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本編

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RTSセット【プリンとユンヨン】

参考ゲーム

ポピュラス



「そろそろ受験勉強をし始めた方がいいと思うの」


「いい心がけだ」

「というわけで文明シミュレーションゲームを買ってきたわ!」

 ……前言撤回。


 買ってきたのは『ポピュリスト』。


 洋ゲーらしく、名前も聞いたことがない。

「リアルタイムストラテジーよ」

「しんどそうだな」

「そんなに複雑なパラメータ管理はないから大丈夫」

 ポピュリストの主人公は神さまらしく、基本能力は土地の隆起と沈下。

 ようするに土地を盛り上げて山にしたり、逆に土地を沈めて窪地を作ったりできる能力だ。

 でこぼこの土地を平らに整備すると、人間が自動的に家を造って規模を拡大し、人口を増やして文明を広げていくようだ。


「……説明書がないからアイコンの意味がまったくわからないわね」


「調べるしかないな」

 チュートリアルなどはないので、実際にアイコンを押してみるまで何が起こるかわからない。

 押しても何が起こったのかわからないこともある。

 瑞穂が調べ物をしている間に俺はおやつをつくることにした。

「おやつなに?」

「プリンだ」

「プリン? 地味ね」

「出来立てのプリンだぞ。あったかいのは食べたことないだろ」

「そういえばないかも……」

 冷やしたプリンはアイスコーヒーのようなもので、プリンの持つ本来の味を堪能するなら出来立ての方がいい。

 あたたかい方が風味や濃厚さをよりダイレクトに感じられるからだ。

「ほれ、できたぞ」

「んー、おいしいけど何か違う」

「……違う? カラメルソースか?」

「それよ!」

 カラメルは冷やして固めずに液状のソースとして上からかけている。

 なので市販のプリンのように『ぷっちん』し、頂上に黒い雪が積もった山を築くことはできないのだ。


「プリンって考えるからダメなんだよ。カスタードプディングっていう別の料理だと思え。ユンヨンと一緒に味わってみろ」


「ユンヨンって紅茶コーヒー?」

「ああ。アリスに教わってから独自にブレンドしてみた。意外にいける組み合わせだぞ。プリンにも合う」

「へー」

 エスプレッソに紅茶を組み合わせるというよりも、ミルクティーを組み合わせるといった方がいい。

 コーヒーとミルクティーのポットを両手に持って同時にカップへそそぐのがコツだ。

 こうするといい感じにコーヒーとミルクティーがなじむ。

「なんかコーヒーっぽくないけど、慣れると癖になるわね」

「だろ?」

 今回はエスプレッソと同じ量のミルクを合わせている。

 こうすることでエスプレッソの苦味をマイルドにし、なおかつ紅茶の風味を引きたてているのだ。

 プリンのソースとして味わうのも面白い。


「えーと……。人口が増えるほど信者が増えて、色んな奇跡を起こせるようになるんだって」


「信者の数がレベルなわけか」

 信者が増えると地震・雷・火事など様々な奇跡を起こすことができるらしい。

 ステージ制でマップには相手の文明が1つだけ存在しており、それを倒せばクリアだ。

 奇跡を起こして倒すも良し、人間に直接戦わせるのも良し。

 もちろん奇跡を起こした方が確実だが、神さまの力は信者のいる範囲にしか及ばない。

 つまり奇跡で相手を攻撃するには人口を増やし、都市を相手の勢力圏に伸ばさなければならない。

 序盤は土地を整備して人口を増やす単純作業だ。

「なんでも平らにすればいいわけじゃないんだ」

「高低差が重要だな」


 土地を平らにしても高低差があると交流できず、複数の都市が隣り合っていても合併できない。


 同じ高さにするのが基本だ。

 ただ低くしすぎると津波で攻撃されたら一巻の終わり。

 沿岸部は高くしておいた方がいい。

 木や岩が邪魔で都市を広げられない場合は、一度限界まで土地を沈下させる。

 すると土地がなくなって海(川・湖)になり、木や岩は沈むので、障害物がなくなったら隆起させて土地を元に戻す。


「ぎゃー!? 火がー!? 火がー!?」


 ……複数の障害物を沈下させて消し、土地を元に戻す作業が面倒だからといって、安易に奇跡を使うとひどいことになる。

 なお木は都市を広げる上では邪魔だが、伐採しすぎると雨を吸収できなくなって洪水が起こったりするようだ。

 敵を攻める場合は木を植えまくって放火するのも効果的らしい。

 ステージが進むごとに人口は増え、主人公はさまざまな奇跡を使えるようになり、文明が発達して武装ユニットの種類も増えていった。


「じゃあ津波で攻撃っと。……って、ええ!?」


「これが終末か」

 津波を起こして敵地を攻撃しようとしたら、加速度的に津波が巨大化していき、やがて世界中を飲み込んだ。

 沿岸部は全滅。

 自分の領土も含めて、世界の人口の99%が死んだ。

 レベルが上がるのも考えものだ。


 だがステージが進むと主人公のレベルが急激に下がっていく。


「新たな神の出現か」

「宗教戦争ね」

 敵の神は物理的に倒すことができず、こちらと同じように人口(信者)が増えるほど力が増す。

 神を倒すには相手の信者を皆殺しにするしかない。

 だが神を倒しても、次から次へと新しい神が誕生する。

 世界中で人口が爆発的に増え、多神教が普及しつつあるらしい。


 1人の神だけを集中的にあがめることが少なくなり、人口を増やしても主人公のレベルはほとんど上がらなくなった。


 むしろステージが進むほど下がっていく。

 奇跡は安易に使えなくなり、いかに効率よく人口を増やし、都市を攻撃するかで勝負は決まる。

 奇跡は攻撃手段というよりも妨害手段になっていった。


 科学が発展すると強力なユニットが使えるようになるものの、無神論者が増えてとうとう奇跡を起こせなくなってしまった。


 無神論者が大半なので、神の手で満足に動かせるユニットがいない。

 数少ない信者の心に働きかけて間接的に無神論者を動かすしかないのだ。

「……」

「どうした?」

「……クリアしたくない」

「まあ、この展開だとエンディングも予想できるしな」

 しかしこれはリアルタイムシミュレーション。

 否が応でも時間は流れ続ける。

 放っておいたら滅ぼされるのだから、この手で世界を征服するしかない。


『God is dead』


 やがて科学によって『宇宙や人間を創造した神は存在しない』ことが証明され、宗教は姿を消し、人間の心から生まれた主人公も消滅した。


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