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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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誘導ゲームセット【信玄餅とラテ】

参考ゲーム

マリオとワリオ

ブラストドーザー

メタルギアソリッド2

バイオハザード4

「これなんて読むの」


 目を閉じた巫女のパッケージが印象的な『歩き巫女』なるゲームを取り出した。

厭離穢土おんりえど欣求浄土ごんぐじょうどだ。家康の旗印で有名なやつだな」

「あー、そういえば歴史系のゲームで見たことあるかも」

 『穢れた土地から離れて浄土を求める』、仏教系の言葉だ。


「歩き巫女ってくノ一よね?」


「どこの神社にも属さないフリーの巫女だよ。……まあ、たしかに歴史系の作品では武田家のくノ一として登場することが多いけどな」

「信玄餅食べたい」

 安直すぎる。

 ようするに黒蜜きなこ餅(あるいは求肥)だ。

 信玄が非常食にしていたという説がある。

 ちなみに安倍川餅(きなこ餅)も家康が茶店で振舞われたという説がある(砂金に見立ててきな粉をかけたらしい)。


 飲み物はきな粉ラテ。


 牛乳(あるいは豆乳)に黒蜜きな粉を混ぜてもいいし、コーヒーでもいい。

「きな粉ラテに餅を入れたほうが混ざるんじゃない?」

「おいやめろ」

 ……黒蜜きな粉の欠点はうまく混ざらないこと。

 きな粉餅の上から黒蜜をかけるのではなく、先に黒蜜を餅にからめてからきな粉をかけたほうがいい。

 これでも完全に混ざるわけではないが、少しはマシになる。


「とにかく巫女さんを護衛すればいいのね」


 目が見えず、耳も聞こえない巫女を誘導するゲームらしい。

 巫女は世俗とは隔絶された環境で育てられたため、その身には一点のけがれもないという。

 それゆえにこの世の穢れを浄化することができるそうだ。

 舞台は魑魅魍魎の瘴気しょうきに包まれてしまった『穢土えど』。

 普通の人間は瘴気を吸ってしまったら死んでしまうので、巫女が浄化するのだ。


 巫女は各地にある浄土(浄化されている都市や神社)に向かって一直線に歩き続けるので、プレイヤーはそれを護衛する。


 巫女が歩いた土地は浄化され、瘴気が入ってこれなくなるらしい。

 瘴気を生み出す穢れを吸って浄化しているので、穢れが溜まりすぎると巫女は死んでしまう。

 つまり難所を避けるために大きく迂回すると穢れが溜まって死ぬ。

 最短距離を進ませなければならない。

 障害物に衝突すると巫女が出血するので注意が必要だ。

 宗教的に血は最大の禁忌であり穢れである。

 血を流せばあっという間に巫女に穢れが溜まって死んでしまう。


「薙ぎ払え!」


 巫女の進行方向に存在するものを片っ端から片づけていく。

 木を切り、草を刈り、岩などの障害物を移動させる。

 時に岩で水の流れをせき止めて川を渡り、切った木で崖に橋を架け、転ぶ危険性のある氷にすべり止めの土を撒き、トンネルを掘って険しい岩山を突破する。

 ただ浄化されるのは巫女の通過した場所だけで、進行方向の安全を確保するには瘴気の中に突っ込まねばならない。

 瘴気を吸ったら常人は死んでしまうため、主人公は息を止めて活動する。

 歩くだけなら息は120秒もつものの、走ったり力仕事をするとどんどん息が切れていく。

 巫女の穢れと無酸素運動。

 2つの時間の管理が重要になる。


「ああ、もう巫女が来た!?」


「ホラーゲームみたいな怖さがあるな」

 プレイヤーは巫女に先行して安全を確保する。

 巫女は目も見えず耳も聞こえないのでプレイヤーの作業工程を確認することができず、常に一定のペースで歩き続けるため、彼女が来る前に作業を終わらせなければならない。

 追いつかれたらゲームオーバー……とまではいかないが、どんどん時間的に厳しくなる。

 ホラーゲームで化物に追跡されている気分に近い。

 巫女が『歩いている』のも恐怖をそそる。

 多くのホラーでは追跡者はなぜか走らない。

 主人公が走っているのに、歩いている相手に追いつかれる(いないはずの場所から出てくる)というのが非現実的で恐怖をあおるからだろう。

 規則正しい足音も背筋を凍らせる。


ドカーン


「……ホラーゲームっぽいのに、妙な爽快感もあるな」

「そのギャップがいいのよ」

 障害物は移動させるより破壊した方が手っ取り早い。

 進路上にある障害物をあらゆる方法で破壊していく。

 刀で斬り、踏んで潰し、体当たりで破壊し、妖怪に乗って建物を倒壊させる。

 周りを一気に破壊し、整地できる妖怪に乗るのが一番重要なのだが……。

「う、操作性悪すぎ!」


 出来の悪いレースゲームのように癖が強く、自在に操るのが難しい。


 最悪なのが尻尾での攻撃だ。

 障害物の前で尻尾を振るだけでは壊れない。

 助走が必要だ。

 走るだけなら問題ない。

 難しいのは障害物の前で反転すること。


 レースゲームでドリフトする車のケツを障害物に当てるような感覚だろうか。


 操作に難がありすぎてさっぱり当たらない。

 全速力で頭から突っ込めば障害物は破壊できるものの、妖怪も死んでしまうのでそれは最後の手段だ。

 瘴気の濃度によって操れる妖怪は決まっており、浄化された空気を吸うと死んでしまうので、操作性の悪い妖怪も使わざるを得ない。


 瘴気が濃くて息を止めても進めない場所(巫女の浄化待ち)は、高所に陣取って後ろから援護した。


 いしゆみで巫女の進行方向にいる敵を狙撃しつつ、障害物を排除し、壁を倒して足場を確保する。

 無事に正面の脅威を排除したものの、巫女の行く手には巨大な門がそびえていた。

 このままではぶつかる。

 走っても追いつけない。

 ここから撃つしかない。


「開いて! 開いて! 開いて!」


 急いで小さな鍵を破壊し、残弾を全て叩きこんで、巫女がぶつかる寸前に弩の衝撃で門を開ける。

「やった! 次で最後!」

 最終ステージは進路こそ直線的ではあるが、単純であるがゆえにタイミングが難しい。

「……ぐぬぬ。どうやってもギリギリのところで間に合わない。どうやってクリアするの、こんなステージ」

「無駄に動かすから失敗するんじゃないか?」

「は?」

「試しに放置して見ろ」

 いわれるがままに巫女を放置し、じっと見守る。

 すると巫女がギリギリのところで障害物や敵を避け、ザコにぶつかって一次的に動きが止まった瞬間に目の前を即死トラップが通過した。

 そして、


『到着!』


「はあ!?」

「やっぱりこれがこのステージの一番簡単な攻略法か」


「つまりなにもしなければ大丈夫なのに、プレイヤーが操作するせいで当たってしまうってこと!?」


「そういうことだ」

 ゲーマー心理を逆手に取った見事なステージ構成だ。


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