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本編

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戦国シミュレーションセット【パインサラダとティーパンチ】

参考ゲーム

信長の野望

 別府竹細工の竹かごに様々な果物を盛って店頭に飾る。


「なにこれ?」

「茶道ならぬ『煎茶せんちゃ道』では、果物や野菜、他にも文房具や炭を飾ったりするんだよ」

「へー。なんか美術の教科書にこんなの感じの絵があったわね」


「たぶんセザンヌだな。たしかに静物画の要素はある。カラヴァッジョの『果物籠』、若冲じゃくちゅうの『果蔬かそ涅槃図』、デ・ヘーム親子、ファンタン=ラトゥールの名画を果物飾りで再現してみるのも面白い」


「そ、そうね」

 明らかに知ったかぶりをしている。

 こいつにわかったのはせいぜい若冲ぐらいだろう。

 いや、若冲ですら知っていたかどうか怪しい。

「ゲームしよっと」

 俺が飾り物をしているのを横目に、ゲームをセットする。

 有名な歴史シミュレーションゲーム『ノブナガ・ビー・アンビシャス』だ。


「あれ、家康も謙信も信玄もいない」


「年代によって名前が違うんだろ。家康は松平元康まつだいら・もとやす、謙信は長尾景虎ながお・かげとら、信玄は晴信だ」

「有名な名前で統一しとけばいいのに」

「……話が成立しなくなるだろ」

 時代考証は歴史好きがもっともこだわる部分だ。

 絶対に手を抜いてはいけない。

「有名なゲームなのにプレイしたことないんだな」

「だって歴史の勉強してるみたいだし」

「勉強するより遊びながら覚える方が楽だろ」


「ほとんどテストに出ないじゃない」


「……幕末よりマシだ」

 授業で待望の幕末が来たと思ったら、新選組も坂本龍馬も細かい部分はすっとばされてしまって愕然としたものだ。

「えーと、まずは町作ってお金を貯めて、治水してから田畑を作る。それから軍事力確保のために村で徴兵。街を発展させて、田畑増やして、築城して防御力上げて、それからそれから……。あ、お金が足りない」

 開始5分で金欠。


「侵略しよ」


「……大義名分なしに戦争すんな。せめて米を売ってからにしろ」

「そうね、お米を売って軍備を整えないと」

 どちらにしろ侵略するらしい。

「米不足の土地で高く売って……、これで完璧ね。貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだっー!」

