表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/382

ハンティングアクションセット【ケバブサンドとトルココーヒー】

参考ゲーム

モンスターハンター


「上手に焼けました!」


「なにかと思ったらケバブか」

 さすがに本場のドネルケバブのように縦で焼くのは無理なので、横にして焼いていた。

 肉をそぎ切りにし、トマトやピクルスをパンではさんで食べるのが王道だ。

 ジャガイモやチーズはお好みで。

 牛肉がメインらしく肉汁たっぷりでジューシーだ。


「トルコ料理だからトルココーヒーにするか」


「初めて飲むかも」

 お湯ではなく水の状態から煮立て、上澄みをすくって飲むコーヒーである。

 スパイシーなカルダモンで風味を加えれば、ケバブサンドにはぴったりだ。

「……で、なんでケバブなんだ」


「もうすぐ『クリハン』の新作が出るじゃない」


「クリーチャーハンターか。そういえばやったことないな」

 流行るのは間違いないので、今のうちに旧作をプレイしておいたほうがいいのかもしれない。

 さっそく巨大な武器を担いで狩りにおもむく。

「……もっさりしてるな」

 抜刀(武器を構える)していなければ攻撃できないし、抜刀しているとアイテムが使えず、走ることすらできなかった。


「軽快に動けたら協力プレイする意味がなくなるでしょ」


「なるほど」

 軽快だとガンガン攻撃が繋がり、敵に反撃する暇も与えず倒せてしまう。

 人数が増えればなおさらだ。

 むしろわざと不便にしているのかもしれない。

 敵のメイン攻撃は前足・噛み付き・頭突き・突進など。


 これを避わして一撃を叩きこむのが全ての基本になる。


 正面に立たなければ当たらない。

 毒液を吐いたり、岩を投げてきた場合も同じ(飛び散って攻撃範囲が広がる攻撃もあるが)。

「せい!」

 闘牛士のごとく突進を華麗に避わし、小型クリーチャーの頭部を粉砕。

 力尽きたクリーチャーのそばでボタンを押すとナイフを取り出し、肉や皮、骨、角などを採取した。

 1匹から採取できる回数は限られており、採取できる素材もランダムである。

「さて……」

 さっそくクリーチャーから採取した肉を焼く。

 携帯焼肉セットを使うとコミカルな音楽と共に肉を焼きはじめるので、音楽や肉の色を見ながらタイミングよくボタンを押すと、


『上手に焼けました!』


 『こんがり焼肉』になった。

 もちろん早ければ半生になり、遅ければ焦げる。

 肉は焼き具合によってスタミナの回復度合いが違う。

 スタミナは走ったり緊急回避(ボタンを押すと前に転がりながら攻撃を避わす)をすると減る。


 減ったスタミナは時間経過ですぐに回復するので、戦闘中でなければ走っても気にならない。


 問題はスタミナの最大値だ。

 長時間狩りをしているとゲージの最大値が減る。

 半生や焦げ肉でもスタミナは回復するものの、こんがりにはかなわない。

 リアルでもケバブサンドを食べながら依頼クエストを受注する。


 初めての大型クリーチャー討伐だ。


 小型が成長して大きくなっただけなので、そこまで苦戦はしないだろうと思っていたら。

「げ!?」

 同じエリアに生息していた猪が突っ込んできた。

 猪に吹っ飛ばされ、起き上がった直後に突っ込んでくる大型。

 緊急回避で難を逃れたものの、焦ってカメラ操作がおぼつかない。

 一直線に突っ込んでくる性質上、敵のだいたいの位置が把握できているのが救いか。

 態勢を立て直して先に猪を始末し、大型の横に回り込み頭を叩く。


 敵の体力ゲージは表示されないので、実際どれだけダメージを与えているのかわからないのも地味にきつい。


 ……本当に倒せるのか、こいつ?

 焦ると無駄にボタンを連打してしまい、不用意な追撃をしてしまって大型の反撃を避わすことができず吹っ飛ばされる。

 しかも大型は度重なる打撃に激怒して赤くなった。


ぶるるっ!


