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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ハンティングアクションセット【エッグタルトとハマナス茶】

参考ゲーム

ゴッドイーター



「クリハン以外のハンティングアクションはないのか?」


「比較的成功したのは『ゴッデスイーター』ぐらいじゃない?」


 地球外生命体『天神アマガミ』によって文明が半壊した近未来SFの狩りゲーだ。

 武器は剣と銃の2種類。

 Rボタンを押すことで剣は銃に、銃は剣形態に変化する。

 剣ならショートソード、ロングソード、バスタードソード、銃ならアサルトやスナイパーなどの種類があり、手数・破壊力・間合いのどれを重視するかで使い分けるようだ。

 武器にはアマガミの細胞が組み込まれており、銃を撃つにはAPアマガミポイントがいる。

 アマガミポイントは剣で敵を攻撃すると回復。


 アマガミは主にメスが狩りをするので、アマガミを食って回復する主人公たちは『女神を食らう者』=ゴッデスイーターと呼ばれるらしい。


 APを回復させながら戦う、つまり撃って斬るのが基本だ。

 狩りゲーにしては珍しくジャンプもできる。

 銃と組み合わせればどんな部位も攻撃できるだろう。

 固有グラフィックとCVのあるキャラクターとも共闘できる。


『回復弾です』


 回復能力のある弾丸でプレイヤーを回復してくれる。

 これが想像していたよりも有能だ。

 かなり体力が減らないと回復してくれないものの、驚くべきはそのタイミング。


『ぬわー!?』


『回復弾です』


 プレイヤーの体力が0になった瞬間にピンポイントで撃ち込んでくる。

 体力が0になると両膝を突いて、バッタリと前に倒れるのだが、倒れる寸前に回復弾を食らえば戦闘不能にならないらしい。

 戦闘不能判定が下されるまでのほんの一瞬、人間にはとても無理なタイミングで回復弾が飛んでくる。

 これがありがたい。

 仮に戦闘不能になったとしても、一定時間以内なら復活(戦闘不能の仲間に触れると自分の体力の半分を分け与えて復活させることができる)してもらえるので、ミッション失敗になることは少ない。

「初級者にやさしいな」

「それはどうかしら」

「なに?」


「ハンターたちにトラウマを植え付けた伝説のミッションがそろそろ来るわよ」


「……どれだよ、そのやばいミッションは」

「秘密」

「くそ」

 とりあえずストーリーを進めるために適当なミッションを選ぶ。

 大型のアマガミ『翡翠ひすい』を数匹討伐するというミッションだが、こいつはそれほど強くなかったので大丈夫だろう。

 ミッションを始めると、すぐ近くに2匹の翡翠がいた。

 2匹ならたぶん勝てる。

 初期配置だと仲間3人の内2人と離ればなれになっているので、まずは2人と合流しに行く。


『おおおおん!』


 仲間の2人は初期配置にいたのとは別の2匹と戦っていた。

 全部で4匹らしい。

 まずは1匹に集中攻撃して倒そう。

 そう思っていると、


『おおおおん!』


「げ!?」

 初期配置にいた2匹が合流してきた。

 1匹なら大したことはなくても4匹だ。

 前後左右から攻撃されたら避わしようがない。

 1匹に集中攻撃しようにも、グラフィックはどの個体も同じなので途中でどれがどれなのかわからなくなる。

 このゲームには回復アイテムもあるし、敵を攻撃すればAPを回復できるのでいくらでも回復弾を撃てるものの、とても回復が間に合わない。


「ふふふ、これが伝説のトラウマミッション『ピルグリム・ファーザー』よ!」


「……どうやってクリアするんだ、こんなミッション」

「まず仲間と合流しないこと。合流しちゃうと4匹そろっちゃうから。仲間が他の2匹と戦ってる内に、翡翠の弱点の属性武器で1匹に集中攻撃。1秒でも速く頭数を減らすことね。1匹倒せば難易度もぐっと下がるし。それと一定のダメージを与えるとクリーチャーは体力を回復させるためにエサ場へ逃げるでしょ。その動きは絶対に阻止すること。長距離を移動されると合流される可能性が上がっちゃうから」

「なるほど」

 装備を整えて再戦。

 1匹に集中攻撃するものの、倒す前に合流されてしまった。

 一時撤退し、敵を分断して各個撃破しようとする。

 だがタチの悪いことにこのゲーム、クリハンと違ってフィールドに境目がない。

 クリハンなら別のエリアへ移動するとフィールドが切り替わるので、クリーチャーから逃げて体勢を立て直したり、敵を分割して各個撃破できるのだが、このゲームではそれが難しいのだ。



