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第四十三回:TA1、TA2、TA3

 もうだいぶ前になるが、久々に懐かしい単語を耳にした。


 ホンダが将来のフィットの派生車種として計画が様々な自動車関連のメディアで紹介されていた『クラブデッキ』である。


 クラブデッキとはなんぞや?と問われると筆者は答えに窮する。というのもこの単語は本田技研でしか使われていない謎用語の一つだからである。

 まあ単にセダンとかクーペとかと同じような車型のカテゴリーを表す区分語ではあるのだが、どう考えてもステーションワゴンにしか見えないそれをホンダは頑なに違うと首を横に振り続けている。早い話がミニバンと掛け合わせたやや背高のステーションワゴン、それがクラブデッキである。


 クラブデッキという呼称が最初に出現したのは1999年のことである。この年、本田技研は4輪車の新車発売において初めてこの新しいカテゴリーに該当するのを発表した。ホンダ・アヴァンシア(TA1/2/3)である。


 2.3L直4と3LV6のVTECエンジンを搭載し、ホンダ車らしくFFとFFベースの4WD駆動、そして中から後期型にかけてラインナップされたヌーベルバーグを含め6種位のグレードが用意された。

 外観はぶっちゃけるとどう見てもステーションワゴンである。強いて他のステーションワゴンの形を取る他車との差異を見出すなら、ルーフの後ろ半分側が酷く落ち込んでいて少しお尻が出っ張っている。まるでトランクをぶった切ってドア後ろの三角窓を何倍にも拡張したセダンのようなスタイリングともいようか。セダンを意識したのは間違いないようで、荷室に接するリアシートヘッドレスト部とリアドアの窓の下部の間に、キャビンから中の物が見えないように半可動式の仕切り板が標準で備え付けてある。だから、2.5ボックスとか5ドアセダン等といったカテゴリーに近いかもしれない。ホンダ自身は4ドアクラブデッキだと言い張っている。


 カテゴライズとしてのクラブデッキはこの車が初めてではあるが、元々はアコード・クラブデッキとしてアコードセダンを後部背高バンにして変則的な構造にしたグレードが元祖として実験的に用意されていた。それから約12年後に、ワゴンとミニバンの中間位の新しい高級車のタイプとして満を持してホンダは登場させたのである。


 アヴァンシアの外観の一番の特徴は、前述したように居住性や積載性より空力性能や優美さを優先した、前が高く後部へ向かってやや急な傾斜が続く屋根とそのまま落ち込むCピラーからストンと落ちる後部ドアとリアバンパーの連綿とした車体上部の流線型構造だろう。それだけならホンダに限らず古今東西のスポーツ系のワゴン車には取り入れられているデザインである。

 しかしながら、アヴァンシアもといクラブデッキが他のワゴン車と一線を画すのはその車高の高さである。オーバートップを1550mm、最低車高も13cmまで落としキャビンの高さを嵩上げすることで、後部席の頭上空間を若干でもゆとりを造った。

 さらに当時からホンダが得意にしていた、通常後部席後ろにある燃料タンクを車内の床下へ配置する独自構造とセダン特有の背もたれをやや水平に下げ、ミニバン特有の膝面を上げて持ち上げるようなシート構造の掛け合わせを行うことで足元にも余裕をつくり出した。

 そうした工夫の末、スポーツワゴンのようなデザインの割には、随分むっくりと膨らんだような胴体をしている。そこに省スペースエンジンのFF車の構造特有のオーバーハングもノーズも短い端正な顔を着けることで上手くバランスを取っている。


 車内に目を向けるなら、まず目に飛び込むのがセンターコンソールの大きな木目調パネルと、その上のメーターと続きで絶壁型のフード内に収まったカーナビモニターとエアコンの送風口、そしてセンターコンソールに堂々鎮座するシフトチェンジャーだろう。こうして機器類や操作レバーをまとめて真ん中上部へ配置することで、FF車のドライブシャフト要らずという利点を最大限に活用している。即ち、ホンダのミニバンの代表格なオデッセイやステップワゴンのように前部座席と後部座席の間が通り抜けられるような構造になっているのである。

 勿論、もっと背が高くゆとりあるバンと違い、その辺のセダンやワゴン車と同程度の高さしかないアヴァンシアの場合、背を屈まないといけない窮屈なものではあるのだが、同時に同格の高級セダンやスポーツワゴンに対しての大きなアドバンテージにもなっている。

 セダンやスポーツワゴンのように低い車に乗りたいけど前席と後席で気楽に入れ替われるようなちょっとした利便性が欲しい層にはドンピシャで需要を満たした乗用車なのである。実際、この点と3Lエンジンとゆとりある車内空間が織りなす快適なドライビング性能は各種メディアで高く評価された。


 残念ながら、所詮不人気でマイナーなモデルとして終始したアヴァンシアは、結局前期中期後期×2モデルのエンジンや細かなオプションを別にして6種類造られたが、2003年に1代限りで生産を終了した。以後、現在までクラブデッキは生産される気配もなくクラブデッキの魅力に取り憑かれたオーナーの多くは未だにアヴァンシアを使うことを半ば強いられている。人気や格好良さだけが車の魅力では無いことを筆者はこの車が走る姿を目にする度に思う。


 某誌で現行フィットの他チャンネル化拡大計画の一つにクラブデッキが挙げられたと報じた飛ばし記事を見た時は正直来たか!と嬉しかったが、ここ最近のタカタ製エアバックの欠陥問題やホンダ・フィットの度重なるリコールとだぶついた在庫騒動の一連の流れを見るに、どうやらここ2、3年度中でのクラブデッキ復活はなさそうである。


 中途半端と言えば確かにその通りかも知れないが、車好きとしては日本版ミニシューティングブレークとしてまたクラブデッキを、できればミドルアッパー級の高級車として、売りだして欲しい。そして同時に、それはできれば今の惨状のホンダではなければとも願う。


 高級セダンとは少し外れるかも知れないが、派生して進歩した一つの形として例外を取り上げた。

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