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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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メトロイドヴァニアセット【ピーナッツとトマトジュース】

参考ゲーム

メトロイド

キャッスルヴァニア


『メトロイドヴァニア、おもろいど』


 硬派な雰囲気に見合わないフレーズが、妙に心に残るCMだ。

「本当に面白いのか、これ」

「自分で確かめてみれば?」

 ジャンルは横スクロールに近いアクション。

 それもジャンプして敵を踏むタイプではなく、鞭で攻撃するタイプだ。

 左右だけでなく真上にも攻撃でき、ジャンプすれば真下にも振れる。

 ジャンプはふわっとしており、微妙に操作しづらい。

「ぐ、鳥が厄介だな!」


「レトロゲームの天敵、それが鳥よ!」


 このゲームの鳥は『~』のように上下に揺れるので、直線的にしか攻撃できない鞭はなかなか当たらない。

 逆に体当たりをくらってしまう。

 フンを落として攻撃してこないだけまだマシだろう。

「せめて斜めに振れればな……」

「サブウエポンなら斜めに攻撃できるわよ」

「どうやって使うんだ?」

「↑を押しながら攻撃ボタン」

「お、出た」

 通常攻撃よりも威力があっていい感じだ。


 なにより空を飛んでいる敵や、斜めから飛んでくる攻撃を撃ち落とせるのがいい。


 弾数制限があるのは仕方ないところか。

 代わりにサブウエポンの種類は豊富。

 ただし1度に1種類しか持てない。

「……鳥にだいぶ削られたな」

 体力はHPのように数字で管理されており、初期値は99。

 敵から攻撃を食らうとそれなりのダメージを食らうわりに、倒した敵から入手できる肉は回復量が少ない。

 残機の概念はなく、HPが0になればゲームオーバー。

 HPを回復させるためにザコを倒そうとして、逆にダメージを増やしてしまうことも多い。

 もっと慎重に行動したほうがいいだろう。

 そうしてザコを回避しながら探索していると、BGMが変わった。


吸血鬼ヴァンパイアね」


「こいつがボスか」

 吸血鬼といってもコウモリだ。

 そこそこ動きも速く一撃が重い。

 おまけに通常攻撃はほとんど効かない。

 有効打を与えられるのはサブウエポンだけだ。

 そのサブウエポンも数に限りがあるのでうかつには使えない。

 だがぐずぐずしていると押し込まれてやられてしまう。

 サブウエポンを惜しんでいる場合ではない。

 とにかくサブウエポンを乱射してヴァンパイアを撃破する。

 HPもサブウエポンも半減。

 かなりの痛手だ。

 近場にHPを全回復できる『マンガ肉(骨付きのアレだ)』と、サブウエポンを回復できるハートがなければやばかっただろう。

 回復してゲームを再開する。

「上下の移動多いな」


「探索型だもの」


「探索型?」

「マップを探索してパワーアップアイテムとか鍵とかボスを探すのよ」

「横スクロールだけだと一本道になるから、エリアを上下に繋げてマップを広げてるんだな」

「そういうこと。探索型だから好きな順番でボスを倒せるし、RPGみたいなパワーアップ要素があるから時間をかけて強化すればクリアしやすくなるわけ。セーブもできるから事実上の無限コンティニューだし。いわゆる『メトロイドヴァニア』っていうジャンルよ」

