表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/44

第三十一回:C35

 長かったローレルの歴史に終止符の打たれた最後のモデルであると共に、筆者にとっては史上最高のローレルとして、未だに所有したいという憧れを抱いているモデルの1つである。


 先代のC34から大きく方向転換し、スポーツ色の強いモデルになった。それだけでなく、それまではどういう基準で分かれているのか今一つ判らなかったメダリストとクラブ・Sに明確な区別が付けられた車でもある。特にフロントのライト周りでその区別が素人でも簡単につくローレルはこのC35だけではなかろうか?

 大まかに分類をすれば、前期後期型共に、バンパーにウインカーとフロントフォグが横に並んで付いているスタイルを貫いているスポーティーな面構えの車がクラブS、前期型は横長のウインカーがバンパーに付いていたのが後期型ではフロントフォグに置き換わり、ウインカーがヘッドライトの車幅灯があった場所へ移ったプレミアムな雰囲気の車がメダリストである。それぞれの前後期の区別は共通部品のテールランプのデザインで判断出来る。いわば同じ日産車のセドリックやグロリアのように、ローレル・メダリストとローレル・クラブSという同じ車がベースの別々の姉妹車種と言っても過言ではない程、両者の外観は差別化を図られているのだ。

 これは短いようで長いローレルの歴史上珍しい、というより初めてな事だった。それが単に前面のヘッドライトのデザインとウインカーとフォグランプの配置、そしてグリルの網の質感と模様を変えた小手先程度の物で、依然として全体のフォルムや顔から後ろの形状は全く一緒だったにせよである。


 C35の一番の特徴は、恐らくはその内装に使われているコクピット周りのインパネのデザインだろう。それまでの、例えば34や32のように、スカイラインとかセフィーロやセドグロと共通の物をそのままぶち込むというやっつけ仕事ではなく、C35には独特な形をした専用のダッシュボードパネルが与えられている。

 それは、下8分の7の土台とエアコンの送風口がある残りの上部でくっきりとした二段構造をした。比較的なだらかな丘陵のような土台部の上に切り立ち過ぎて前のめりにそそり立ってしまった絶壁が上手い具合に縫合されたような形をしている。

 角々しさと滑らかさという感じで、明らかに異質な形状線を持つ立体同士を上下に併せて半融合させて一つの部品として製造したダッシュボードパネルの採用車は、V35以後のスカイラインやその他今世紀から登場した日産車にぼちぼち見られる物だ。が、前世紀の、それもルノーの影響力がまだ無かった頃のモデルでは、多分C35が初めての例ではなかろうか?筆者はそんな風に考えている。

 と同時に、車体側面、ドアを跨いで前後のホイールフェンダー間及び両オーバーハングに針金か何か極細の彫刻刀のような物で溝を掘ったかの如しサイドラインがスッと引かれている。Y33系やB15型サニー等、90年代末頃の日産車の特徴として多く見られるドア枠下の一本線を見る事が出来るのも、C35の顕著な特色である。


 そういう見地から鑑みると、モデルの変遷という時期的な符合から考察してもC35型ローレルは、それこそ爬虫類と鳥類の橋渡し的な存在だった始祖鳥等と同様。旧来の前世紀末までの日産車と、新世紀に入って経営環境も変わった新生のそれとを1本の糸として撚り合わせる過渡期のモデルの1台として考える事も出来る。そう筆者は思うのである。


 そんな風に考察を広げれば、ローレルとセフィーロという2台の兄弟車が、一度セフィーロの中にマキシマを巻き込んだ後融合し、ティアナという1台の車として結実したという過程に、何となくとは云えども筆者は何処か壮大なドラマを慮らずにはいられない。そう。たとえ我々外野からは突然の出来事と思われても、全ての事象はドミノ倒しのドミノのように、連綿とした関連性を以て連鎖していた可能性も否定出来ない。


 兎にも角にも、高級車好きの筆者の食指を大いに動かす事から、C35は筆者の一番のお気に入りの車種である。筆者でなくとも、現代風なデザインを醸しながら現在では失われてしまっている角ばったボディーが放つ威風堂々したスタイルを支持しているファンは少なくないのではあるまいか?

 そう、やはり車は多少四角い方が良い。そんな風に考えつつ、今日も頭の中でキャラクター達の傍にC35を添えてみるのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