「速い!?」

「怒り状態になると威力が上がって、動きも速くなるのよ」

 純粋な突進速度が速くなるならまだしも、方向転換してから突進するまでの間が短くなるのだ。

 いつもと同じ感覚で避わそうとすると直撃する。

 体力がやばい。

 逃げて体力を回復させようにも抜刀状態では走れず、アイテムも使うことができない。


 納刀のうとうしても『大型クリーチャーに背中を向けて走る(=逃げる)と通常時よりスタミナの消費が激しくなる』という無駄にリアルな仕様。


 ほとんど距離が取れず回復する暇がない。

 そもそもこの状況では冷静にカメラとアイテムを操作することができない。

 そしてとうとう、


『万策尽きました』


「ぐっ……!」

 体力が0になり、あえなく力尽きる。

 『ニャイルー』という猫っぽい獣人にタンカで拠点ベースキャンプに担ぎ込まれた。

「ん? ゲームオーバーじゃないのか?」

「2回までなら力尽きてもクエスト失敗にはならないのよ」

「そうなのか」

 力尽きるごとに報酬が3分の1になってしまうが、それは仕方ない。

 何度か力尽きながらも着実にダメージを与え、


『メインターゲットを達成しました』


「よし!」

 大型クリーチャーを討伐。

 どれだけクリーチャーが大きくても採取する回数は決まっているので、すべての骨や皮を独占することはできない。

 残りの素材(死体)は依頼主やギルドなどに持っていかれるのだろう。


 明らかにぼったくられている。


 クリーチャーから採取する素材で装備を鍛えていくゲームシステムなだけに、足元を見るギルドが恨めしい。

「クエストレベルが上がると一発の破壊力もシャレにならないのに、状態異常も増えるのが厄介だな」

 長期戦になると一発もらい、状態異常になる確率も増す。

 リスク覚悟で手数を増やす必要があった。

 横や背後に回り込むだけでは限界がある。

 ここは逆転の発想だ。


 回り込むのがダメなら懐に潜り込めばいい。


 クリーチャーは恐竜などをモチーフにしているだけあってでかい。

 腰が高く、懐が広いので意外に潜り込めてしまう。

 しかもクリーチャーは懐に潜り込まれることを想定していないのか、真下への攻撃が甘い。

 殴り放題であり、回復のチャンスでもある。


『万策尽きました』


「うああ!?」

 ……ただし接近しすぎると敵の全身が見えず、予備動作も見えないので注意が必要だ。

 モーションの大きな攻撃も、予備動作が見えなければ避わせない。

 危なくなったらエリア移動だ。

 このゲームは1ステージが複数のエリアで構成されており、エリアを移動するとゲーム画面上に表示されているフィールドが切り替わる。

 敵に追われていても、エリア移動すれば敵は追ってこなくなるので安全だ。

 クリーチャーからすると『縄張りの外に追い出した』という認識なのかもしれない。

 だいたいの立ち回りを覚えて、狩りにも慣れてきた。

 ガンガン大型を討伐していく。


『クエストに失敗しました』


「は?」

 なぜかクリーチャーを討伐したのに、クエスト失敗になった。

「それ『捕獲クエスト』」

「捕獲?」


「クリーチャーの体力を一定以下にした状態で罠にかけて、それから『麻酔球』を投げると捕獲できるのよ」


「あー、生け捕りにするのが目的だから討伐すると失敗扱いになるのか。」

 ボールを投げてクリーチャーを捕まえる。

 どこかで聞いたことのある設定だ。

「でも落とし穴にハマらせたりしてからじゃないと捕獲できないんだろ? 難しくないか?」

「敵はプレイヤーに向かって突進してくるんだから誘導できるでしょ」


「……理屈はわかるんだが。戦闘中にアイテム使うの苦手なんだよな」


 体力回復、スタミナ回復、状態異常回復、砥石、そしてドリンク(暑い砂漠では体を冷やし、寒い凍土では体を温めるドリンクを定期的に飲まないといけない)。

 攻撃と回避の間に、状況に応じてアイテムを切り替えながら使わないといけない。

「戦闘中に使いたいアイテムを選択するのは手間取るから、あらかじめ回復アイテムにカーソルを合わせてるぐらいだからな。戦闘前に仕掛けるのが精々だ」

「ならここで慣れておいた方がいいわよ。討伐より捕獲の方が楽なんだから」

「そうなのか」


「敵の体力ゲージがないから厳密な数字はわからないけど、捕獲可能な『瀕死状態』はどのクリーチャーも最大体力の10%ぐらいに設定されてるはずなの。つまり最大体力が高いクリーチャーほど、瀕死になってからが長いわけ。体力が減るほどクリーチャーは怒りやすくなるから、むしろ捕獲メインでいかないとやられるわよ」


