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第十四回:ディアマンテ

 先に紹介したギャランΣ・デュークの血を色濃く引く、三菱の中で2番目に高かったランクの車である。日本車に於いて、特にFFの、しかも4WDの高級車の先陣を切っていた三菱の代表車種として、名前さえ知らない人を探すのは難しいと思われるモデルであろう。


 バブルへ向けたビッグウェーブに運良く乗り込み、当時三菱グループのおまけのような存在だった三菱自動車が、広島の1企業に過ぎなかったマツダと同じように、高級モデルを製造したり海外へ進出したりする事で、トヨタ・日産・ホンダのような御三家と肩を並べむとした時代にその生を受けた。言わば三菱の申し子、それが初代、及び2代目のディアマンテであった。

 その内装はバブルらしく豪勢を極め……、と言えば聞こえは良いだろう。が、2代目は兎も角、初代に関して言えば筆者はそうとは思えない。


 確かに初代の内装パネルにも濃い木目調の渋い物が使われているし、内装も黒の革張りと見かけだけは立派だが、どうもトヨタとか日産、海外ならメルセデスやキャデラックの演出するそれとは大分趣向が異なるのである。垢抜けない、というのとは違う。何となく、あくまで当時の今様な高級車の雰囲気を理解せずに造形したような……。強いて言えば往々にしてセンスが古臭い上に安っぽいのである。

 生きた化石と揶揄された車を20年以上製造し続けるという三菱自動車の高級車史における不甲斐ない黒歴史を一片でも知っていると、何となくその事情も察せられてしまう所が悲しい。外観があの頃のBMWの3シリーズか7シリーズに似たような造形をしていた事も、余計にそんな感想を抱かせるのだろう。


 ただ、そういう所に目を瞑れば、このBMWとそっくりなギャラン達は、中々にスタイリッシュな車だと、今見ても思う。

 特に、2代目中期の端正な佇まいは、前から見ても後ろから見ても文句なく格好良い。それまでのゴチャゴチャしたテールランプ類を、縦に並べた大きな円弧系のテールライトと下に置いてクリア処理したハザードランプ、そしてナンバープレート両脇に取り付けたバックライトというシンプルな構成に変えた事で、見事に質感を向上させた。

 まあその実態は、150マジェやY33セドグロが採用していた当時の流行に単純に追従した、という所が本当の所だろうが、見事に瓢箪から駒が出た。


 結局のところ、無茶な海外進出とバブル崩壊の負い風を食らって、ディアマンテはたった10年かそこらでその歴史をギャランとランサーに託し、2代目後期型さえ日本国では発売されぬまま、呆気無くその生涯を終える事となる。

 プラウディア、デボネアといったフラッグシップモデルさえ失ってしまった事と、その後今日における韓国勢の調子付かせる切っ掛けを見事に与えて日本勢に打撃を与えた、という意味で、マツダと同じ様に三菱の罪は重い。


 話を変えよう。

 三菱がディアマンテに与えた心臓部のラインナップで、筆者としては不可思議な事がある。

 当時、まだ280PS規制のまっただ中、同クラス他社のマーク兄弟やセドグロのように、あの排気量における高級セダンの中でもターボ信仰が根強かった折り、どうして三菱はディアマンテにターボエンジンを授けなかったのか?

 確かに、V6エンジンを乗せたFF車でターボチャージャー搭載機などあまり耳にした事はないが、J30ではそんなグレードが存在した筈だし、同じ三菱の下位階級車に当たるギャランでは2.5Lとは云えV6ターボエンジンを搭載する車種がある。

 第一、あの頃には超重量級高性能スポーツカーでスカイラインGT-Rと覇権を争っていたGTOというのが居た。筆者の記憶に偽りがなければ、GTOとディアマンテの原動機周りのレイアウトはAWDシステム以外共通化していた上に、エンジンも形式上は同一の物が搭載されていたと思う。

 今現在もだが、幼き頃からディアマンテが走るのを見る度に、GTOのツインターボエンジンを抜いてディアマンテに載せ換えたら最強ではないか?などと考えた事は1度や2度ではない。幅広の3ナンバー車同士、マウント周辺の容量の所為でターボチャージャーを装着出来ないという訳でもなかろう。コンパクトなエンジンを横向きに取り付けるのだから。

 ついでにAWDであれば、それでこそ三菱車である。やはりランサー・エボリューションという『神』が居る以上、四駆・4ドア・ターボの3点セットは切ろうと思っても切り離せない大切な物だ、と筆者は思うのである。


 文字通りディアマンテの進化系としてそういうのが出ていれば、市場の評価もそれなりに変わっていただろうに、と考えるとこの車を見かける度に筆者は少し切なくなる。まあ、もっともあの頃は三菱ふそう社製の大型ダンプトラックのハブが断裂事故を起こし、脱輪したタイヤが通りすがりの母子を直撃し、そこから三菱車全体にリコールが派生して三菱自動車に対する世間の風当たりが物凄く悪くなった時期である。筆者の記憶が確かなら、そのリコール車種リストの中にディアマンテも埋もれずに記載されていた。どの道どう転んでもカタログ落ちや製造販売中止は免れない事だったのかもしれない。


 ただ、今この世に三菱・ディアマンテのネームが三菱車の中で復古したら、一体どんな車が出てくるのか?と云う事には非常に興味がある。最新3シリーズや5シリーズを模造するのか?それとも現代自動車のソナタのエンジン載せ換えOEM車となるのか?はたまたギャランと同じくランエボ等と同一のエクステリアを与えた上位車種として復活するのか?(※少なくとも筆者は現行日産・フーガのOEMでの復活は噂の出た当初から今日まで、限りなくその可能性は有り得ないと考えている、と追記しておく。何故かって?それはあなた……。これから同じ会社の中でシーマ、フーガ、下手するとインフィニティQ45やプレジデントまで参戦してY51同士で共食いをおっぱじめるような状況で、余所者弱小のディアマンテがそこへ参戦する余地を日産が許容するだろうか?考えるまでもない。)

 考えてみた所で妄想の域は絶対に出ない訳だが、そんな『if』な出来事を仮想してみる。これもまた楽しからんと感じるのである。

 ……と、言うのも今三菱は、安価な電気自動車の開発普及と共に、昔廃した名前を新車のそれに復帰させる動きが年々追う毎に活発化しているからである。昨年にはRV型ミニバンの『RVR』が、今年に入ってからは早速コンパクトカーに『ミラージュ』が、それぞれラインナップに再登場している。古い例では『コルト』というのも有る。

 だからディアマンテ復活も強ち有り得なくはない、最近よく思う筆者なのである。


 ただ、ヨーロッパの工場を閉鎖して現地法人の人員削減に踏み切る等、年明け早々不穏な噂が聞こえてくるから、この海練が萎んでしまうという懸念がある。結局、妄想は妄想でしかないのかもしれない。

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