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【第十九限】 マスター、止めてください

「・・・・・・・・・・」


窓から差す日光が眩しい。

・・・・嗚呼、再び来てしまったかこの空間に。

さっきから瞼の裏に懐かしき家族との思い出やら友人とつるんだ日々が浮かんだりしてたが、そうか。

俺はたった1時間とちょっとの間に3回も失神したんだな。それも今回はほぼ瀕死・・・・

ソーマトーってやつだろ? 知ってるさ爺ちゃん・・・・はっ!? 今見えてはいけない爺ちゃんが見えた希ガス・・・・


実は見ず知らずだった目のどす黒い爺ちゃんの仲間になったのか否か。

周囲を見渡すとただ白い。この感じ・・・・間違い無い、例のぶっ壊れ保健室だ。生きてたな・・・・。

イケナイ空間だとわかっているのに何故か安心感・・・・

背中には未だ痛みが若干残る。あれは背後からの攻撃だったのか・・・・?

まさか先生が俺を止めようとしたはいいけど加減を大幅にミス・・・・


「すぅ・・・・・・・・すぅ・・・・・・」


らないな。こんな幸せそうな顔して寝てんだもん。ないない。


あれ? ・・・・もしや看病しててくれたのだろうか、今まで。

それはなんか・・・・申し訳ないことをした、とでも言うべきだろうか?

いきなり『災獣』は来るわ美少女蠍は来るわ一人で『UNKNOWN』と戦うハメになるわ、オマケにそれが済んだら学級戦争だわ。よほど肉体的にも精神的にも疲れていることだろう。

その上で看病してくれていたわけだ。そりゃ眠たくもなるでしょうよ。

とりあえず、コレだけは心の底から言える。


「・・・・ありがとうございます・・・・」


「・・・・むにゃぁ・・・・気にすることは・・・・ないので・・・・すぅ」


あまりにも自然な会話になっちゃう感じの寝言に内心驚きつつも、自分の顔が少しだけ緩んだ感じがした。寝顔が可愛くてつい頭とか撫でてみちゃったりしてみたが、俺は決してロリコンじゃない。


・・・・またしばしの静寂が訪れる。

あ・・・・今何時だろう。今日はあいつら・・・・と定例会があるんだが・・・・

なんせ此処の時計・・・・読めない。

いや、読めないというか・・・・わからない。

時計そのものはあるんだ。針も普通に動いてるんだ。でも数字の代わりにレリーフ調の怪物が配置されていて「何時か」わからない・・・・

これが人間の世界の時計と同じ読み方でいいのなら今はおよそ11時半。HR終わってら・・・・

ああ、だから先生が居るわけか。じゃあ同じ読み方でいい・・・・ことにしておこう。

定例会は12時からだから・・・・そろそろ出たいところか。

あれ? でもここと向こうじゃ時差があるから今向こうは・・・・あれ?

もういいや、遅れたら遅れたで。考えんの面倒だし、あいつら時間にルーズだからどうせ遅れてくるだろうということで。

メールの一本でも入れておこうかとも思ったが、当然の如く圏外だった。残念。


「あらぁ? お目覚めかしらぁ~」


ケータイを眺めながら小さく溜め息を吐いた時、耳に付く声がした。


「ああ、えーと・・・・保健室の先生」


「そういえば自己紹介がまだだったわねぇ。でも教諭でいいわぁ」


じゃあいいや。


「そんなことより背中は大丈夫ぅ? 痛くな~い?」


「あ、はい! おかげさまでとても痛いです」


「・・・・それじゃあ私が痛めつけたみたいじゃな~い」


「え!? 真犯人は実は教諭だったんですか!? 背後からなんて卑怯じゃないですかッ!!」


「あははは・・・・(頭も打ってたのかしらぁ・・・・)」


その時、視界の端でもぞっと何かが動いた。あれ? 俺何であんな意味不なこと喚いてたの?


「んむぅ・・・・・・ふあぁ~・・・・・・・・うあ、つい寝てたのです・・・・・・」


そして今の俺の魂の叫びで先生が起きてしまったようだ。

先生寝起きも可愛いじゃないっすか。いや、だから俺はロリコンじゃないって!


