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「忠告、」
突如少年が発した言葉によって固まりかけていた空気がより一層と緊迫したものに変わった。
銃口が突きつけられている中で何か気の毒そうに頭を掻いた少年は、あまり気乗りしないような雰囲気を漂わせながら、一言ぶっきらぼうに言い放った。
「死にたくないやつは今のうちに帰れ」
この言葉が何を意味するのか。そもそもほかの解釈が必要あるのか否か。
そんな言葉のあやとりをする必要もなく、またそれを開幕の合図として、軍の後方にいるこの場の指揮をとっていると思われる軍人が叫ぶように告げた。
「撃てーーーーー!!!!!」
その瞬間、空気が焦げた。
鳴り響く数えきれない程の銃声が荒れ果てた噴水広場を埋め尽くした。一対多数の勝敗は立ち昇る砂埃で目に見えずともあきらかだった。そこにいる誰もが確信していた。
そもそも第一に、なぜここまでする必要があったのだろうか。
「お疲れ様」
聞き覚えのある声と共に、ゴリッ……と何か冷たい金属質なものが合図を挙げた指揮官の後頭部に突きつけられた。突然と突きつけられた拳銃に一瞬で指揮官の男は顔を青ざめさせた。
分かっていた。こうなることは分かってはいたのだ。しかしながら脳で考えるのと実際に肌で感じる恐怖は別物だった。
そもそも、この時代の最先端技術を取り入れた数多くの兵器を一人で相手取った化け物に、こんな豆鉄砲が束になったところで、結果など最初から手に取るように分かり切っていたのだ。
それでも、それでいても辛うじて存在する0.01%の確立にかけた正義の末路は、
「じゃあね」
パンッ!と先ほど鳴り響いた嵐とは比べ物にならないあっけなさで、その人生の幕を下ろした。完全に静まり返った中でバタッと何かが倒れる音がした。
無論、漂う火薬の臭いと数百の銃弾に蹂躙された、先ほどまでターゲットがいた場所は人がいた形跡すら残らない程に砕け散っていた。
ターゲットはその周囲を囲んでいた彼らの目を瞬時にすり抜け、一番後方に位置する司令塔の背後をとっていた。
銃弾を優に超す速さで目の前で起きた目を疑わずにはいられない出来事に、悲鳴すらあげることができない大人。そんな彼らに返り血のまみれの無邪気な笑顔と無機質な銃口を向け直す少年。
「次は--誰がいい?」
テロリストは、その端正な顔立ちからは到底想像もつかない無感情な声で聞いた。