「メトロイドヴァニアってジャンル名だったのか」



□-□-□-□

      |

      □-□-□-□


※横スクロールアクションも縦にエリア移動することはあるものの、基本的に一本道



      □

□     |

|     □-□-□

□-□-□<

|   | □-□

□   □   | □

    |   □<

□-□-□     □-□


※メトロイドヴァニアは縦の移動が多く、移動するルートはプレイヤーが自由に選べる



 ……古いゲームなのでマップがないのがつらい。

「お」

 探索していると、いかにもなにかありそうな細い穴を発見。

「ん、しゃがんでも入れんな」

「もう1回↓を押すと小さくなれるわよ」

「しゃがんだ状態で↓か」


 ↓を入力すると主人公がネズミに変身した。


 ヴァンパイアと人間とのハーフなので変身能力があるらしい。

 しばらくすると行き止まりにぶつかった。

「ネズミの状態で攻撃ボタンを押すと爆弾ね」

「どこに爆弾なんか持ってるんだ」


「フンが爆発するのよ」


「……嫌な攻撃方法だな」

 フンは時限式の爆弾(一定時間経つと自動的に爆発する)なので敵を誘導するタイミングが難しい。

「お、出たな」

 細道の先にはヴァンパイア。

 ゲーム画面にはHPやサブウエポンの数だけでなく、夜の国シロヴァニアに生息しているヴァンパイアの数も表示されている。


 こいつも含めてあと46匹らしい。


 先は長そうだ。

 とりあえずサブウエポンを連射してヴァンパイアを撃破。

「さすがに連射しすぎか」

 節約のためヴァンパイアの行動パターンを観察する。


 ヴァンパイアは目が悪いのか、それとも容量の問題か、一定以上の距離があると(ヴァンパイアの姿が見えなくなるぐらい横へスクロールすると)こちらへ向かってこなくなる。


「これでどうだ!」

 画面外のヴァンパイアへサブウエポンを投げまくる。

「画面外の敵には攻撃当たらないわよ」

「……もどかしいな」

 そこにいるのは確実なのに当たらない理不尽。


 というか画面内にいても、ヴァンパイアがこちらに気づいていない状態だとサブウエポンは当たらなかった。


 なのでヴァンパイアが気づかない距離でサブウエポンを投げ、サブウエポンの後ろをついていく。

 サブウエポンが当たる瞬間にヴァンパイアの視界に入り、サブウエポンを当てるのだ。

 うまくサブウエポンが当たったら、着弾の衝撃でヴァンパイアが後ろに下がった隙に視界の外へ逃げる。

 以下繰り返し。

 これで確実に勝てる。


 だが製作者もこの必勝法に気づいているらしく、様々なシチュエーションを用意していた。


 不安定な足場、落下すれば針地獄でダメージは必至。

 サブウエポンを当てるのに邪魔な障害物もたくさんある。

 特に厄介なのは蜘蛛の巣のようなもの。

 移動の邪魔にはならないのだが、ネットはサブウエポンをからめ取ってしまう。

 まずは鞭でネットを薙ぎ払うしかない。


「げ、上から来た!?」


 とうとう横からではなく上下から襲い掛かってきた。

 縦方向なので視界の外からサブウエポンを投げ、横スクロールして当てるという戦法がどんどん使いづらくなっていく。

 おまけにヴァンパイアは成長する。

「うああ!? なんだこいつ、めちゃくちゃ強いぞ!」

「第4形態ね」

「第4!? じゃあ今まで戦ってたのは……」

「第1形態よ。プレイヤーが好きなルートを選べるから、いきなり第4形態とかが出てくるわけ」

「……ルート選択をミスったか」


「貧弱な装備で強い敵と戦うのがメトロイドヴァニアの醍醐味よ!」


「無茶言うな!」

 現段階では歯が立たない。

 やむなくルートを変えると第2形態が出てきた。

 これでもかなり強い。


 攻略法があるとすれば、パワーアップアイテムでHPとサブウエポンの最大値を上げて、大ダメージ覚悟でサブウエポンを連射しまくること。


 HPとサブウエポンを惜しんで負けるぐらいなら、回復ポイントへ戻る手間を取る。

 しかし第4形態ヴァンパイアにもなるとそれでも負けた。

「第4形態はスピンアタック必須ね」

「スピンアタック?」

「斜め上にジャンプすると、膝を抱えながらくるくる回転ジャンプできるようになるパワーアップアイテム。スピンアタックには攻撃判定がある上に、スピンアタック中は無敵なのよ。ヴァンパイアにはスピンアタック効かないけど、攻撃を無効化することはできるからそれで戦うの」

