バイオレンスゲームセット【おでんと昆布茶】
参考ゲーム
龍が如く
デッドライジング
「使い続けると装備が壊れるシステムは本当にうざいな」
「ふふふ、『虎が如く』をプレイしてもそんなことが言えるかしら?」
「壊れても面白いのか?」
「壊れないとゲームが成立しないもの」
「?」
自信ありげなので、とりあえずプレイしてみる。
舞台は日本の婆娑羅町。
おそらく歌舞伎町をモデルにした町だろう。
メインストーリーはヤクザの抗争だ。
『カチコミじゃー!』
アクションは軽快。
基本的に1対多なので格闘ゲームよりコマンドも簡単だ。
胸倉をつかみ、殴り倒し、倒れた相手の腹を蹴りあげる。
完全な喧嘩殺法だ。
ゲージを溜めると必殺技も発動できる。
さっきの腹蹴りも必殺技の一種らしい。
他にもダウンさせた相手の顔を踏み潰したり、馬乗りになってタコ殴りにもできる。
相手をつかんで壁際に行けば頭を壁に叩きつけ、橋の上や高所なら相手を下に投げ落とす。
ボス戦では特殊な必殺技やQTEが用意されており飽きさせない。
格闘ゲームとの一番の違いは武器だろう。
「なるほど、これが壊れても面白いシステムか」
バットや木刀などは一定回数攻撃すると壊れるものの、持ち運びが可能でゲージが溜まったら独自の必殺技も発動できる。
武器は素手よりもゲージが溜まりやすいので、弱い武器でも積極的に使った方がいい。
ベンチなどは大きくて持ち運び不可能ではあるが(戦闘中にしか拾えない)、大きい分だけ一度に多くの敵を攻撃できる。
これが気持ちいい。
ザコは自転車を振り回してぶっ飛ばすのがベストだろう。
武器による攻撃は一種のガード不能技なので、敵が武器で攻撃してきたらソファのような厚みがあるか、鉄板のような堅いもので防御しつつ間合いを詰めるのがコツだ。
主なザコキャラはチンピラやヤクザで、倒すと経験値やお金、アイテムを入手できる。
売られた喧嘩を買う場合が多く、お詫びの印に金銭を渡されるのでカツアゲとはちょっと違うものの、やっていることに大差はない。
……長期シリーズで、本編が始まる前から伝説のヤクザのはずなのだが、なぜこの街のヤクザやチンピラは主人公のことを知らずに喧嘩を吹っかけてくるのだろう。
謎だ。
『鬼龍ちゃーん』
ボスは何本もの体力ゲージがあり、ゲージが減ると攻撃パターンが変わって強くなる。
だから武器は温存。
序盤は弱いので素手で頑張り、攻撃パターンが変わってきたら武器を使って大ダメージを与えつつゲージを溜めて必殺技で一気に削る。
最後のゲージになるとQTEなどの特殊な演出も入りやすくなるので逆に素手でもOKだ。
長期シリーズなだけあって戦闘システムが洗練されており、奥が深い。
「最強の武器はなんなんだ?」
「ムービー銃」
「なんだそれ」
「戦闘中に何発撃たれても死なないけど、イベント中のムービーで撃たれたら一発で死ぬのよ。だからシリーズを何作も遊んでるプレイヤーほど、銃を携帯してるボスを怖がるの」
銃が強いから怖いのではなく『イベントで撃たれたキャラは死ぬから怖い』のが面白い。
虎が如くならではのシチュエーションだろう。
「寒いからおでん食べたい」
「ポトフならあるぞ」
「……おでんじゃない」
「ジャパニーズポトフだ」
「しかも大根・こんにゃく・レンコン? 変な具ばっかり」
「『精根尽きたらこんの付くものを食え』と江戸っ子も言っている」
「やっぱりおでんじゃない」
……墓穴を掘ってしまった。
具は他に玉子・練り物・中華揚げ・しゅうまい巻き・ポトフを意識してプチトマトも入っている。
「はふはふ」
さっそく取り分けて熱々のポトフを頬張る。
昆布茶の出汁がよく染みこんでおり、噛むごとに味が出る。
辛子もいいが、味噌で食うのも美味い。
これで玉子の黄身を出汁に溶かせば最高だ。
出汁の代わりに昆布茶を飲むのもまた一興。
梅昆布茶にすれば、また一味違ったおでんが楽しめる。
「こんなボロい喫茶店の80円の大根がいちばんうめえ」
「ボロいは余計だ」
一応虎が如くの名言である。
正確には喫茶店ではなくて屋台のおでんだが……。
あのシーンを観ると大根・こんにゃく・昆布を食べたくなる。
「他にもこういうゲームはあるのか?」
「あるといえばあるけど……。プレイはしたことないのよね」
「プレイしてない?」
ピンときた。
「ホラーか」
「う……」
予想通り。
ゾンビゲームの金字塔『レジデントデビル』と同じ会社のゾンビゲーム『デスライジング』だった。
「舞台はショッピングモールか」
「ゾンビ映画の王道ね」
店の周りを大量のゾンビに囲まれており、逃げ場がない。
『救援のヘリが来るのは3日後だ』
クリア条件は3日間生き延びること。
それだけだ。
その間は何をしてもいいらしい。
