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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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戦車ゲームセット【鉄板ナポリタンとトマトジュース】

参考ゲーム

アサルト


「ぱんつぁー・ふぉー!」


 思いっきり日本的な発音で、レトロな戦車ゲーム『ヨルト』をスタート。

「……う、プレイしにくい」

 左右のキャタピラを操作するタイプらしい。

 ゲーセンの筐体では二本の専用スティックで操作する方式だったらしいが、家庭用移植版ではパッド式のコントローラーだ。



L       R


  ↑   C

 ← → D A

  ↓   B



 十字キーで左のキャタピラ、ABCDのボタンで右のキャタピラを動かす。

 ↑+Cボタンで前進、↓+Bボタンで後退。

 ↑だけだと左のキャタピラしか動かないので右に曲がりながら前に進む。

 Cは左曲がりだ。

 操作性にクセがあるため、慣れていないと満足に移動することすらできず、


ドカーン


「ああー!?」

 簡単にやられてしまう。

「なんで正面にしか撃てないのよ!」

「ボタンが足りないからだろ」

 ショットはLかRボタン。

 このゲームの戦車は主砲が固定されており、正面にしか攻撃できない。

 一直線に敵が並んでいるのならともかく、横に並んでいるとこちらが撃つ前に撃たれてしまう。


「『超信地旋回』できないのか?」


「ちょーしんち?」

「左右のキャタピラを逆に回すんだよ。そうすればその場で戦車の向きを変えられる」

「キャタピラを逆……。つまり↑+Bか↓+Cね。あ、回った!」

 超信地旋回を使いこなせるようになれば、向きを変えながら素早く敵を撃つことができる。

 ↑やCだけで左右に曲がるのもクセがあるので、慣れない内は超信地旋回で向きを変えてから前進した方がいいのかもしれない。


ドカーン


「ぐぬぬ!」

「横に避けられないのもきついな」

 超信地旋回を覚えてある程度は自由に動けるようになってきたものの、問題は戦車が真横へ動けないことだ。

 真正面から攻撃されたら後退しても意味がない。

 超信地旋回でいちいち向きを変えていては間に合わない。

 ↑やCで左右に曲がることができるものの、『曲がりながら前進』するため避けるのは難しい。

 ショットで敵の攻撃を撃ち落すのも限界がある。

「このシステムだとクリアするのは難しいな。なんか特殊な操作があるんじゃないか?」

 説明書をパラパラとめくってみる。

 やはり特殊なアクションがあった。


「←+Dもしくは→+Aで横にローリングできるらしいぞ」


「ローリング?」

 ←+Dを入力すると、戦車が横にごろっと一回転した。

 現実では到底ありえないめちゃくちゃな動きだ。

「メテオフォックスの戦車ステージと同じアクションね。やっぱり戦車だと横に動けないからこうなっちゃうんだ」

 キャタピラを操作するというリアル思考なゲームには不釣り合いなアクションではあるものの、これがあるのとないのとでは難易度が違う。

 戦車で真横に動くアクションというのは他に思い浮かばないので、クリエーターとしても苦肉の策なのだろう。

「ローリングも微妙に使いにくいわね」

 一回転は意外にアクションが大きい。

 必ず横へ2マス動く。


      ■

      □

■□■ → ■ → ■□■


■キャタピラ


この戦車の胴体はキャタピラとほとんど同じ大きさなので、亀のように裏返しになってもキャタピラで走れる

表と裏の違いも色だけだけであり、戦闘能力に変化はない


 敵が四方から何発も撃ってきた場合、ローリングですべて避わすのは至難の業だ。

 2マスも動かれると他の弾に当たってしまう。

「あ、ローリングの最中にもローリングできるのね」

 ローリングしている最中に逆方向へ入力すると、元に戻れるようだ。


      ■

    → □

■□■ ← ■


半ローリングで戦車の位置を1マスだけずらし、逆方向へ入力して元の位置に戻る


 これなら1マス単位で戦車をコントロールでき、敵の弾幕もかいくぐれる。


ドカーン


「……動きが独特すぎでしょ」

 それでもシューティングゲームとしては自機の自由度が低く、またアーケード版の専用スティックより反応が悪いため、慣れないプレイヤーは被弾してしまうようだが。

「あとはグレネードだな。←+Aボタンを押しながらショットするとグレネードで攻撃できるらしい」

「早く言いなさいよ」

「……なら自分で説明書読め」

「やだ」

「なんでだ」

「だって説明書読むとなんか負けた気がするんだもん」

「お前はなにと戦ってるんだ」

 いろんなゲームを極めているだけに、ライトユーザーのように説明書を読んで1から学ぶのは屈辱らしい。

