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【コミカライズ掲載中】電気代払えませんが非電源(アナログ)ゲームカフェなので問題ありません  作者: 東方不敗@ボードゲーム発売中
本編

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クイズゲームセット【ハニートーストとボリビア】

参考ゲーム

子育てクイズ・マイエンジェル

「昔のクイズゲームはきついわね」


「世代がずれてるからな」

 プレイしているのは『子育てクイズ・ラブリーマイエンジェル南夢子たん』。

 正解したクイズのジャンルによって娘の性格(ワンパク、真面目、色っぽい、オタク)や容姿、得意教科(人文科学、社会科学、自然科学)が変わるシステムらしい。


 赤ん坊から始まり、就職して25歳で結婚できればクリア。


 30年ぐらい前のゲームなので、当時は常識でも今ではぜんぜんわからない問題が多い。

 ブームになっても一般に定着するのはごくわずかで、だいたい一過性のブームで終わる。

 再評価リバイバルブームや長期で活躍しているタレントのネタならギリギリわかるぐらいだろうか。

 たまに『なんで俺はこれを知っているんだろう』という問題もある。


『GAMEOVER』


「ああー!?」

 さすがに純粋な知識の問われるクイズだとゲーマーにもどうしようもない。

 クイズには解答権とノルマが設定されており、解答権が0になるまで問題に答えられる。

 クイズを間違えると解答権が1つ減り、解答権がなくなったらその場でゲームオーバー。

 もともとアーケードゲームだったらしく、かなり厳しい。

 ただこれは家庭用移植版なのでセーブすることができる親切設計。


「ん、協力モードもあるのか」


 プレイヤーは父親か母親のどちらかを選択し、娘は正解数が多い方になつくらしい。

「やってみる?」

「ああ。長くなりそうだから先に一服しよう。なにがいい?」


「ハニトー!」


「ハニートーストか」

 簡単でいい。

 バターなどが馴染むように、食パンに切れ目を入れようとしたところ。

「なにしてんの?」

「? ハニートーストだろ? 食パンに切れ目を入れて、バターとハチミツをかけるんじゃないのか?」


「ハニトーならパン一斤でしょ!」


「……お前は何を言ってるんだ」

「業界的にはそれが常識なの」

「どこの業界だよ」

「コラボカフェ」

「……アニメや漫画のコラボカフェか? ますます意味が分からん」


「ためしに『ハニトー』『コラボ』で検索してみなさいよ」


「どうせ有名なアニメに出てきたとかそういうやつだろ?」

 いわれたとおりに調べてみる。

「……マジかよ」

「ほら、みんな一斤じゃない」

 アイスやチョコ、フルーツ、クリームなどをたっぷり乗せたハニトーの画像が次から次に出てくる。


 毎日のようにコラボをしているレストランカラオケ店の名物メニューのようで、オタクの中ではハニトー=食パン一斤らしい。


 驚きのボリュームだ。

 一人では無理だろう。

 2人でも食べきれるかどうか怪しい。

「手間かかりそうだな」

 調理法はそんなに難しくはない。


 まず食パン1斤を半分に切る。


 田の字型に切り目を入れることもあるようだが、今回は中身をくりぬいく。

 そしてくりぬいたパンを1口大に切り、バターを塗ってトースト。

 もちろん中身をくりぬかれた半斤も一緒に焼く。

 そして1口大のトーストを半斤の中に戻し、蜂蜜をたっぷりかけ、チョコやアイス、フルーツなどでトッピングすれば完成だ。

「あっま!」

 カリカリふわふわでかなり甘い。


 ハチミツなので飲み物はフローラルなボリビアがいいだろうか。


 グアテマラもオススメだ。

「……よくそんなに食えるな」

「甘いものは別腹なの」

「これ食った後に晩飯食えるのか?」

「食べられるわけないじゃない」


 別腹とはいったい。


 とりあえず溶けるアイスの部分だけは完食してクイズを始める。

 問題は○×や4択が中心で、制限時間もあまり長くない。

 正解すると養育費がもらえ、早く答えるほど高額になる。

「養育費を使って色んなものを買ったり、遊びに行ったり、有名な学校に通ったりできるのよ」

「……娘にいくら継ぎ込めたかでハイスコアが決まるのか」

 嫌なところで現実的だ。


『この中で赤ちゃんに与えてはいけないものは?』


「ハチミツ!」

 クイズは娘の年齢によって内容が変わり、赤ん坊・幼児の頃は子供に関する問題だ。

 ただ子供に関するクイズといっても範囲がとてつもなく広く、


『カルト教団に狙われた夫婦の恐怖を描いたホラー映画はどれ?』


「マリーローズの赤ちゃん!」

 ……タイトルに赤ちゃんやベイビーと入っていればなんでもありらしい。

 受験戦争が今よりも苛烈な時代だったからか、幼稚園から受験が始まる。

 この定期的にくる受験(就職)クイズが難しい。

 一定の時間内に答えられないと娘が代わりに答えてくれるものの、


『不正解!』


 必ず正解するとは限らない。

 たぶん娘の得意教科によって正解率が変わるのだろう。

 受験戦争が激しくなれば、当然家庭内ヒエラルキーの争いも激しくなる。


『生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えとは?』


「42!」

「くそっ!」

 知識そのものは俺の方が上でも、オタク的な問題は全部取られてしまう。

 漫画やアニメ、ゲーム系は厳しい。


『ママー』


「んー、かわいい」

 おかげで娘は完全に瑞穂になびいてしまっていた。

 しかも、


「……おい、漫画やゲームで正解しすぎだろ。娘がオタクになってるじゃねえか」


 オタクの容姿は一昔前のイメージだ。

 眼鏡が致命的にダサい。

「しょうがないわね」

 やむなくオタク系ではわざと不正解にし、他ジャンルを強化して娘の性格を調整する。


『おまんら、許さんぜよ!』


「ああ、グレた!?」

 クイズの合間にイベントがあるものの、どのイベントでどのパラメータが上がるのかわからない。

 不正解になった分だけ養育費は減り、間違えることのできる回数も決まっているので、養育費を稼ぎつつ自分好みの娘を育て上げるのは至難の業。


『パクパクマン買って』


「はいはい」

 なので問題のレベルが上がってくるとわざと間違えることができず、どうしてもオタクになってしまう。


『不正解!』


「げ」

 そしてとうとう俺はゲームオーバーになってしまった。

「この子は私一人で育てていくから」

 オタク街道一直線。


 ……娘の行く末が心配だ。


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