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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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夢の国セット【アイスクリームとゴマ豆乳】

参考ゲーム

キングダムハーツ バースバイスリープ リ・コーデット


「ん?」

 仕込みをしていると、妙に聞き覚えのある音楽が聞こえてきた。

 音の出所は瑞穂のプレイしている携帯ゲーム。

 『キングオブハート』という、ネズミーとコラボしているゲームらしい。

「ジャズだな」

「え、これジャズなの?」


「正確にいうならジャズの原型になった音楽だな。いわゆる『ラグタイム』だ。特徴的なのはドラムスだな。3人でドラムを叩いてる」


「どういうこと?」

「ドラムスはバスドラム、スネアドラム、ハイハットシンバルを中心に、トップシンバルやタムタムを一人で演奏するからドラムの複数形でドラムスなわけだが……。この時代はまだドラムが統一されてなくて、ドラム担当が何人もいたんだよ」

「わざわざドラムを種類別に分けて収録してるんだ」

 ちなみにドラムスだとスネアは手で、バスドラとハイハットは足のペダルで演奏する。

 トップシンバルやタムタムまで使わないといけないので、ドラムスはかなり忙しい。


「それとアドリブだな。現代のジャズではまず全員でテーマを演奏して、順番にアドリブソロをやり、またテーマを演奏して終わる。アドリブはコード進行さえ守っていればどういう風に演奏してもいい。でもラグタイムはもっとシンプルだ。テーマを演奏して、そのテーマをいじったアドリブをする」


「テーマをいじってるだけだから、あんまり即興演奏って感じがしないわね」

「これはこれで味があっていいけどな」

 話を進めると曲が変わった。

「これは『ニューオーリンズジャズ』だな。まあ、ラグタイムもニューオーリンズジャズってひとくくりにされる場合が多いんだが……」

 ちなみにこの頃のジャズは黒人音楽なので、白人が演奏すると『ディキシーランドジャズ』と呼ばれる。

 ややこしい。

「やっぱり今とは楽器の編成が違うわね。何が違うのかわかんないけど」

「トランペットの代わりにコルネットで、ベースはチューバだ」

「これチューバなんだ」

 あとはクラリネット、トロンボーン、バンジョー。

 南北戦争に敗れて仕事がなくなった南軍の軍楽隊が使ってた楽器ばかりだ。


「ニューオーリンズジャズもアドリブが特徴的だな。ソロじゃなくて数人同時にアドリブしてるだろ」


「あ、ほんとだ!」

 アドリブソロに慣れている耳からすると、オーソドックスなジャズスタイルでの一斉アドリブは新鮮でいい。

 フリージャズでたまに聞くことはあるものの、フリージャズは何でもありの無法地帯。

 ラグタイムやニューオーリンズジャズとは毛色が違う。


「ネズミーランドにはどのエリアにもジャズバンドがいる。ジャズを知りたいならマイク・デイヴィスを聞きながらネズミーに行くのが一番だ」


「へー」

 マイク・デイヴィスはジャズ界の神のような存在だ。

 クールジャズ、ハードバップ、モードジャズ、そしてエレクトリックジャズ。

 一切活動をしていなかった空白の5年間を除き、ジャズの歴史的転換点には必ずこの男がいる。

 ネズミーの曲はジャズのスタンダードになっているものも多く、マイクもネズミーの曲を演奏しているので、ジャズの入門には最適だ。

「これ面白いのか?」

「やってみる?」

「ああ」

 携帯機を受け取ってプレイしてみる。

 このゲームでは使いたいスキルや魔法をセットし、十字キーで使いたい技をセレクトして△ボタンを押せば技が発動するシステムだ。



→フレイム

 アイス

 ヒール

 トルネード

 ポイズン

 etc


十字キーの上下でカーソルを動かして技を選ぶ

技の順番はプレイヤーが自由に決められる



「げ!? ここでヒール!?」

「何も考えずにボタン連打してるからよ」

 技の順番を適当にセットしてボタンを連打すると、HPが減っていないのに回復魔法を使ったりすることになる。

 技はゲージを溜めないと使えないものの、逆にいえばゲージさえ溜めれば何度でも使えるということ。

 ゲージは時間経過で溜まる。

 強力な技ほどゲージの溜まるスピードは遅くなるのだが、技ゲージの他にスタイルゲージというものがあり、敵に攻撃を当てるとゲージが溜まっていく。

 スタイルゲージを溜めると、使った技に応じてスタイルが発動する。


あおっていくスタイルね」


「炎上商法みたいにいうな」

 火の技をたくさん使っていれば火のスタイルが、水なら水のスタイルになり、威力や攻撃範囲が上がる。

 複数の属性の技を使った場合、どのスタイルになるのかわかりづらいのが玉に瑕。

 属性を1つに統一して、特定のスタイルが発動しやすいようにセットしていれば、△ボタンを連打しているだけで技が繋がり、スタイルも発動する。

 スタイル発動後もスタイルゲージを溜めると、さらに強力な必殺技を使えるようになる。

 ただゲージが溜まった状態でボタンを押すと、自動的に必殺技が発動してゲージが0になり、スタイルが解除されてしまう。

「ゲージを減らして物理で殴るか」

 スタイルを発動させると攻撃力が上がるので、一定時間回避に専念してわざとゲージを減らし(相手に攻撃を当てないとゲージは減る)、スタイルを維持して殴り続ける方が必殺技より強力なようだ。

