第8話
ドドドドドッ
バタンッ
家に着き、勢いよく扉開けて中に入る。母の「おかえり」の声もろくに聞かずに部屋に戻り後ろでにドアを閉め、その場にしゃがみこむ。走って帰ってきたため、未だ肩で息をするほど呼吸が乱れている。
なになになになに今の。ありえないっ!あんなことさらっと言っちゃうなんて!そりゃ今まで私にこんなセリフを吐くやつなんかいっぱいいたけど。なんで?どうしてこんなにどきどきするの!?
結局この夜は咲良のセリフがリピートし、深い眠りにつくことはなかった。
「はぁ・・・。」
「なぁにそのため息。せっかくテスト終わったってのに。」
期末試験が終わり今日は球技大会。5クラス3学年対抗マッチがすさまじい迫力で繰り広げられている。今は彩のクラス(3組)の男子サッカーの応援に付き合っている。期末の結果はというと、球技大会後に出るため今どんなに憂いても仕方がない。まぁ、それなりの努力はしたし?元々優秀な私ですもの。あれだけしたのだから結果は当然よね・・・・とは充分わかっているのだが、目下の悩みはそんなことではない。
あの夜・・・咲良が一緒に帰った夜のことをよくよく考えてみたのだ。勉強の合間も、お風呂に入っているときも、試験中でさえたびたび頭に登場したあの一言。
俺、そっちのが好きだな。
俺、・・・・・・・・・・好きだな。
・・・・・・・・・・・・・・好き・・・・。
「好き」って言ったよね!!??あの人、私のこと好きって!!!!咲良は・・・・私のことが好きなの?本当に?学校のアイドルが?私を?・・・・・・好きなのね!!!???
咲良の何気ない一言に動揺し、混乱した頭ではもはや正常な考え方はできなくなっている。
またモテルと言っても誰とも付き合ったことのない香奈には、色恋沙汰に免疫がなく、悩みが解決に向かうことはなかった。
――そういえば咲良から視線を感じることが度々あったけど、やっぱり気のせいじゃなかったんだわ!どどどどうしよ。やば、顔が熱くなってきちゃった。でもでも、あいつは私から学園アイドルの座を奪ったにっくき男!簡単に心を許すわけにはいかないわ。そうよ!
惚れたふりして近寄って、豪快に振ってやるわ!ふつふつと笑いがこみ上げてくる。それにしても咲良が私のことが好きだなんて。良い様ね。みてなさい、咲良優。私を怒らせたことと、私に惚れたことを後悔するといいわ。