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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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ランアンドガンセット【もんじゃ焼きサンドと粉末ジュース】

参考ゲーム

メタルスラッグ

戦場の狼

「お腹すいた」


「うちでいくらでも食えるだろ」

「そんなお金がないから」

「無駄遣いすんな」


「あんたが巻き上げてるんでしょ!」


「心外だな」

 巻き上げた分は誕生日やクリスマス、ホワイトデーなどで還元しているのだが。

 どうやらまったく気づいていないらしい。

「よし、じゃあ今日は俺が奢ってやろう」

「え、ほんとに!?」

「ああ」

「やった!」

「ただしあそこでだ」

 ビシッと指差した先は駄菓子屋。

 昔よくお世話になっていたものの、店が忙しくて最近はご無沙汰だ。

 たまにどうしようもなくチープな味が恋しくなるので、ここいらでまとめ買いしておくのもいいだろう。


「300円までだぞ」


「ケチ」

「うるさい」

 近所の小学生にまじって狭い店内を物色する。

「えーと、エビせんに梅ジャム2つ。ベイビースターにアダルトドーナツにチョコシガレット。極めつけは白い粉ね」

「……白い粉? 粉末ジュースか?」

「モナカビンに入ってる粉ラムネよ」

「ああ、それか」

「これをストローでキメるのが最高なのよね」

 なんて紛らわしい表現だ。

「えーと、後はうんまい棒と10円ガムと5円チョコで調節して……。これでぴったりのはずよ!」

「また、たくさん買ったねえ」

 駄菓子屋の婆さん(俺が小学生の頃から歳を取っていないように感じる)が、見た目に反する速さでそろばんを弾いた。


「300万円だよ」


 お約束。

「はい、300万円」

「まいどあり」

「俺はもんじゃ焼きせんべい付きで」

 いわゆるもんじゃサンドだ。

 やはり駄菓子屋といえばもんじゃ焼きだろう。

「あ、ずるい!」

「ずるいってなんだ」

「300万円超えてるじゃない!」

「俺の金だろうが」

「うー」

「あー、わかったわかった。お前にもわけてやるから、もんじゃのトッピングは自分の駄菓子でやれよ」

「いえー!」

 店の奥にある鉄板でもんじゃを焼き、駄菓子を投入する。

「やっぱり納豆味よね」

「……入れすぎるなよ」

 実物の納豆よりマシだが、入れすぎればどうなるかわからない。

「あとはアヒージョ味とウナギのかば焼き味と……」

「やめろ」

「じゃあ冷やし中華味といちごのショートケーキ味にする?」

「……それは単品で楽しんどけ」

「はーい」

 瑞穂に全部任せるとゲテモノになりそうなので、バランスを考えてソース・明太子・チーズ味でまとめておく。


「サラダ味ってサラダの味しないわよね」


「これはサラダ油のサラダだぞ」

「え、そうなの?」

 略し方があれなので勘違いしやすい。

 とうぜん味なのでサラダ油の代わりにもならない。

「飲物は粉末ジュースね」

 粉末をコップにぶちまけ、水をそそぐ。

 するとシュワシュワ音を立てながら、まるでビールのようなリンゴジュースが出来上がった。

 これで一杯やりながら、もんじゃ焼きをエビせんで挟んで食べるのが堪らない。

 特にもんじゃ焼きは駄菓子屋でも最高級品なので、小学生の頃は月に一度のこれが楽しみだった。


 ……うちで作った方がなんでも安上がりなのに気づいて、駄菓子屋には寄らなくなってしまったのだが。


 やはり駄菓子を入れたもんじゃは、うちで作るのとは一味違う。

 このチープな味は狙って出せない。

「ん、ゲームがあるな」

 野外に置かれている筐体に50円を投入した。


『戦場の人狼』


 かなり古いレトロゲームだ。

 横スクロールではなく見下ろし型で、敵を倒しながら画面上に進んでいくゲームだ。

 これも難易度が高い。

 主人公は正面にしか弾を撃てないのに、敵は当たり前のように八方向から撃ってくる。

 弾数も多くて避わしきれない。

「ランアンドガンなんだからスルーしたほうがいいわよ」

「ランアンドガン?」


「弾数無限で、乱射しながら走るゲーム」


 アドバイスに従い、乱射しながら敵をスルーして走る。

 撃つのはほとんど進路上にいる敵だけ。


 どうやら敵が出るたびに足を止め、ザコを一掃してから先へ進んでいくスタイルだと、次から次に敵がわきだし、画面が弾で埋め尽くされ、後ろから撃たれる可能性も高いようだ。