「それにもうこんな時間なのですよ・・・・あ、中谷君もう帰るのですか? 時間・・・・」


「ええ、まぁそのつもりで」


「じゃー送って差し上げるのですよー・・・・・・」


差し伸べられたちっちゃな手を握る。

その直後だった。




・・・・そのまま思いっきりぶん投げられて、窓ガラス突き破って元の世界に送り返されたのは。

寝惚けパワーって・・・・怖いね。










カランカラン


「マスターちわーっす」


「おう、蒼瑠か・・・・って随分傷だらけだな・・・・新学期早々喧嘩でもしたか?」


「喧嘩っていうか戦争っすね、あれは。そんなことよりいい加減店の名前変えたほうがいいんじゃないっすか?」


「バカ言え、気に入ってるからいいんだよ」


ここはうちの近所にある小さな喫茶店、その名も『ドラフトの猛者』。

本当に訳がわからないネーミングセンスだ。

そしてこの無精髭のナイスミドルがここのマスター。

これを気に入るマスターの感性だけはあの学校を超えているかもしれないとつくづく思う。

しかしマスターは本当に人がいいので常連客も多い。無論俺もそうだ。

そういった人々は敬意を込めてここを『ドラモサ』と呼ぶ。


「あいつらは?」


「おう、もう来てるぜ。ほれ、あそこだ」


コップを拭きながら顎で促された先に、我が友がいた。


「悪ィ、遅れた」


「お前・・・・矢内に負けるとか・・・・・・」


「お前・・・・俺に負けるとか・・・・・・」


手荒い歓迎だ。

今遠まわしに矢内と呼ばれた奴をバカにした方が加藤。本人曰く体が妄想と二次元によって構築されているらしい。所謂厨二病患者。

バカにされたのにノってる方が矢内。というかこいつは自分が時間にルーズであることを自負してる。頭のキレる奴だから多分今バカにされたことも理解してるだろう。でも厨二病患者。

いずれも中学時代のつるみ仲間だ。


「ま、ちょっと美少女とイチャついてたからな・・・・」


とりあえずジョークで流す。


「ハァ!? フザケンナ裏切り者!! リア充爆発しろッ!!」


流れなかった。加藤はとりあえず何でも真に受ける習性がある。


「まぁ冷静になれ加藤さん。もしイチャついてたとしよう。それでこの傷・・・・」


矢内お前・・・・変態眼鏡の分際で余計なことを・・・・


「・・・・ああ成程、手出しちゃったんですね? それで半殺しにされて病院寄ったから遅くなったんですね! ざまぁ!!」


「・・・・まぁ大体そんなとこだよ」


こいつらの扱いで大切なこと。それは話のペースに流されないこと。もしくは流されて同調してこいつらの気を削ぐこと。そこの見分けが大事なんですよ。


「まぁどーせ中谷さんお得意の妄想ジョークだろ?」


ハイ成功ー。


「なんだ。じゃあいいや。定例会、始めようぜ」


定例会とは、俺ら三人で行われる、簡単に言えば報告会。

こうして時々ドラモサに集まって、狩りとかしながら近況報告的なことをする。

今日の議題は勿論「高校の感想」である。








「あ、そっちいったぞー」


「おんま! 俺今研いでる!?」


「最初に乙った奴からだかんな? 報告」


「え、何それ聞いてなッ・・・・」


「はいプギャー! 加藤さんからー」


「汚い・・・・流石矢内汚い・・・・・・」


「クソァ・・・・ってえ!? なんで今殺したし!! 絶対剥げないじゃん!!」


「ざまあああ」


「うわー萎えた。マジ萎えたわー」


「ま、何にせよ加藤、お前からだ」


「あー・・・・俺んとこは・・・・一言で言えば無念? 人種が完璧に分類できるぜ」


「ほお。それはどういった?」


「オタクか不良かネクラかギャルか腐女子」


「人種じゃぬぇ!」


流石、ボケレベルが測定不能だ。


「じゃあ恒例の美少女コーナーはッ!?」


矢内が切り出す。

その名の通り『美少女はいましたか?』っていうコーナーだ。

中学時代もこのコーナーは存在し、日常で・・・・とか、結構盛り上がる話題でもある。

厨二盛りだから仕方ないね・・・・

さて、加藤の高校


「悟ろうか」


「「ご愁傷様です」」


加藤は戦死した。


「矢内、俺の分まで・・・・ッ」


「・・・・」


矢内が不敵な笑みを浮かべる。これはもしや・・・・!


「・・・・俺の人見知りを舐めるな・・・・・・」


そうだった。こいつ人見知り酷いんだった・・・・


「でも普通に観察くらいならできたんじゃねぇの?」


加藤が問う。確かにそれくらいならできていいはずだが


「寝てましたけど」


「「お前いっぺん死んで来い」」


こいつのマイペースには絶対敵わない・・・・

結局はぐらかされて終わった。


「んで? 中谷さんはよ?」


「・・・・色々凄いぜ」









今までの経緯を話したら、二人掛かりで襲われた。

元中コンビは、実際に許可を取って作者の元中の輩をモデルにしてたりしますw

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