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呪文  作者: 田辺 涼
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ぼくの話

早川からの遅い情報によると、田端の事件は自殺ということで決まるらしい。確かにあの時間に一人で屋上にいたということと、彼女のリストカットの跡を考えると事件がそのように片付くのは不思議ではない。

遺書はなかったが、そのかわりに彼女の右手には花が握られていたらしい。

まるで自分自身に供えるように。


いつも一人でいる、陰気で、何を考えているのかわからない、

友達のいない、リストカッターの女が自殺した。


みんなそう思っている。



そうじゃないのを知っているのは僕だけだ。


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