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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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スイカ割りセット【スイカ】

「ばかやろー!」


「叫ぶな恥ずかしい」

「お約束でしょ」

 海で馬鹿野郎と叫ぶ馬鹿を初めて見た。

 というかなぜ馬鹿野郎なのだろう。

 山の『やっほー』も意味不明だが、出典が気になる。

 それと、

「なんで水着の上にパーカー着てるんだ?」

「ひ、日焼け防止なの!」

「日焼け止め塗れよ」

「……じゃあ塗って」

 不承不承といった感じでパーカーを脱ぐ。

「あっ……」


 あらわになった水着(パット入り)を見て、なぜパーカーを羽織っていたのか何となく察した。


「……なによ?」

「なんでもない」

「そんなに大きいのがいいの?」

「お前は小さいほうがいい」

「やっぱり小さいって思ってるんじゃない!」

 ……面倒くさいやつだ。

 正直、胸の大きさなんてどうでもいい。

 だが小さいほうがいいというのも本心だ。

 別に小さいのが好きなわけではない。

 小さいのを気にしている姿がかわいいのだ。

 逆に大きいことを気にして隠すのもそれはそれでかわいいだろう。


 だがこいつの性格的に、胸が大きいとふんぞり返っているはずだ。


 そうなるとうざいので、性格的にも肉体的にも控えめなほうがいい。

「日焼け止め塗ってやるから早く横になれ」

「痛くしないでね?」

「どうやったら痛くなるんだよ」

 日焼け止めを手で伸ばし、馴染ませてから柔肌に手を添える。

「ん、くすぐったい」

「ぷよぷよだな」

「ぷ、ぷよぷよ!? 太った!?」

「太ったというか肉付きがよくなった感じだな。元が細すぎなんだよ」


 ぷよぷよ


「ぷ、ぷよぷよしないで!」

「前も塗ってやろうか?」

「じ、自分で塗る!」

 日焼け止めをひったくられた。

 二重の意味でベタベタするのもここまでのようだ。


「ふふん。これでウルトラヴァイオレット対策は万全ね!」


「なんだその必殺技?」

「紫外線のこと」

 UVの正式名称がそんなにかっこいいものだったとは。

「はろー」

「お待たせしました」

「遅いわよ」

 10分ほど遅れて先生とアリスたちが合流した。

 これでメンツはそろった。

「まずは適当に泳ぐとして、その後なにする?」


「スイカ割りしたい!」


「アリスもやりたいデス!」

「夏の風物詩ですね」

「……バットとシートがいるな」

 スイカとスイカ割り専用バット(バットとというよりただの細い棒)とシート、塩、包丁、目隠し用の布その他を調達する。

 これで準備は万全。

「スイカ割りってどうやるんだっけ? 目隠しと誘導だけ?」

「最初にバットを額につけてグルグル回るんじゃなかったか?」


「そうですね。それとスイカの割れ方に点数を付けましょう。空振りは0点、スイカにバットが当たったら1点、ヒビが入れば2点、果肉が見えたら3点、綺麗に割れたら4点」


「いいですね」

「時間制限とバットを振れる回数も決めておきましょう」

「なら時間は1分、バットは2回までで」

「勝ったら何かもらえるの?」

「スイカの真ん中を独占できる」

「センター?」

「そこが一番甘いんだぞ」

「……微妙な報酬ですね」

 グルメには一番大事なことだ。

「じゃあ私からね」


 くるくるくるくるくる


「ああ!?」

 回ったのは5回程度だが、目隠ししているせいもあってか意外にふらついていた。

 何とか腰を落ち着けてバランスを取る。

「ど、どっち?」


「左だ」「ごーすとれーと!」「右に進んでください」


「割らせる気ないでしょ!」

 心外だ。

「……ルール変えましょ。2対2のタッグ戦ね。一人が誘導、一人がバット。得点の多い方が勝ち、同点ならもう1人も割る」

「OK」

「それでいこう」

 クジ引きの結果、俺と瑞穂、アリスと先生のペアになった。

「今度こそ!」


 くるくるくるくるくる


「おおう!?」

 またしても体がふらつき、右に流れた。

「左だ。……もう少し左。……そこだ!」

「ちぇりお!」


 スカッ


「あれ!」

「手前すぎだ。もうちょっと踏み込んで振り下ろせ」

「ちぇりお!」


 ドッ


「当たった!」

「……いや、浅い」

「辛うじてヒビが入っているようなので2点ですね」

「2点か……。ギリギリのラインだな」

 中心さえ叩かれなければ勝てるかもしれない。

アームがなりマス!」


 ブオンッ


 ……前言撤回。

 かすっただけでやられる。

 力んで空振りしてもらうのを祈るしかない。

「では始めまショー」


 くるくるくるくるくる


「これだけでいいんデスか?」

「ぐ」

 やはり三半規管が優れている。

 5回転程度ではふらつかない。

 しかも、


「先生の声がする方へ歩いてください」


「な!?」

 先生はスイカの後ろに立ち、パンパンと手を叩いていた。。

「こっちデスね」

「ストップ」

 いともたやすくスイカの元へたどりつく。

「チェスト!」


 バンッ


「……まあ、こうなるわよね」

「だな」

「のー!?」


 スイカは バラバラになった


 こうなるんじゃなかろうかと薄々感じていたが、やはりその通りになってしまった。

「……ヘタを下にした意味がありませんでした」

「ヘタ?」

「その方が割れやすいんですよ?」

「イカサマじゃない!」


「ちなみに公式ルールでは、スイカの後ろに立って声のする方に誘導するのは禁止です」


「……スイカ割りに公式なんてあったのか」

「公式では5回と3分の2回転、制限時間は1分半で、バットを振れる回数は3回です。得点も空振り0点とスイカに当れば1点は同じですが、ヒビは2~4点、果肉が見えたら5~10点です」

「わざと公式と違うルールにしてスイカの後ろに立ったのね」

「正解です」

 公式ルールでなければ公式の反則技は反則ではないという理屈だ。

 さすが先生、やることが汚い。

 高浜虚子たかはま・きょしの俳句を思い出す。


『先生が 瓜盗人で おはせしか』


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