 宣戦布告して侵略すると、画面が戦闘マップに切り替わる。

 マップはマス目で区切られており、ユニットを動かして戦闘するシミュレーションRPGのようなシステムだ。


「戦闘力が攻撃力で……、采配が防御力? 智謀は精神力ね。これが高いほどステータス異常にかかりにくい、と」


 主な行動は突撃、騎馬突撃、槍ぶすま、鉄砲。

 『奇計』で敵を混乱させたり、士気を上げてステータスを上昇させる(こちらの士気が上がると敵の士気は下がる)こともできる。

「奇計、奇計、そして士気を上げてから一斉攻撃!」

 基本は敵を混乱させ、敵を複数のユニットで囲んで一斉攻撃のようだ。

 単独行動は死を意味する。

「ふふ、籠城ろうじょうしても無駄よ!」

 城を取り囲み、城門を破壊しようと工作。

 着け火(放火)もできるらしいが、せっかくの城をダメにするのがもったいないらしくそこまではしない。

「やった、門が開いた! ……って、あれ?」

 味方がバタバタと倒れていく。


「米を売りすぎたな」


 兵糧が尽きたらしい。

 何も考えずに攻城戦を仕掛けたのも仇になった。

 士気が見る見るうちに下がり、逃亡兵が続出。

 さらに開いた城門から逆に敵が総攻撃を仕掛けてくる始末。

「た、退却!」

 しかし時すでに遅し。

 あっという間に有力武将が捕まってしまい、本拠地にまで攻め込まれる。

 米を収穫するにはまだ時間がかかり、籠城できるだけの蓄えもない。

 せめてどこかと同盟を組んでいれば助けてもらえたのだろうが、孤立無援だ。


「げ、迎撃よ!」


 全軍出陣。

 総大将さえ討ち取れば何とかなると考えたのだろう。

 一縷の望みに賭けて突撃したものの、

「あ」

 敵の騎馬部隊がこちらの主力を華麗にスルーして城へ向かう。

 全軍出陣したので城はもぬけの殻。

 慌てて騎馬部隊を追いかけるものの、とても間に合わない。

 あえなく残り少ない兵糧と城を奪われ、士気はがた落ち。

 万事休す。

「うう……」

 深く考えずに行動するとこうなるという、いい見本だ。


「……甘いの食べてから仕切り直しよ。この果物飾り、どうやって食べるの?」


「パイナップルを半分に切ってから中身をくりぬいて器にする」

「パインサラダは死亡フラグよ」

「……なんの話だ」

 パイナップルの器へ、一口サイズにカットしたフルーツを盛り付ける。

 バナナ、黄桃、イチゴ、ブルーベリー、マシュマロ、そしてカッテージチーズ。

 マシュマロとカッテージチーズがおいしさの要だ。

 風味がバラバラのフルーツを、酸味のあるカッテージチーズがまとめている。

 市販されているお菓子にフルーツマシュマロがあるが、これは100%の果汁がしみ込んでいて極上の味だ。

 パイナップルはもう半分あるので、こっちには桃、枇杷びわ、柿を盛りつける。


 これにヨーグルトと生クリームをかければフィリピンのスイーツ・フルーツサラダの完成だ。


 今日は生クリームは使わずヨーグルトだけにした。

 お茶は煎茶……といいたいものの、フルーツと相性のいい紅茶のキャンディやディンブラの方がいいだろう。

 煎茶道では煎茶だけでなく玉露やほうじ茶、番茶も飲む。

 現代的に紅茶を飲んでもおかしくはない……はずだ。

 あらかじめ冷やしておいた紅茶を取り出し、残り物のフルーツをカットする。

「このままアイスティーで飲んでも良し、好きなフルーツを五種類入れて炭酸を注げばティーパンチにもなる」

「なんで五種類なの?」


「パンチってのはサンスクリット語で5を意味するからだ」


「へー」

 パーティーでは大きめのボウルや、スイカの中身をくりぬいてティーパンチの器にするのが定番だ。

 成人なら香り付けにロゼワインやリキュールを入れてもいい。

 大人の味だ。

 とても煎茶道には見えないが、たまにはこういうのもいいだろう。


「戦闘は囮が効果的みたいね。それと士気」


 一服したところでゲーム再開。

 囮で相手を誘いだして一斉攻撃。

 倒せば倒すほど相手の士気も下がり、さらに戦いやすくなる。

 わざと不毛な土地を敵に与えて、破産させるという方法もある。

 兵士を捕虜にさせてもいい。


 捕虜が多くなればなるほど多くの兵糧が必要になり、相手の食料を食い潰せる。


 慣れてくれば少数の兵で大軍を相手に出来た。

 軍の規模が大きくなればなるほど士気が重要になる。

 そこで雑兵をぷちぷち倒し、特に重要でもない土地を占領、離れた位置でひたすら自軍の士気を上げていれば敵の士気は0になり、容易に勝てる。

 上手いプレイヤーなら一軍だけで大国を落とせるだろう。

 侵略される心配がなくなったら、武将と物資と兵力をどんどん最前線に移動させて侵略していった方がいい。

 そして地道に国を発展させ、他国と同盟を組む。

「んー、国力が充実してくるとワンパターンになるわね。領土を広げるほど管理するのが面倒くさくなるし」

「大国に挟まれて右往左往してるのが一番面白いゲームだな」

「慣れてきたからやりこみプレイに切り替えていきましょ」

 弱小国を選び、大国の顔色をうかがいながら二枚舌外交で自国を発展させていく。


貢物みつぎものはタバコ、と……」


「そんなんでいいのか?」

「寿命が5年縮むのよ。これなら一度も戦争せずに全国統一できるはず」

「……嫌な外交だな」

 たとえば家康は大坂夏の陣の翌年に死んでいる。


 タバコを献上すれば大坂の陣を防ぐことも可能なわけだ。


 平均寿命の短いこの時代、5年の命を削るのは反則に等しい。

「えーと、こいつとこいつは近いうちに死にそうね」

 各武将の寿命を調べ、タバコを輸入しては献上し、周辺諸国の当主の寿命を縮めていく。

 すぐに死にはしないが、長期的には必ずこちらの有利に働くだろう。

 将来性豊かな武将は早めに手を回して縁組したり、養子にしておく。

 そして寿命の長い有力大名は暗殺。

 息子が家督を継ぐだけで、家督争いにならない場合も多々あるが……。

 能力の高い武将を殺すだけでも一定の価値はある。


 パラメータの高いキャラがほしい時は『流言りゅうげん』で悪い噂を流してこちらへ引き抜く。


 松永久秀のような悪人や、藤堂高虎とうどう・たかとらのようにころころ主君を変える武将には積極的に手を回して内応や謀反を起こさせた。

「ふふふ、天下が見えてきたわね」

「油断してると足元すくわれるぞ」

 こういう武将には明らかな欠点がある。


『松永久秀が謀反を起こしました』


「ぎゃー!?」

「ほらな」

 仲間に引き込みやすいということは、裏切られる可能性も高いということだ。

 1人が反乱を起こせば連鎖反応が起こるのが道理。

「うう……」

 瞬く間に国が崩壊していった。


 策士策に溺れる。


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