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カフェオレ

作者: 木村乃村
掲載日:2026/05/08

深夜の交差点。

車通りは全くない。


赤信号のたびに、濡れたアスファルトが鈍く光る。

ガードレールの根元には、色褪せた花束が積まれている。


持ってきた花を、その隣にそっと添える。

ただしゃがみ込んだまま、しばらく動けない。


ポケットから煙草を二本抜く。

ライターの火が、指先だけを赤く照らした。


煙を深く吸い込み、カフェオレを開ける。

冷えた缶が体温を奪う。


一口飲んで、ガードレールの脇へ置いた。

口の奥に、甘ったるい粘りが残る。


「甘すぎるんだよな」

 

─返事はない。


遠くで、白い光が揺れる。

 

煙草を地面に落とし、靴先で火を潰す。


青だった信号が、点滅を始める。


風が吹く。


カフェオレが倒れて、静かに溢れた。

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