□□□□□■■■■■

 □□□  ■■■

 □A□  ■B■

 □□□  ■■■


AからBへ移動するとゲーム画面に表示されているフィールドがAからBに切り替わる

ゲーム画面上にはBのフィールド(■の部分)しか表示されていないので、Aにいるクリーチャーはエリア移動という特殊なアクションをしない限りBに現れることはない

なのでプレイヤーはエリア移動をすることで簡単にクリーチャーから逃げ、体勢を立て直すことができる

ゴッデスイーターはすべてのエリアが1つのフィールドとして繋がっているため、AからBに移動しても敵は普通に追いかけてくる



 しかも運よく分断に成功したとしても、


『おおおおん!』


「なんでだ!?」

 翡翠はすぐに仲間と合流した。

「ふふふ、翡翠は耳がいいから誰がどこにいるのかわかるのよ。だから分断してもすぐに合流しちゃうの」

「マジかよ!」

 あきらめて4匹と同時に戦うしかない。

 覚悟を決めた。

 しかし、


『ミッション失敗』


 ……あえなくゴッデスイーターはゴッデスイーター・イーターズに捕食された。

「近接だけだときついな。でも遠距離武器苦手なんだよな」


「『バレットエディット』すれば」


「なんだそれ」

「プレイヤーが自由に弾丸を作れるの」

「そんなシステムあったのか」

 とりあえずバレットエディットとやらを試してみる。

 一口に弾とはいっても、銃から発射できるものならなんでもバレットとして扱われていた。

 レーザーも普通に撃てる。

 弾を右に曲げたり、左に曲げたり、プレイヤーの周りを回転させたり、敵に張り付けたり色々できた。

 同時に複数の弾丸を発射することもできるが、弾道が交差すると対消滅してしまう。

 角度を細かく調整しないといけない。

 弾を撃つタイミングも細かく設定できる。


 たとえば1の弾丸と同時に撃つ、1の0.2秒後に撃つ、0.5秒後に撃つ、1が障害物にぶつかった時に撃つ、など。


 ただこれらを調整するのが難しい。

 弾道を交差させてはいけない。

 だが破壊力を上げるには(部位破壊するには)同じ場所へ着弾させる必要がある。

 同じ場所へ着弾させるために曲げるのも難しい。

 問題は距離と高さと敵の部位の位置だ。

 敵を自動追尾する弾にしても、距離と高さと狙う部位が違えば曲がり方が違い、着弾地点がずれる。

 ずれてしまうとダメージが分散する上に、無駄なAPを消費してしまう。

 APがなくなれば弾は撃てない。

 分散して1発分のダメージしか与えられてないのに、消費APは3発分なんてことになると困る。

 一定の条件でしか使えない弾は実用性が低い。

 ……あまりに複雑なので、なにか食いながらエディットすることにする。


「今日はエッグタルトにするか」


「なんで?」

「カスタードは防弾チョッキになるらしい」

「は?」

「正確にいうとコーンスターチだな。『非ニュートン流体』とかいうやつで、力が加わると固まるらしい」

「へー」

 エッグタルトはタルト生地にカスタードを入れて焼き上げたスイーツだ。

 サクサクのタルト生地に、もっちりした玉子のクリームのバランスがたまらない。


「お茶はジャスミンティーかハマナス茶だな」


 ハマナス茶はジャスミンティーと同じ中国の花茶。

 直接グラスに茶葉を入れて、80度とぬるめのお湯をそそぐ。

 茶葉が広がってきたら飲み頃だ。

「いい香り」

「バラ科だからな」

 グラスに浮いた花弁は花茶の中でも特に美しく、またビタミンCが豊富で美容にもいい。


「黒茶や紅茶とブレンドしても美味いぞ」


「じゃあ2杯目はそれね」

「あいよ」

 中国紅茶とのブレンドもいいが、やはり黒茶が最高だろう。

 一番のオススメはプーアルだ。

 濃厚で若干ざらつきのあるプーアルが、ハマナスで柔らかく滑らかになる。

 後発酵茶独特の香りも、バラに包まれて一層飲みやすい。

「くそ、自由度が高すぎる。正面の敵に火力を集中させるっていう単純なエディットもできんぞ」


「『難解なので使いこなしているゴッデスイーターはほとんどいない』って作中で言っちゃってるぐらいだもの」


「……おい」

「ほとんどのプレイヤーはコピペね。ネットでレシピ検索して丸写し」

「せっかくのシステムが台無しだな」

 ゲームバランスを崩すものに手を出したくはないのだが、このままでは勝手がわからないのでレシピを検索してみる。

「……強すぎる」

 通常弾の3倍の威力なんていうのも珍しくない。

 部位破壊弾も充実している。

 クリーチャーによって破壊しにくい部位(他の部位が邪魔で叩けないなど)があり、特定クリーチャーの特定部位を破壊するためだけの弾丸がたくさんあった。

 発射時に角度をつけており、正面から撃つとその部位に弾が飛んでいく仕組みらしい。

「便利なのはサターンかしら」

「土星?」


「脳天直撃弾。撃てば自動的に相手の頭に当たる弾」


 試しに撃ってみると、銃口を正面に向けていても弾は急角度で上に撃ち上がり、真上からクリーチャーの脳天を直撃した。

「野外じゃないと使えないだろ、これ」

「大丈夫、このゲーム天井に当たり判定ないから」

 天井をすり抜けて放物線を描くらしい。

 当たり判定のある障害物を貫通して敵を攻撃できる弾丸もあった。

「とりあえず脳天直撃弾と内臓破壊弾を持っていこう。ピルグリム・ファーザーもこれならいけるか?」

「一人で不安なら協力プレイする?」

「頼む」

 二人でピルグリム・ファーザーに挑む。


「オールレンジ攻撃!」


「うわ!? なんだその弾!?」

「衛星軌道戦士ガソダムの兵器を再現した弾よ」

 たしかに弾がビット(ロボから分離し、遠隔操作で敵を攻撃できる兵器)っぽい動きをしている。

「これは空中で爆発して雨みたいに降り注ぐ弾丸。これは着弾時に十字の派手なエフェクトがかかる弾丸」

「……そのエフェクトに意味はあるのか?」


「あるわけないじゃない」


「真面目に戦え!」

「実用性が低いだけで使えないわけじゃないから。ふふ、ロマン兵器の破壊力を見せてあげる!」

 波動砲、レールガン、トールハンマー、インドラの矢、重力子放射線射出装置etc

 もう滅茶苦茶だ。

 とてもゴッデスイーターとは思えないトンデモ兵器が戦場を飛びかい、翡翠4匹はあっという間に駆逐された。

「大勝利!」

 夜空に向かってエディット弾を打ち上げる。

 すると空中で爆発して、花火のように鮮やかな文字が浮かび上がった。


『WIN』


 ……ここまでエディットを満喫されると、システムを使いこなせないのがちょっと悔しい。


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