくぐるためには壁をよじ登らなければならない。
一番厄介なのは階段だ。
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物理的に昇り降りできない。
正確に鞭を操り、なんとか難所を突破していくものの、
ごごご
「げ」
船がさらに傾く。
今度は船体が縦になったらしい。
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おまけに浸水してきて、どんどん水かさが増していく。
しかも水中の敵には鞭が効かない。
一度釣り上げてから叩く必要がある。
とてつもなく性格の悪い仕掛けだが、ある意味このゲームのためにあるステージともいえた。
これまで培ってきた鞭さばきが重要になる。
くるくる上下左右が入れ替わるステージを華麗な鞭さばきで突破し、豪華客船を脱出。
転覆の原因になった氷河に飛び移ると同時に、豪華客船は沈没した。
手に汗握る怒涛のクライマックスだった。
「名作だな」
「でしょ」
「ラスボス弱すぎだけどな」
「ニンニク使うからでしょ」
「お前がネタバレしたんだよ!」




