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本編

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HARAKIRI将棋セット【サンドイッチとディンブラ】

陰陽師、花魁はユキノアさん、越後屋と悪代官はUminosaさん、巻物はどっぺる幻華さんに描いていただきました。

転載禁止。

「謹慎だけだと物足りないから、切腹をメインにしない?」


「交代ならともかく、反則した駒は死ぬんだろ? リスクが高すぎる」

「弱い駒で反則して強い駒と相討ちになればいいじゃない」

「それ先手必勝になるんじゃないか?」

「う……」

 やはり反則の扱いは難しい。

 そもそも反則を前提にするのが間違っている気がする。

「よし、新しいペナルティを設定しよう。ベースは新撰組の『局中法度』だ!」


一、士道に背くまじきこと


一、局を脱するを不許


一、勝手に金策致不可


一、勝手に訴訟取扱不可


一、私の闘争を不許


 ついでにこれを巻物に書いてボードにしてみた。


挿絵(By みてみん)


「……これをどう将棋に適用するの?」

「実際に指してみたほうが早い」

 さっそくデッキを組んで対局する。

「あ、この金取れるじゃない。ラッキー」


「じゃあ切腹な」


「は?」

「『勝手に金策致不可』。つまり相手の金や銀を取ると『勝手に金策をした』と判断されて切腹させられる」

「ええ!?」


挿絵(By みてみん)

金と銀


 まだまだこれだけではない。

「……悪代官取ったらどうなるの?」


挿絵(By みてみん)

悪代官


「勝手に訴訟取扱不可で切腹」

「陰陽師とか花魁は?」


挿絵(By みてみん)

陰陽師


挿絵(By みてみん)

花魁


「私闘で切腹だ」

「うかつに駒取れないじゃない!」

「武士以外の駒で取れ。それなら切腹せずに済む」

 なお反則の手を指せるのは武士だけだ(死ぬ代わりに反則できる)。

「ある意味、武士より悪代官とか花魁のほうが強くない?」


「江戸時代といえば『切り捨て御免ごめん』だが、本当に切り捨て御免やったら切腹だから仕方ない」


「え、そうなの?」

「町人が粗相そそうをしたから無礼討ちで斬るなんてことはまずない。武士が簡単に刀を抜けないことを知ってて襲撃する奴らもいるぐらいだからな」

「へー」

「それに戦争がないからどんどん武士は貧乏になって、金のある商人には頭が上がらない。吉原には刀を持ち込めないし、吉原の喧嘩で殺されても基本的に死に損だ。身分の高い大名がいくら金を積んでも、花魁が嫌だと言ったら手は出せない」

「武士の駒が弱くてもおかしくはないのね」

「そういうことだ。あと選択ルールで別の掟を導入してもいいな」

「たとえば?」


「生類憐みの令」


「……動物の駒を取ったら切腹?」

「武士だけじゃないぞ。動物に害をなしたら身分に関係なく打ち首だ」

「こわっ!」


 他にもキリシタン禁止、心中禁止、カルタ禁止など、この時代の禁令は数多い。


 まあ、令の数だけ駒のイラストを用意しなければならないのだが……。

 考えるだけならタダだ。

 面白いものだけ採用すればいい。


「じゃあなんか食いながら考えるか。たまにはお前もなんか作れ」


「えー」

「えーじゃない。レパートリーが増えれば時給も上がるぞ」

「作る!」

 結局金か。

「ご注文は?」


「サンドイッチ」


「なんの?」

「なんでもいい。一番自信があるのを作れ」

「りょーかい」

 瑞穂はいきなりパンをトーストし、バナナをスライスし始めた。

 そしてパンが焼き上がると、ピーナッツバターを塗りたくり、バナナを挟んで半分に切った。


「はい、バナナサンド」


「……それはお前にやる」

「やった!」

「ただしもう一つサンドイッチを作れ」

「えー」

「時給」

「はい、よろこんで!」

 瑞穂がもう一つサンドイッチを用意する間に茶を用意する。

 サンドイッチ、それもバナナなら紅茶のディンブラだろう。

 シンプルにストレートがいい。

 こうして茶の準備をしていると、


チン


「……何してる?」


「え、ヨコハマサンドだけど?」


 レンジから焼売しゅうまいを取り出し、パンに挟んで辛子をかけた。

 更にそのサンドイッチを5秒ほどレンジで温め、


「醤油はお好みでね?」


「……他にサンドイッチのレパートリーは?」

「カツサンドとかテリヤキチキンサンドとか?」

「なんでそれを作らないんだよ!」

「だって面倒臭いじゃない」


「お前が一番面倒臭いわ!」


 ……しかもヨコハマサンドが予想より美味いのがむかつく。

 どうやらアニメ『天災戦士レッドサン』に出てきたメニューらしい。

 よほどのアニメファンでなければ知らないし、よほどの物好きでなければ注文しないだろう。

 料理よりもまずこいつの性根を叩き直す方が先かもしれない。

「さて……」

 とりあえずルールを整備し、改めて一局指してみる。

「あ、この駒取れるじゃない」

「切腹だぞ」

「は? 花魁で取るんだから大丈夫でしょ」


「腹を切るのは取られた駒だ。その駒はもともとお前の駒だったろ。『局を脱するを不許』。つまり脱走者だ。一度相手に取られた武士の駒は、取り返しても持ち駒にはできない」


「……サムライこわい」

 これぞ新撰組の真骨頂。


 敵に殺される数よりも味方に殺される数のほうが多い。


「王手」

「させないわよ!」

 瑞穂の玉が後ろへ逃げた。


「くくく、相手の駒が目の前にいる時に後ろへ移動するのもアウトだ。『士道に背くまじきこと』。すなわち敵前逃亡で切腹!」


「ぎゃー!?」


 こうして新作将棋『HARAKIRI』が完成した。


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