第13話
「あ~疲れたぁ。」
長時間乗っていたバスを降りて伸びをする。街中から緑豊かな県道沿いをずっと行き、山道をぐるぐると回ってようやく到着した。建物など、目の前の合宿所しかないこの場所は、見渡す限り緑、緑、緑。都会とは違う、透き通った空気を胸いっぱいに吸って深呼吸をすると、疲れが吹き飛ぶ気がしてくるから不思議だ。彩はバスの中でも終始騒がしく、途中で相手をしなくなってもしつこく話を続けていた。
「そりゃあれだけしゃべれば疲れるわよ。聞いてるこっちだってぐったりなんだから。」
言いつつ荷物を降ろし、未だ体をほぐす体操をしている彩を置いて合宿所に向かう。それを見て彩もあわてて荷物を掴んで追いかけてきた。
合宿所の入口までやって来ると、玄関に『夜宮高校 女子弓道部 様』と書いてある札がおいてある。そこには他にも札がずらりと並んでおり、合宿に来ているのは自分達だけではないことが伺える。
「あっっ!!」
どの学校が来ているかなど特に興味がなく、ドアを押し中に入ろうとしたところで彩が大きな声を上げる。一体に何を見つけたのか、中途半端に開いたドアを戻して彩に向き直る。
「香奈、これ・・・」
「何?どうしたの?」
彩が指さした札を見ると、その先には『夜宮高校 男子剣道部 様』の文字がある。
女子G「やったぁ!剣道部が来てるじゃないの!」
女子H「きゃあ!咲良君がいるのね!」
女子I「練習見に行っちゃおっと!!」
それに気づいた部員がきゃっきゃと騒ぎ出す。先輩も同じように。最悪だ。剣道部ってことは、きっとあいつも来ている。会いたくなんかないのに。ちらりと彩を見ると、ほかの女子と同様に喜んでいる。
期末試験の結果が出て、また私の負けだった。敵である咲良当人は試験結果などちっとも気にしておらず、おまけに球技大会の練習に励んでいたという。・・・・・・そこがまた憎たらしい。
腹立たしさのあまりについ本人に本音が出てしまったのには教室の席に着いたあとに猛烈に後悔した。にこにこして、油断させる作戦が一気にパァだ。その日は一日中立ち直ることはなく、気を使ったクラスメイトがいつもみたいにしきりに話しかけてくることはなかった。
――ただ、彩だけは香奈の醜態をどこからか聞きつけ大笑いしに来たのだった。
この後も終業式まで咲良と顔を合わすのが気まずく、普段からそんなに会うわけでもないのだけれど、意図的に避けていた。
夏休み。ようやく心を揺さぶられずに過ごせると思ったのに・・・
始まって僅か1週間足らずで地雷の当本人である咲良を考えずにはいられない状況下で過ごすことになるのであった。




