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1 ヒーローになれなかった少年


「お前は少し『特別』なんだよ」と、まだ小さいころから叔父にはそう言い聞かせられてきた。


その子供は周りの同年代の子供達よりも年の差が十程開いているのではないかと思うくらい博学で現実的であった。


また、歳幼くも彼が周囲にまき散らす力は空想的なものだった。




彼は歳が八を迎える時には、自分はどうやっても『平凡』には成り下がれないのだろうと妥協することにした。


しかし、それでも「どうか平和に生きてくれよ」と祖父が死に際に残した言葉を決して忘れないようにしよう。その誓いを胸に抱いて生きてきた。





……いや、正確にはちょっと違う。




今の彼を見るに、少なからず『そう生きていこうと誓っていた』が正確な表現なのだろう。




歳幼いころ、車にはねられようとした子供を走ってくるトラックをぶち壊して救った時、助けた子供の親には丁寧に口先だけとはいえ頭を下げられた。



しかし、その目には映っていたのは『息子の人生を救ってくれた少年』では無く『息子の人生に恐怖を植え付けた少年』だったろうと、今となってはそう思う。



いや、むしろ助けなかったほうが良かったのではないか、といった考えすら浮かんできた。



なぜなら、命を救われて10年程度経過した今現在、その少年は『テロリストに命を救われた奇跡の幼少期をもつ少年!!』などと銘打たれてテレビやラジオetc.から逃げるような日々を送っていることだろうから。




そんな悲劇の引き金である彼が、道端に落ちている新聞紙を拾い、そんな記事に目を通しても何とも思わなくなってしまったのは、やはりそんな彼の現在の職業のことが大きいのは否定できないし、そもそも否定などする人はいないだろう。





そんな一国を脅かすちっぽけな怪物は、目を通して利用価値を失った紙束をその場で捨て去り、内心ニヤリとほくそ笑んで歩き始めた。



『あぁ、次はどんな悲劇を作ろうか』




そんな考えを何一つオカシイと思わずに周囲に染められ尽くされた彼は、深く被った迷彩柄のフードの下で今度こそ表情に出し、薄く嗤った。




--そんな歩き出した少年の背後で『何か』が蠢いた。



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