第一回：BNR32、R32
言わずと知れた、日産・スカイラインの8代目モデルである。初めてスカイラインのモデルに3ナンバー車が登場しただけでなく、ケンメリを最後に途絶えていたGT-Rが復活し、今日まで長らえた発端を拵えた、まさに転換期の自動車である。
さて、名車と呼ぶに相応しいこのR32型GT-Rだが、筆者が車好きになる切っ掛けを与えてくれたモデルなので、思い入れも人一倍ある車だ。21世紀に入って10年を優に過ぎた今日でも最新の車と然程遜色ない凛々しい面構えは何時見ても心を踊らせる。いつか愛車として保有したいものだ。
ただ、この車。スペックがどうのこうの以前に、筆者には手が出しにくい部分がある。内装……、特にライト等のスイッチ群だ。
詳しくは読者個人で目の前の機械を利用し検索して貰う事にして、実際にR32のコクピットを目の当たりにすると、その異様な佇まいに目が点になる筈だ。
まず、ウインカーやワイパーのレバースイッチ。通常これらはステアリングコラムの両側に取り付けられている物だが、R32の場合はダッシュボードのメーターフードの両下端に直接固定されている。
そして、そのメーターパネルのカバーにはハザードランプの作動スイッチなど、その他のボタン類も装着されている。多少車に見慣れている者なら異口同音に異様だと叫びそうな、エキストリックな雰囲気を醸し出している。
このスイッチ類の配置を、筆者はこのR32と、同時期のZ32しか知らない。当時の日産技術部や開発部、デザイナー達がどういう境地でこの機構をこの2車種へ投入したのか定かではないが、そう言う意味でも貴重な車と断言しても過言ではない。
R32に於いて特筆すべき事はもう一つ、事実上スカイラインを冠する4ドア車として最後のハードトップとなってしまった事である。
R33以降、GT-Rやクーペを除いて、4ドア車でスカイラインのハードトップは現在まで生産されていない。もしかすると、今後製造される可能性があるかもしれないが、サイドからの衝撃に弱いというハードトップ車の特性上、その望みは限り無く0に近いと言っても過言ではないだろう。
ただ、GT-Rとクーペに於いては現在もBピラーのあるハードトップ
ド車が造られている上に、メルセデスやVWの一部車種に4ドアクーペという名称でハードトップドのセダンが再び生産されつつある。
日産がルノーの下でメルセデスとも結びつこうとしている今、スカイラインの4ドアハードトップがその復活を遂げる日も有り得れる。
少なくとも、筆者はそんな夢を見てみたい。