とりあえず生存者を助けたり、ゾンビ化の原因を突き止めたり、特効薬を見つけるのがセオリーだろうか。
わらわら
「なんだこの数!?」
とにかくゾンビの数が多い。
ショッピングモールが舞台なので武器と回復アイテム(ピザやジュースなど)には不自由しないが、
バキッ
「ぐっ、折れた!」
やはり何も考えずに殴っているとすぐに壊れてしまう。
ただどれだけ壊れてもイベント後や時間経過で在庫は復活するので、店の位置は暗記しておいたほうがよさそうだ。
「お、第一村人発見」
生存者を見つけ、安全地帯まで誘導する。
……だが生存者の頭がそれほどよくない。
目を離すとすぐゾンビに襲われてしまう。
連れている生存者の数が多いほど誘導が難しい。
おまけに、
『ぐああ!?』
「げ、フレンドリーファイア!?」
主人公の攻撃は生存者にも当たり判定があるので(とうぜん生存者の攻撃も主人公に当たる)、攻撃範囲の広い武器を振り回すとゾンビと一緒に生存者も殴ってしまう。
下手をすると、
ガシッ
「うおっ!?」
自分が殺した人間がゾンビ化してしまい、大変なことになる。
殺したと思ったらまだ生きていたというパターンがあるので、ゾンビも人間も倒したら死体蹴りしておいたほうがいい。
「シュート!」
そして一番の醍醐味はやはり武器アクション。
虎が如くの必殺技とまではいかないが、武器ごとに特殊アクションが設定されている。
たとえばサッカーボールで攻撃するとシュートを打つのだが、これが意外に強い。
ゾンビや壁に当たると跳ね返るため、ゾンビが密集している場所もしくは周囲が壁に囲まれている場所にボールを蹴りこむと、ボールが反射しまくって一度に10人ぐらいのゾンビを倒せる。
爽快だ。
「これ面白いな」
「……私もやっていい?」
「好きにしろ」
「武器さえあればこっちのもんよ」
モールを走り回ってあらゆる武器を調達し、ゾンビ相手に無双する。
ある時はベンチを振り回してゾンビを薙ぎ払い、ある時はショッピングカートでゾンビをひき殺し、ある時はバラエティ番組のようにパイを顔面にぶつけてゾンビの目を潰す。
「ひゃっはー、ゾンビ狩りだー!」
やはりゾンビを倒せると恐怖感は薄らぐらしい。
やりたい放題だ。
「ホッケーのスティックも強いわね」
スティックを使うと、どこからともなくホッケーのパックを取り出して打つのだが、これもサッカーボールと同じで壁を反射する。
ボールは一度蹴ってしまうと拾わない限りもう一度攻撃することはできない。
だがホッケースティックはパックがある限り何度でも攻撃できるのだ。
たとえばボスと戦うとき、バリケードに隠れながら壁にパックを反射させれば一方的に攻撃できる。
壁壁壁壁壁壁
/\
/ 壁\
主 壁 ボ
壁
銃弾は跳弾(銃弾が壁に当たって跳ね返る)しないので、壁に隠れてホッケーのパックを壁に反射させれば一方的に攻撃できる
威力は低いものの、攻撃・回復アイテムは5個ぐらい持てるので、スティックを何個もストックしておけばボスも完封できるだろう。
もちろんサッカーボールのように、敵の群れに打ち込んでも効果は抜群だ。
「ジャイアントスイング!」
ジャーナリストのくせに素手でもかなり強く、飛び蹴りは進路上のゾンビをどかすには充分だし(威力は低いので殺せない)、レベルを上げればプロレス技を覚えるのでゾンビをKOできる。
走ることができないので足は遅いものの、スケボーを手に入れればスムーズに移動できるし(ただし壊れやすい)、バイクや車もある。
特にバイクや車はクラッシュしない限り、ゾンビを何人ひき殺しても壊れない。
仮に壊れても、駐車場に行けば復活しているのでまた入手できる。
バイクと車が強すぎるので、このペースだとクリアするまでに2000人以上のゾンビを殺すことになりそうだ。
……頭がおかしい。
サバイバルホラーの皮をかぶったバカゲーだ。
『ひゃっはー、人間狩りだー!』
「ぎゃー!?」
ただし怖い部分はとことん怖い。
このゲーム、ゾンビものなのにボスは全員人間だ。
ゾンビパニックによって正気を失ったらしい。
嬉々としてゾンビを殺したり、人間を殺してゾンビ化させたり、自分をゾンビだと思い込んで人間を食い殺したり、ショッピングモールの生き残りを集めてカルト教団を作り上げたり、どれもまともではない。
ゾンビよりも人間のほうが恐ろしいことを強調しているのだろう。
『助けてくれてありがとう、死ね!』
「ええっ!?」
救出した生存者の中にまでボスが混じっているのだからタチが悪い。
「ふぅ……」
狂気のボスから命からがら逃げ出して一息ついたかと思えば、
「………………」
なぜか放心したようにヘリポートで棒立ちになる。
「なにしてる?」
「ヘリポートは安全地帯なんだから、3日間ここに立ってればクリアできるじゃない」
「……お前はそれで楽しいのか」