「おなか空いたからアイス食べていい?」

「好きにしろ」


「やった! えーと、豆乳にゴマ。あ、メロンとオレンジとピーチもいいわね。キャラメルとナッツも美味しそう。コーヒーと大粒アーモンドとチョコとカステラっていう選択肢も……」


「……なんだ、その変な組み合わせは?」

「このゲームに出てくるのよ、ネズミーオンアイス。食べたアイスの種類によって、色んな属性のスタイルゲージが溜まるの」

 たしかにアイスショップで様々なアイスクリームが売られていた。

「思ってたより種類が多いな。ネズミーランドで売ってるやつか?」

「売ってたらもっと話題になってるわよ。このシステムのためだけにアイスを食べ歩いたんだって」

 スタッフは完全にこだわるところを間違っている。

 とりあえずキャラメルやナッツ、フルーツなどを用意し、適当にアイスへのせて食べる。

 豆乳アイスはないので飲み物はゴマ豆乳とコーヒーにした。

 スタッフが食べ歩いたというだけあって中々イケる。

 うちのメニューに加えてもいいかもしれない。


『このお城では反時計回りに動くのじゃ。でなければシンデレラにかけた魔法が解けてしまうぞい』


 ゲームを進めるとシンデレラ城に到着した。

 どうやらシンデレラは王子と結婚したものの、王国で革命が起こり王子は行方不明になってしまったらしい。

 王家も滅ぼされてしまい、シンデレラはショックで革命が起きてからの記憶を失ってしまったという。

 病気で床に伏せるようになったシンデレラに真実を告げるとショック死してしまうかもしれないので、魔法使いが魔法で夢を見せているそうだ。

 だが魔法は12時が来ると解けてしまう。

 そこで反時計回りに周ることで時間を戻し、12時が来ないようにしているとのこと。

 なぜ反時計回りに周れば時間が戻るのかよくわからないものの、アメコミのスーパーウーマンも地球を逆回転させて時間を戻していたので、欧米ではポピュラーな考え方なのだろう。

「これもネズミーランドを意識した構成になってるな」

「そうなの?」


「ああ。ネズミーランドの各エリアは時計回りに時代順に並んでてな。入口からシンデレラ城を中心に時計回りで歩けばジャズの歴史がわかる」


「へー」

 世界観としては明治維新も参考にされているようだ。

 この世界の騎士の象徴は長髪らしく、革命が起きて没落した騎士たちは侍のように断髪・廃剣していた。

 だが記憶を失ったシンデレラを保護した騎士たちは、王国が滅んだことを気づかれないため、再び髪を伸ばし剣を取ったという。

 騎士たちは革命政府からシンデレラを守っている内に、革命政府が『荒野の獅子』という魔物に操られていることに気付く。

 モデルはナポレオン(レオン=ライオン)だろう。


『がおがお!』


 荒野の獅子が戦力を結集し、夢の国へ総攻撃を仕掛けてきた。

 騎士たちはライオンに次々とやられて敗色濃厚。

 すると病に伏せていたはずのシンデレラが起き上がって城を時計回りに周り始めた。

 どうやらシンデレラはとっくに記憶が戻っていたらしい。

 国も王子も記憶も失ったシンデレラは、騎士たちの嘘によって生きる希望を与えられた。

 だから今度は自分が彼らに希望を与えようと、記憶を失った振りを続けていたのである。

 騎士たちが髪を伸ばし、剣を取ったのはシンデレラの心身をおもんぱかってのことだが、同時にそれは自分たちのためでもあった。

 革命によって貴族階級が滅んでしまった今、彼らが騎士でいることができるのは記憶を失ったシンデレラのそばだけ。


 結果、騎士としての名誉や誇りを捨てられない者たちが続々と集まり、隠れ家にすぎなかった廃城が夢の国にまで発展したのである。


 これ以上、荒野の獅子と戦うと全滅しかねないと悟ったシンデレラはガラスの靴を脱ぎ、時計の針を進めて魔法を解き、騎士たちに逃げるよう命じた。

 しかし騎士たちはその命令を拒否して髪を切り、騎士ではなく一人の人間としてシンデレラを守ると誓う。

 その騎士たちの中には行方不明だったはずの王子もいた。

 シンデレラを信じて見守っていたらしい。

 シンデレラは王子や主人公とともに荒野の獅子へ立ち向かう。


『ファイアボール!』


 だがこちらにはアイスがある。

 素早くアイスを食ってスタイルを発動させて必殺技で殴り、またアイスを食べてスタイルを発動させ(ついでにリアルでも同じアイスを食べて)エンドレスで荒野の獅子を殴り続ける。

 アイスでフレイムスタイルになるのもシュールだ。

「ちなみにこのアイス、当たり付きだから」

「は?」


『クラッシュアイス!』


「アイスを食べると一定確率でアイス限定のスタイルが発動するの」

 ……スタッフのアイスにかける情熱はなんなのか。

 とにかくアイスを食べまくってスタイルを発動させまくり、

『が、がお……』

 無事に荒野の獅子を撃退。

 勝利したシンデレラと王子は廃城を『夢の国』と名付けて建国を宣言する。

 めでたしめでたし。

 かと思いきや、


キーン


「う、頭が……!」

「いっぱい食べすぎるから」


 見事にアイスが当たって頭痛クラッシュアイスが発動した。


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