表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/382

ドットイートセット【ピザとイタリアンコーヒー】

参考ゲーム

パックマン

「コーヒーブレイクセット作らない?」


「は?」

 コーヒーブレイクはコーヒー休み。

 仕事の合間にコーヒーを飲んで小休憩することであり、決まった時間帯はない。

「セットってどんなんだ?」

「モーニングセットみたいな感じ」

「……コーヒー1杯の値段で軽食をサービスするのはきついから、うちではモーニングやってないんだぞ。コーヒーブレイクにしても何も変わらんだろ」

「軽食じゃなければいいんでしょ。たとえばこれとか」

「にゃー!?」

 テーブル型筐体のモニターで寝ていた三毛猫のちはやを抱き上げてイスに降ろし、


チャリン


 50円を投入する。

「つまりコーヒー1杯でゲームが1回無料になるってことか?」

「そういうこと」

「まあ、50円のレトロゲームなら許容範囲だな」

 無料はあくまで最初の1回だけ。

 そして1回プレイさせてしまえばこちらのものだ。

 適度に難易度の高いものがいい。


 小銭の余っているサラリーマンなら、コーヒー1杯分の金ぐらいすぐに吐き出してくれるだろう。


「じゃあコーヒーとピザね」

「……ピザはセットに含まれてないぞ」

「わかってるわよ」

 ピザ生地に好きな具を載せていく。


「ゴルゴン・ゾーラ♪ ゴルゴン・ゾーラ♪」


 ゾラゾラゾラゾラと妙な歌を歌いながら、ゴルゴンゾーラとモッツァレラチーズを載せていく。

 これをオーブンにぶち込んで焼き上げる。

 個人的にピザにはコーラなのだが、コーヒーブレイクなのでコーヒーがいいだろう。

「やっぱりコーヒーはイタリアンね!」

 イタリアは南部に行くほど量が減って味が濃くなる。

 その最たるものがナポリのコーヒーだろう。


 カップにコールタールのような真っ黒でドロドロの液体を、ドッピオ(二杯分の量、いわゆるダブル)で注ぐ。


 そしてコーヒーと同じ量の砂糖をぶちこんだ。 

「『アイアンボールラン』でシーザーが淹れてたコーヒーだな」

「正解!」

 さっきのチーズの歌も漫画内でシーザーが歌っていたものだ。

 ファンなら食べたくなるのもわかる。

 濃いチーズのピザならコーヒーも濃いほうがいい。

 ただ一つだけ問題がある。

「あ、砂糖が残ってる」

「あんだけ入れれば溶けないのも当然だ」


 カップの底にコーヒー色に染まった砂糖が残留していた。


「だがこれがいい」

「え、食べるの?」

「コーヒーが染み込んでるからな。これをつまむためにエスプレッソを飲むぐらいだ」

「へー」

 行儀が悪いように見えるかもしれないが、本場の人間すなわち『ナポリタン』もこうするので遠慮する必要はない。

 この頭が悪くなりそうなぐらいの砂糖の甘さが最高なのだ。


「……というかお前、また筐体の基板入れ替えたな。今度は何のゲームだ?」


「『パクパクマン』よ。敵とぶつからないように移動して、画面上にあるアイテムを全部取ればクリアになるゲームなの。いわゆる『ドットイートゲーム』ね」


「この大きいアイテムはなんだ?」

「それは『パワーエサ』。これを食べたらパワーアップして、敵を撃退することができるのよ。あくまで撃退するだけで倒せはしないんだけど、ハイスコアを狙うなら敵を撃退しないといけないわけ」

「ふうん」

 基本的にパクパクマンより敵の方が速い。

 ドットを食べている時はさらに足が遅くなる。

 ただ敵よりも小回りが利く(角を曲がるのは速い)ので、逃げる時はドットのない道を曲がりながら進むといいようだ。

 ドットを食べ続けているとフルーツの形をしたドットが現れ、これを取れば高得点が獲得できる(ただしフルーツは一定時間経つと消える)。


「ちなみにパクパクマンの姿はピザがモデルになってるのよ」


「ピザ?」

「丸いピザを1切れ食べたらこんな形になるでしょ」

 たしかにピザを1切れ食べたら、丸い生物が口を開けているように見えなくもない。

「だからピザ注文したのか。するとコーヒーもなんか関係あるのか?」

「このゲームにもコーヒーブレイクがあるのよ。何ステージかに1回、プレイヤーが休めるようにパクパクマンのアニメーションが挟まるの。こんな風にね」

 2面をクリアすると、パクパクマンが敵に追いかけられていた。

 2匹が画面端に消えてから数秒すると、パワーエサを食べて巨大化したパクパクマンが現れ逆に敵を追いかける。

 アニメでよくある演出だ。

 BGMもコミカルでなかなか面白い。

 その後も順調に瑞穂がステージをクリアしていく。

「……ん?」

 なにかがおかしい。

 前にも見た光景だ。

「さっきの面と同じパターンになってないか、これ?」


「このゲームの敵はパターン通りに動くのよ。ステージによって違いはあるけど、同じ構成のステージなら同じ行動をすれば敵も完全に同じパターンで動くの」


 敵は4種類。

 色によって行動パターンが違う。

 こちらを執拗に追いかけてくる赤、先回りして待ち伏せを仕掛けてくる白、赤と白を合わせた感じの青、一見パターンがなさそうな黄色。

 それぞれのモンスターには縄張りがあるらしく、そこを中心に行動する。

 行動パターンは縄張りにパクパクマンがいる場合、いない場合、パワーエサを食べた場合の3パターンだろうか?

 ステージが進んでも迷路の構成とスピードが変化するだけで、敵の数が増えることもなく、行動パターンは変わらない。

 ステージが進めばパワーエサを食べても敵を撃退できなくなるようだが、これもパターン化されている。


「パターン入った」


 ……だからといってここまで完璧にパターン通りに行動できるものではない。

 これは相当やりこんでいる。

「あ、ミスった。……さすがにパーフェクトゲームは無理ね」

「完全試合ってなんだ?」

「ノーミスで256面まで行くこと。そうするとメモリ不足になってゲームが強制的に終わっちゃうの。理論上の最高スコアは333万3360点ね」

「ちなみに最高スコアに到達するまでどのぐらいかかるんだ」


「4時間」


 ……コーヒーブレイクセットは考え直した方がいいのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