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寝物語

バクの夢のタネ

作者: 星つむぎ
掲載日:2026/08/02

夜の森の奥。

バクはそっと目を覚ます。

今日もまた、誰かの心に迷い込んだ悪夢を食べに行く。

そして代わりに良い夢を、その人の夢の畑へ植えに行くのだ。

バクは鼻先で夜の空気をすくった。


「うん、今日は少し苦い悪夢の匂いがするね」


そうつぶやいた……。

悪夢は黒い霧のように漂い、眠る人の胸の奥に絡みついている。

バクが、その悪夢の匂いを辿って近づいていく。

悪夢はバクの足音に気づいて震えた。


「怖がらなくていいよ。君はもう、ここで終わりだ」


バクは大きな口を開けて、黒い霧をひとすくい、またひとすくい。

食べるたびに、霧はふわりと甘い香りに変わって消えていく。

悪夢を全部食べ終えると、バクのお腹はぽんっと少し膨らむ。

でもそれは重さではなく、あたたかさ。

悪夢を浄化した証。


バクは静かに眠る人の枕元に座り、お腹の中のあたたかさをそっと手のひらに移す。

すると、手のひらの上に小さな光のタネがぽっと灯った。

バクはそのタネを、眠る人の胸の奥へそっと吹き込む。

光の種はゆっくりを沈んでいき、やがて心の中で目を出す。

その夜の夢をやさしい色に染めていくのです。


ある人には、海辺の風が吹く夢。

ある人には、子どもの頃の懐かしい景色。

ある人には、まだ見ぬ未来の希望の光。


バクは植えた夢がどんな形になるか知らない。

でも、どれもその人にとって必要な優しい夢になることだけは、確信している。


どうか……安らぎのぬくもりの中で、良い夢を。

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