 敵をスルーして走り続けても後ろから撃たれるのは同じだが、敵は基本的に主人公がいまいる地点へ撃つ。

 つまり走り続けていれば自動的に弾を避わすことができるのだ。

 これを知っているか否かで難易度が違う。

 ……しかしそれでも8方向から攻められるのは厳しく、ステージが進むと物量に押しつぶされてゲームオーバーになった。

 難しすぎる。

 クリアできる気がしない。

 諦めて別のゲームを探す。

「これはどう?」


『オタルスラッグ3』


 見覚えのあるゲームだ。

「駄菓子屋で日本一普及してるゲームシリーズなのよ」

「そんなに面白かったか、これ?」

「普及率と面白さはイコールじゃないの。見て面白いゲームの方が人集まるでしょ? まあ、このゲームが普及してるのはメーカーさんの営業努力なんだけど……」

「へえ」

 俺も何度かプレイしたことはあるものの、1プレイ50円、しかも一発即死(残機3)というハイリスクローリターンっぷりが恐ろしくて一面もクリアしたことがない。

 ジャンルはよくある横スクロールアクション。

 銃を撃ち、タイトルにもある戦車『オタルスラッグ』を乗りこなして先に進む。


タタタッ


 瑞穂がいつものように連射した。

 普通のゲームなら序盤の敵は1発で死ぬ。

 だがこのゲームの敵は総じて堅く、一番弱い雑魚でさえ一発では死なない。

 序盤から連射必須なのだ。

「あれ、手榴弾がでない。ボタン壊れてる」

「マジか」

「駄菓子屋ではよくあることよ。おばあちゃんが修理できるわけないんだから」

「それで進めるのか?」

「……ちょっと厳しいかも」

「仕方ないな」

 俺も50円投入して乱入。

 試しに手榴弾のボタンを押してみる。


ドカンッ


「ん、2Pのボタンは大丈夫だな。こっちと替わろう」

「ありがと」

 手榴弾を使いこなす自信はないので席を替わる。

 といっても筐体に椅子はない。

 立ちプレイだ。

 しかも筐体そのものは座ってプレイすることを前提にした高さなので屈まなければならず、これで長時間プレイするのはきついだろう。

 太陽がまぶしくてモニターも見にくく、日除けのカバー(手作り)を頭からかぶらなければならない。

 1つの筐体で2人プレイだから窮屈でもある。


『うあー!?』


 極めつけは圧倒的難易度。

 5重苦だ。

 オタスラに乗っていれば、オタスラが壊れるまでは何発食らっても死なないものの、あっという間に破壊されてしまう。

 いくたの戦場を潜り抜けた戦闘狂ゲーマーの露払いがあるとはいえ、後ろから敵が出てくると対応しきれない。

「なんで鬼避けしないの」

「鬼避けってなんだ?」


戦車オタスラから降りる瞬間は無敵状態なの。それを利用した回避テクニックよ」


「意図的に無敵時間を作るわけか」

 さっそく鬼避けしながらプレイしてみる。

 鬼避けのおかげでオタスラが長持ちするようになったものの、


『うあー!?』


 鬼避けするということは『オタスラを降りる』ということ。

 初級者の腕ではオタスラにもう一度乗る前にやられてしまう確率が高い。

 むしろ鬼避けするせいで死ぬ。

 そして降りるのを怖がって鬼避けをしなければ、


ドカーン


 敵の攻撃をさばききれず破壊されてしまう。

 これでもう鬼避けは使えない上に一発即死に戻ってしまった。

 厳しい状況だ。

 なるべく瑞穂のキャラから離れず慎重に進んでいると、敵に捕まっている捕虜に遭遇した。


『ありがとう!』


 捕虜の縄を切って解放すると、お礼にアイテムを置いていった。

「それ拾って!」

「あいよ」


『レーザー!』


「おお!」

 ほとんどの敵を一発で撃ち殺せる強力な兵器だ。

 しかし、


『サブマシンガン!』


「あ、バカ!」

「え」

「このゲームでは武器を切り替えられないの。だから武器を取ると強制的に拾った武器に持ち替えちゃうのよ!」

「なんだと?」

 たしかにボタンを押すとレーザーではなくサブマシンガンの弾が発射された。

 ハンドガンよりはマシだが、せっかくのレーザーを捨ててしまったのは痛い。

「いつぞやのシューティングと同じだな。いかに弱いアイテムを拾わないか、そして無理にアイテムを拾うまいとすると敵の弾に当たる」


「そうね。ただ無限に撃てるハンドガンと違って、武器アイテムには弾数制限があるから、残弾が少ないなら拾うのもアリよ。捕虜を解放して武器を出現させるタイミングも考えないと……」


「なるほど」

「それと同じ武器を拾った場合は装弾数の75%が補充されるんだけど、普通に拾えば100%だから無駄撃ちで全弾使い切って拾うこと。装弾数が多くなるほど弾を損しちゃうから」

「残弾0にして拾えば100、1発でも残ってれば75発しか補充されず、最大で24発も損をするってことか。装弾数が200ならその倍。細かいことだが重要なテクニックだな」

「細かいついでにもう1つ。1回ボタンを押すと4連発で撃つ武器があるでしょ? これを撃ってる最中にしゃがむと、射撃が止まるから弾を節約できるわよ。捕虜の縄を切る時も弾がもったいないからナイフでね」

「……無駄撃ちしたり節約したり忙しいな」

 この鬼のような難易度のゲームをクリアするには、このような細かいテクニックを押さえておかないといけないのだろう。


「お、レーザーが出た!」


「取りに行っちゃダメ!」

「なに?」


『ありがとう!』『ありがとう!』『ありがとう!』『ありがとう!』『ありがとう!』


「うああ!?」

 収容所を舞台にしたステージのため、敵と捕虜の数がほとんど同じだった。

 うかつに連射すると捕虜の縄を切ってしまい、アイテムが山のようにばら撒かれ、足の踏み場もない。

「こんなに武器持ってるなら暴動起こしやがれ!」

 レーザーはあっという間に弱い武器に埋もれてしまった。


『うあー!?』


 こうして助けたはずの味方に足を引っ張られ、あえなくゲームオーバーになった。


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