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02-魔法って便利

雨風を凌ぐ方法だが、手元に傘があれば良いんだが無いからな。防水スプレーとかも有りだ。ただ水を撥水する理由を知っているだけでそれを実行できるだけの知識は持ち得てない。ちなみに防水スプレーは細かい粒子を付着させる。その細かい粒子が水滴のあたる体面積を減らしたように見せるのだ。水滴は細かい粒子に落ちると、水の表面張力が作用して撥水されやすくする。というものである。


「なんだかなぁ」


物を介するという手段を取ろうにも、物が落ちてない。


「魔法だな」


これまで考えてきたことを無かったことにした。物を介するという手段は頭のすみに置いておいて思考することの極地を選択した。


ザ・魔法である。


魔力切れが起きない程度で気を付けて魔法を起こすのだ。


「サーチ」


体内の魔力を感じるように、体外の魔力を感じるイメージで魔法を発動した。これは音波で探査するソナーと呼ばれるものを魔力で応用した物だ。


微弱な魔力を周囲に飛ばして物の位置を把握する。正確な位置は計れないが、おおまかに知ることが出来る。サーチに込める魔力を少しだけ増やす。


それを繰り返して、ソナーの範囲を広げていく。感度も申し分無いほどに高まってきたようだ。最初からこうすればよかった。


大きな壁のような反応がある。さらにその先にはとにかく大勢の人と思われる反応がある。きっと街だ。人の形をした魔力が何故か森のなかにあるな。何かから逃げているように、後ろから四足歩行の魔力が追いかけている。それ以外にも点々と魔力の反応が見られる。


「サーチ」


追いかけられている奴の魔力に的を絞って再びソナーを行う。すると魔力の様子と周囲の状況が分かりやすい。


魔法の力を攻撃的に使いたいし、結果論だ。


「助ける」


体の魔力を再び、巡り回らせる。魔力の循環が少し早くなり気持ち悪くなったがこれも慣れだ。時間が解決してくれるだろう。


この状態を維持して運動をすると、必要な所で魔力が体を強化してくれる。走れば速く、殴れば強くという感じで身体能力を向上させるのだ。


ソナーを頼りに向かうと「助けて」と腰が抜けて動けなくなっている少女がいた。彼女を追いかけていたのは狼のような生き物で、俺の知っているものとは何処か似ているようで違っていた。


「ひっ、やめて助けて、ごめんなさい。ごめんなさい、母さん、先に死んでごめんなさい!」

「ガルルッァ!」

「さーて、一発噛ましてやりましょう。土よ、(とげ)となれ」


魔力をごっそりと持っていかれる感覚がした。軽く噛ましてやるつもりだったのだけれど距離の離れた場所をイメージだけで変化させる魔法は、想像以上に魔力を失うらしい。この手は奇襲専用だな。


突然盛り上がった土は円錐形の刺となり、狼を腹から背中へ貫いた。複数の刺を同時に発動させた魔法は狼には対処しきれなかったようだ。避けられなくてよかった。


「・・・」

「大丈夫だったか?」

「私死んでないの?」

「大丈夫そうだな。生きているよ」

「あっ、こんなに強力な魔法が使えるなんてもしかして貴族様ですか?!でも助けていただいたのにお礼のお金なんて持ってなくて」

「気にしなくて良い。貴族じゃないからな?そこは念を押しておく。俺に感謝してくれてるならこの先にある街を案内してくれれば良いよ」

「はい!私はイルナっていいます!この先のパルマの街で案内係をしてるのでお役にたてると思います!」

「よろしくイルナ。俺は夢無 司だ。ツカサって呼んでくれ」

「分かりました。ツカサ様」

「おいおい、ツカサ様はやめてくれ。さん付けの方が有難い」


こんな年端もいかないような少女に様付けで呼ばれるのもなぁ。それに俺はそんなに偉くもないしな。誰かとの会話が成立していることに、ほっとしながらも雨に打たれ続けながら話すのは辛かったから近くの大きな木陰に移動した。


「さてと、イルナに聞きたいんだがこのウルフだっけか?コイツは何処かで買い取ってもらえるのか?」


冒険者ギルドがあるかもしれない、という体で話を聞いてみる。


「パルマの街にある冒険者ギルドなら持って帰れば素材を買い取ってくれますよ」

「よし、そこで買い取ってもらうか。問題はどうやって持って行くかってなるんだが、魔力を編んでみるか」

「魔力を、編む?」

「ああ、魔法を使えるイルナ達からしたら当たり前だろうけどね。魔力を可視化して袋状にしてみようか、と。これが結構きついんだろうなあ」

「魔法を使えるのは貴族様や教養のある人ばかりです。なのでツカサさんのように強力な魔法が使える人は、誰もが貴族なのではないのかな?と思うと思うのです!」

「・・・まあ、なんとかなるだろ」


早速魔力を編む感じで袋をイメージする。そこに腹に穴が開いたウルフをそこに入れる。そこそこの重さがあるが、担げないほどでもない。袋を一本の魔力で作った糸を紐の代用品として使用する。これで即席の魔力袋が完成した。


「す、凄いのです!これで貴族様じゃないなんて、信じられないです!」

「そんな風に言われると照れるからやめて」

「・・・」


雨が降っているので小走りで向かう。

イルナの案内で俺はとうとうパルマの街に着いた。



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