「そういうアイテムは序盤に取りたかったな」

「後半じゃないと取れないのよ」

 スピンアタックを入手し、第4形態に挑む。

 ところが、


くるくる


 スピンアタックで攻撃を無効化するものの、すとんとすぐに着地してしまい、そこを狙われる。

「……連続攻撃されるとどうしようもないんだが」

「スピンジャンプで落下中にジャンプボタンを押すと2段ジャンプできるから、それでこらえるのよ」

「空中でジャンプできるのか。でもタイミング的に2段ジャンプしても攻撃されるだろ」


「2段ジャンプはスピンアタックの落下中なら何度でもできるのよ。だから隙が見つかるまでひたすら2段ジャンプ!」


「……我慢比べかよ」

 スピンアタックでひたすら第4形態ヴァンパイアの攻撃を無効化し続け、隙を見つけてはサブウエポン連射。

 少しでもタイミングを誤ると大ダメージを食らう。

 壁際に追い詰められたら最悪だ。

 なすすべもなく連続攻撃をくらってしまう。

 完全無敵技を持っているにもかかわらず、1匹倒すたびに瀕死状態になり、回復アイテムを取りに戻らなければならない。

 第4形態の数はそれほど多くないのが救いか。

 しかし本番はここからだ。

 ラスボスのクイーン・ヴァンパイアがひかえている。

「ラストバトルの前に一息吐くか」


「じゃあピーナッツとフレッシュトマトジュース!」


「……どういう組み合わせだ」

「回復アイテムよ。トマトジュースは血の代わりね。フレッシュトマトジュースは主人公の好物なの。ピーナッツは回復アイテムの中でも食べ方が変わってて……」

 回復アイテムとして使うと主人公が上にピーナッツを投げた。

「こうやって落下地点に素早く移動して、ピーナッツが主人公の頭に落ちる瞬間に↑を押さないといけないわけ」

「投げ食いか」

 『トラえもん』ののぴ太が得意なやつだ。

 ある意味ピーナッツの正しい食べ方ともいえる。

「それ!」


ぽーん


 ゲームのようにピーナッツを上へ放り投げた。

 そして落下地点に移動して大口を広げ、


「痛た!?」


 額にピーナッツが直撃する。

 期待を裏切らないやつだ。

「もう1回!」

「ピーナッツを粗末にするな」

「床に新聞敷けばいいんでしょ」

 嘘ニュースでおなじみのエキサイト新聞を床に敷き、ぽんぽんピーナッツを投げまくる。

 結果はいうまでもない。

「うう……」

「普通に食え」

「はーい」

 ここまで投げ食いが下手なのも珍しい。

 むしろピンポイントでヘディングできるのは才能ではなかろうか。


「ちゅーちゅー」


 ピーナッツをつまみつつ、トマトジュースをストローで吸う。

 ちなみにトマトジュースの容器は輸血用パックだ。

 ファンタジックな世界に(そしてうちの店に)なぜ輸血用パックがあるのだろう。

 医療技術だけ極端に発達しているのだろうか。

 あるいはただのお約束か。

 たぶん後者だろう。


「クイーンも口の中にサブウエポン投げ込めば動きが止まるな」


 第4形態と同じくひたすらスピンアタック。

 隙を見つけて攻撃。

 だが口の中にサブウエポンをぶち込むのはなかなか難しい。

 何度か失敗している内に、クイーンの行動パターンが把握できた。

 驚くほどワンパターンである。

 火を吐く→首を伸ばして攻撃→口を開いて噛みつき。

 この繰り返しだ。

 口を開かないこともあるものの、基本的に2度目の首伸ばし攻撃で噛みついてくる。

 なのでそれまではひたすらスピンアタック。

 相手が口を開いたらサブウエポン。


ダダダッ


 動きが止まったところをサブウエポン連射。

 ありったけのサブウエポンをぶち込んでいく。

 しかしなかなか倒れない。

 第4形態も10発程度では倒せなかったが、クイーンは50発ぶちこんでもまだ動く。


 ならば60発ぶち込もう。


 ……70発ならどうだ?


 …………まさか80発もぶち込むことになろうとは。


 ………………さすがに90発ならいけるだろう。


 100発だ!


「ま、まだ倒せないのか!?」

「あと50発」

「はあ!?」

「弾数的にギリギリかも。ミスしたら終わりよ」

「タフすぎだろ!」


「だって正規の倒し方じゃないし」


「……ちょっと待て」

「なに?」

「正規の倒し方ってなんだ」

「口にサブウエポン投げ込んで硬直してる時、ネズミになってクイーンの口に飛び込むの。そうするとクイーンが飲み込んでくれるから、腹の中まで移動して爆弾。それを何回か繰り返せば簡単に勝てるわよ」

「そんなのわかるか!」

「ノーヒントだし、ヴァンパイアはサブウエポンでしか倒せないっていう先入観があるから、ほとんどのプレイヤーはサブウエポンで倒したらしいわね。でもこっちの方が面白いでしょ? ボタン連打してサブウエポンぶちこむの気持ちいいし」

「そんな快感はいらん!」

 今の俺のプレイでも弾が足りるかどうか微妙なことを考えると、全弾費やしても倒せなかったゲーマーもいたことだろう。

 絶望どころの騒ぎではない。

 ここまできたら確実に倒そう。

 素直にクイーンの動きを止め、腹の中に入って爆弾を起動。


 ……しようとして失敗した。


GAME OVER


「あー、急にパターンから外れて行動しようとするから」

「誰のせいだ!」

 120発の積み重ねが水の泡だ。

「くそ、それなら最初から爆殺してやる!」

 3分後。


どかーん


「……」

 腹の中に爆弾を仕込んでクイーンを爆殺する。


 所要爆弾わずか4個。


 ……今までの俺の苦労はいったい。


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