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NO.1はいつも君  作者: PINE
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第4話

咲良優side

「おい、さっき市居さん来てたぞ。」


「見た見た。やっぱ可愛いよな。」


部活が終わり、水場で顔を洗う。ここには男しかいないからみんな好き放題に、半裸で体の熱を冷ましている。何人かは水を掛けあいふざけながら、さきほど道場を覗いていたらしい市居さんの話で持ちきりだ。


市居さんは、今年の新入生の中でも特に可愛いということで有名である。賢くて弓道をしている姿も凛々しく素敵だということで同級生はもちろん、上級生の男たちにも憧れの的なんだそうだ。市居さんを知らない男なんて、おそらくこの学校にはいないのだろう。もちろん、俺も知っている。入学試験では彼女が2位だったらしい。いつも笑顔で自信に充ち溢れた姿は確かに魅力的だ。


――入学して2カ月。市居さんに告白して玉砕した男は数知れず。たまに他校の生徒からも告白されているという噂を聞いた。


「おい、さっきの手合わせのとき来てたみてぇだけど、お前のこと見てたんじゃねぇの?」


「いやいやいや。俺かもよ?」


水場できゃっきゃっとはしゃぐ先輩たちの間ではこのような不毛な話が繰り広げられている。


「いや、どう考えても優を見てたでしょ。視線の先を辿るとさぁ。」


「それにしては険しい顔してたよな。こう、長年の宿敵に対する感じみたいな。」


そう話しているのは佐伯(さえき) (あゆむ)益田(ますだ) 伊月(いつき)。同級生の友人達だ。先輩たちに聞こえないように小声で話をしている。市居さん談議を始めたこの2人は、部活もクラスも同じでよく共に行動している。何でも明け透けに話してくれる(時に余計なことも多いが)2人は付き合いやすく、面白いやつ等だ。特に歩と伊月は高校で初めて会ったとは思えないほど息がぴったり合っていて二人のやりとりを見ているだけで楽しい。


「市居さんも優のことかっこいいとか思ってんのかなぁ」


佐伯がぽつりと言い、いきなり話の矛先が自分に向かってくる。


「いや、それは・・・」


市居さんと俺とは接点はない。クラスも部活も違う。ただ、お互い顔と名前を知っていると思う。知ってる・・・かな。知ってる・・・よね。


「あー!くそ、こんな剣道以外なさけねぇ奴がモテるのが気にいらねぇ!」


伊月ががしがしと頭をかきながら叫ぶ。モテてなんか・・・。だからちょっと声を抑えてほしい。顔みしり(たぶん)なだけなのに好かれるはずがない。・・・確かに何人から告白されたことはあるけど・・・。


うーん。なんというか、自分の顔が整っていると言われれば、不細工ではないとは思うが・・・。自分ではよくわからないが、いい加減わかれと歩や伊月にはよく言われるし。格好良いと言われることも・・・たまに・・・たまにね?・・・あるし。でも市居さんは、人を外見なんかで判断しない気がする。何となく…なんだけどね。


「もっと優が男らしかったら諦めつくのになぁ。」


「「はぁ・・・」」


「・・・・・・・・。」


佐伯と益田は俺を見ながら同時にため息をつく。俺だって思うよ。もっと堂々として心も強くありたいって。・・・ふと市居さんを思い出してみる。学年の男子から圧倒的な人気があるのだが、決しておごらず凛としている。告白するのは命知らずの男ばかりだ。(益田談)


うん、たしかに市居さんってきれいだけど気安く話しかけちゃいけない気がする。可愛いし、きれいだし、頭いいし、おとなしそうだけど、芯はしっかりしてそうというか、堂々としてるというか。あこがれるよなぁ・・・。俺はなんだかんだ周り気にしちゃうもんなぁ・・・


はぁ・・・ため息とともに梅雨明けの生暖かい風が吹き、止まったはずの汗が流れてくる。


「帰ろ・・・。」



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