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第三十二回:W211

 W210、W211、W212と続いている最近20年弱に渡るメルセデスのEクラスの中で筆者が一番好きなモデルであり、且つメルセデスの歴史にも大きな痕跡を残したと個人的に思えるモデルでもある。

 というのも、このW211になって始めて、SUVを除く全クラスの車種に於いてメルセデスのブランドデザインの統一化、その中心的な位置付けになったと筆者が勝手に考えているからだ。まあ、一種の妄言と捉えられても仕方がないだろう。実際、W211はそういう方面で専門家らに語られる機会は筆者が知る限り殆どない。


 しかしながら半ば客観的、もしくは筆者の主観的な見地から、Eクラスを始めとしたAからSまでの◯Lクラス等も含めた、当時のメルセデスの販売していた殆ど全ての車の顔つきやテールライトのレンズ等のデザインが概ねそっくりであった、というのもまた事実なのである。

 勿論、以前からメルセデスのモデルは少しずつであるものの、伝統的なデザインを踏襲しつつも各個バラバラに派生したモデルの全体的なイメージを統括する為に、代を重ねる度に少しずつ色々な変革を加えてきた。が、兎も角90年代末から2000年代初頭、W211の時代に一気にそれを成し遂げた。筆者はメルセデスに対してそんな印象を持っている。


 特に、この時代は筆者にとって少々混乱させられる時代であった。この自他共に車ヲタである事を認める筆者が、何とまあ奇妙な事に登場当初のEクラス(W211)、Cクラス(W203)そしてSクラス(W220)を、遠目からは全くと言っても過言ではないレベルで見分けが付かなかったからである。マニアから見れば詳細にその形状の違いが判るものの素人目には区別が難しいヘッドライトユニットやテールライトのデザインとランプ配置、ドア型や車体の大きさに差があるものの同じにしか見えない全体のフォルム。正直言って、現在でもW220やW203が道路を走っているのを見ると、一体どれだろうかと数瞬思考してしまう。

 それはまるで、原型を留めていない改造車の元ネタを類推するのと少し似ている。ジャンルが被り易い車種を多く抱くブランドで統一デザインだなんて思想を安易に持ち込むとどうなるか、メルセデスはその弊害の片鱗を少なくとも筆者には教えてくれた。他は知らない。現時点では特に日本車等のこの手の思想に出遅れがちになったメーカーには訓戒が活かされていないように筆者は感じる。


 さて、閑話休題。

 だがしかし、である。出現した年代別に考えると、W203、W211、W220の3車種に於いて一番早いのはW220、次いでW203、一番最後に今回のW211である。

 なら切っ掛けはW220だろう!読者諸氏はそう思われるかも知れない。断じてW211を中心に据えて話を進めるのはおかしい、と。確かにそうだ。先陣を切ったのはSクラスで相違ない。

 しかしながら、だ。一番最後まで登場が待たされたからこそ、メルセデスが達しようとした境地に一番近い秘蔵っ子はEクラスではなかったのか?と筆者は思えてならないのである。メルセデスはこの次の代、現行に変わってから全体の雰囲気は似たようなものを纏わせつつ全く違うデザインを各車種に与えるという方向へデザインの思想を転換してしまったので、今となっては筆者の心の中の仮定を証明する術は全然無い。だから戯言と捉えられても仕方ないとは思う。


 W211は不思議な車である。Sクラスよりも曲線を意識したやや豊艶なボディーをしてコンパクトに端正に作り込まれている所為かメルセデス特有の悪い意味で威圧感のある厭らしさもなく、そうかといってCクラス以下のような名ばかりの安っぽさもない。どこまでも冷徹なまでに機能的で、それでいてスポーティーで熱烈な雰囲気をその身に纏っている。まさに本来の名の通りエントリークラスとして相応しいメルセデスであると筆者は思う。正直欧州のみならず、日本でも法人や個人のタクシーとして外国車の割に多く使われている事も納得できる。

 特に筆者がメルセデスを肩入れする理由は、ハザードランプのスイッチとか、安全に運転をするという事に関して日常的に使用する頻度の多いボタン類の割に、メーカーや年式、車種によって大きくその配置場所や操作方法にばらつきのあるスイッチ類の場所が、比較的に分かり易い場所に、目立つように、且つ操作しやすい位置にセットされているからだ。

 これは、書くまでもないことだろうが、実は非常に重要な事である。飛行機等と異なり、一つ免許を保持していれば該当するカテゴリーなら全ての自動車を運転できる四輪や二輪において、他の車とスイッチの場所や形状が違う、または操作方法も普通ではない判り難い車は、ドライバーに不慣れという不測な事態を催し、そこに起因する不注意から結局大きな事故を誘発させる危険性が高い。そんな個性的な車だって筆者は嫌いではないが、出来れば初めて運転する時でも比較的安全に気楽にドライブ出来る普通な車が好ましい。


 そういう訳で、運転者に使い易いようにと様々な配慮が節々になされているのがよく判る、メルセデスの車が筆者は好きである。いちいちスイッチの場所を探したり操作方法に首を捻る必要がないからだ。

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