「なるほど」

 討伐でしか入手できないアイテムもありそうだが、そういうのにこだわりがないのなら大人しく捕獲をした方がいいのかもしれない。

「罠もいろいろあるな」

 落とし穴などの物理的に動けなくする罠、肉に毒や睡眠薬などを仕込んで状態異常にする罠、そして爆弾だ。

 爆弾が一番難しい。


 設置したタル型爆弾の近くに敵を誘導し、なおかつ爆弾に石を投げて起爆させないといけないのだ。


 その分ダメージはすさまじい。

 今までと同じやり方では限界が見えたのも事実。

 だまされたと思って罠を仕掛けてみる。


「あ」


 周囲にいた小型クリーチャーが落とし穴にハマった。

「くそ、落とし穴がなくなった! なんで落とし穴は1個しか持てないんだよ」

「アイテムを調合したら作れるわよ。持ちこめるアイテム数の制限があるから2個しか作れないし、同じ罠を使うと効果時間も短くなるんだけど」

「今度は調合か……」

 どんどんやることが増えていく。

 落とし穴の材料がないので、クエストを一旦中断してから再開。

 あらかじめ小型を退治してから罠を仕掛け直す。

「焦るな焦るな」

 ダメージを受けてもあわてない。

 冷静に敵を誘導する。

「ここだ!」


ドカン!


「おおう!?」

 満を持しての爆弾発動。

 武器ではなかなか破壊できない鱗が一撃で吹っ飛ぶ。

 相手が足を引きずって瀕死であること確認したら、突進を避わして落とし穴に落とし、


『メインターゲットを達成しました』


「よし!」

 麻酔球で捕獲。

 あらゆる手段を尽くして獲物を追い詰める。


 これぞハンティングだ。


 操作性が悪いと感じていたのも今は昔。

 協力プレイ(役割分担)のための操作性だと思っていたが、これはソロプレイのためでもあるらしい。

 アクションだけでは敵を倒しきれない。

 そのための罠だ。

 操作性がよく、スピードが速くて攻撃が繋がりまくるコンボゲームでは味わえない楽しさだろう。

 動きの遅さもクリーチャーの装甲を破壊できるだけの巨大な武器に、討伐・捕獲するためのいくつもの罠の携帯、敵の攻撃を避わせるギリギリの重さゆえだと考えれば納得がいく。

 敵を倒すための準備も楽しい。

 どうやらこれが俺に一番合った戦闘スタイルのようだ。

 もっとも罠を使う弊害もある。


「しまった、麻酔球がない!?」


 捕獲に必要なアイテムを忘れたり、

「もう少しダメージを与えておくか」

 クリーチャーによっては瀕死状態がわかりにくい。

 瀕死になったフリをする頭のいいやつもいる。

 なので確実に捕獲するために念入りに殴っていると、


『クエストに失敗しました』


「げ!? 殴りすぎた!?」

 つい殴りすぎて討伐してしまう。

 苦労して討伐したのに、捕獲クエストでは失敗になってしまうのがまた精神的にきつい。

「やっぱり爆弾だな」

 タル型爆弾を設置し、大きく振りかぶって第一球。


ドカン!


「よし、次だ」

「え、また?」


ドカン!


「次」

「ちょっと待って。……あんた、爆弾いくつ持ってるの?」


「調合分を含めるなら大型爆弾G12個と大型爆弾3個だな。もちろん小型爆弾もあるぞ」


「はあ?」

 大型爆弾Gは大型爆弾を調合してできる最強の爆弾だ。

 狩場にはGは2個、大型爆弾は3個しか持ちこめない。

 しかし狩場で大型爆弾を材料に調合すればGは5個になる。

 そして大型爆弾も大型タルと爆薬があれば調合できる。

 大型タルは10個まで持ちこめる。

 だが残念なことにGを作るための素材は10個しか持ちこめない。

 1ステージで使えるGは12個までということだ。


「他の罠も持てるだけ持ってるぞ。ただフル装備だと調合の素材を買う資金と手間がかかりすぎるんだよな。仕方ないから普通のクエストでは手頃な爆弾で爆殺して、ハンターランクを上げるために必要なキークエストのクリーチャーだけフル爆弾で爆殺してる」


「……そんなやり方だと上のランクじゃ通用しないわよ」

「なに、まだ爆弾が足りないのか?」


「爆弾に頼りすぎてプレイヤースキルが上達しないからよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