第六回:5代目ギャランΣ・デューク(HT)
型番ではなくて商品名というのも珍しいが、本連載で初めて取り上げるFF車である上に三菱の車である。
この型の5ナンバーサイズの乗用車やタクシーなら今でも比較的よく見るが、唯一の3ナンバーモデルであるこの車はあまり知られてないのではなかろうか。
実は、実物のF40やガヤルドのようなスーパーカーに何度も遭遇している筆者ですら、この車は3度しか目撃した事がない。しかも近所のコンビニの駐車場に止まっていた同じ車だった。
ネットでさえ情報が極端に少ない絶滅危惧種のような車だが、語れる範疇で徒然と綴りたい。
早い話が、3ナンバー車の自動車税緩和というひょんな所から偶然造られた、ディアマンテへと至るFF高級セダンの走りである。
車体の大型化に伴う弊害か功名か、全体の雰囲気は残しつつも、細かい違いで、このデュークは他の5ナンバー車のΣとは大きく趣を違えた車だと思う。
まず、フロントグリルの大型化。そしてヘッドライトの中の大きなフォグランプの所為で、かなり奇妙な顔付きになっている。
リアデザインも変わっている方である。ナンバープレートの両側に縦に並んだ横長の尾灯とウインカーランプ。リアバンパーに横に長い四角のバックアップランプが2つ装着されている。フェンダーがないリアタイヤ周りも何となくアメ車を彷彿とさせる。
一番変なのは、これはこの型式のギャランΣ全てに言える事だが、内側のドアノブがドアではなく、ドアの膝掛けに上へ引っ張って開ける形で取り付けられている所だろうか……。
後、デュークの場合、太い1本スポークステアリングホイールの形も、ウインカーやライト、ワイパーの操作もレバーでなくボタンとダイヤルで操作するユニットも風変わりなデザインである。実に妙な部分で破天荒な車だが、そこが三菱らしくて良い。
技術的には未熟で成功には程遠かった面もあったかもしれないが、その後の高級車のFFモデルの興隆ぶりを見るに、その足跡は無駄ではなかったと思う。
この車もホイールを留めるハブが4本のタイプではあるが、元が元だから特に気にはならない。
ただ、資産的な希少価値が乏しい割にマイナーで数が少なく、何時絶滅してしまうか判らない。それだけが筆者の心掛かりである。