 これだからゲーマーは困る。

 ちなみにグレネードは放物線を描くので障害物を越えて敵を攻撃でき、しかも破壊力が高い上に広範囲を攻撃できる。

 ただ隙が多いので敵に囲まれている時は使いにくい。


「……なんか気持ち悪くなってきたな」


「たしかにずっとプレイするのは厳しいかも」

 このゲームでは常に戦車が上を向いている。

 つまり戦車の向きを変えると、戦車ではなく画面の向きが変わるのだ。

 ぐるぐる画面が回るため酔いやすい。

「当時の基盤でこんなに画面を回転させたり、拡大縮小ができるのは珍しかったみたいね」

「技術力のアピールなのか」

「そういうこと」

 ジャンプ台を使って戦車が空高く飛び上がる。

 こうすると遠くにいる敵へグレネードを落とすことができた。

 ジャンプによって広いマップを上から見渡せるのも、マップを縮小しているからこそだろう。

 今でこそ当たり前だが、当時はマシンの性能が低かったので『○○機能搭載』という必ずしもゲームの面白さに直結しない要素が売りになっていた。

 マシンスペックが行き着くところまで来ている現在、当時の子供たちと同じ感動を味わうのは難しい。

 カルチャーギャップを楽しむのがせいぜいだ。

「やっぱりプレイせずにずっと見てると酔うな。なんか作るか。なにがいい?」


「鉄板ナポリタン!」


「またマニアックなものを」

「イタリア軍って砂漠でもパスタ茹でてたんでしょ。それで水がなくなって降伏したとか」

「それは有名なジョークだ」

 鉄板ナポリタンはイタリアにもナポリにもゆかりがない名古屋飯。

 玉ねぎとピーマンとウィンナーを炒め、塩コショウとおろしたコンソメ、トマトピューレとケチャップで味付け。

 それから茹でた麺を炒めてナポリタンにする。

 最後にスクランブルエッグをのせれば完成だ。

 ハードチーズや唐辛子はお好みで。

 玉子は店によって目玉焼きだったり、あるいはナポリタンの下に玉子を敷くこともある。

「んー、パリパリ」

 鉄板の名前の通り鉄板皿で出す料理なので、何を下にするかで微妙に味が変わる。

 うちでは麺が下だ。

 飲み物はトマトジュース。

 普通のナポリタンを作る時はこれを隠し味にすることも多い。

 トマトケチャップにトマトジュース。

 同じ味でありながら、風味の違うものを重ねるのがまたうまい。


「ゲーム画面が小さいのも気になるわね」


 片手ではプレイできないので小休止しながら、モニターを眺める。

 どうやらこのゲーム、アーケード版ではモニターを縦にしてプレイしていたらしい。

 それを横長のテレビで表示しているため、かなりゲーム画面が小さくなってしまっている。

 しかも両サイドは真っ暗だ。


■■□□□■■

■■□□□■■

■■□□□■■

■■□□□■■

■■□□□■■


「アーケードモードにしよっと」

 設定を切り替えると、これまで縦に表示されていたのが横になった。

 これで全画面表示になったものの、


「ああ!? 戦車が横向きに!?」


「まあ、そうなるだろうな」

 このゲームでは常に戦車が上を向いている。

 ゲーム画面を横にすれば、当然戦車も横を向く。

 プレイヤーは縦なのに戦車は横。

 これまでとはプレイ感覚が違い、なおさら酔いやすくなった気がする。


「テレビ縦にしていい?」


「いいわけあるか!」

「ケチ」

 うちのテレビは薄型ではない。

 無理やり縦にすれば絶対痛む。

「じゃあこうする」


 寝転がって俺の膝に頭を乗せた。


 ゲーム画面を元に戻すという選択肢はないらしい。

 しかし勘を取り戻すことには成功したようで、動きはよくなった。

 それでも難易度は高い。

 ただでさえ操作が難しく、画面外からでも敵は容赦なく弾を撃ち、一発食らえば即死。

 時間制限も厳しい。

 というか明らかに時間が足りない。

 長いステージになると、途中で時間切れになって一機失う。

 理不尽だ。


ぶー ぶー


「矢印うるさい」

 強制スクロールではなく自分で進路を決めるため、ボスのいるルートから逸れると警告音とともにボスルートへの矢印が表示される。

 敵を放置して進むと背中から撃たれるので、進む前に敵を倒しに行くと警告音が鳴る。

 これがうっとうしい。


 警告音と時間にさえ追われなければ、ラスボスもゲーマーの敵ではなかった。


 あっさりラスボスを撃破してクリアする。

「わ、まっくら」

「ゲームしすぎたな」

 気づけば日が暮れていた。

「じゃあ帰るか」

「うん」

 遅くなったので送っていくことにする。

「あれ食べたい」

「……鉄板ナポリタンがっつり食っただろうが」

「たーべーたーい」

「うるさい、さっさと帰るぞ」

「ぶーぶー」

「黙れ矢印」


 正しい道を進んでいるのに警告音を鳴らされるのは心外だ。


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