第22話 リハビリ
そうして、時間は瞬く間に過ぎていった。
いつも通り農作業をしたり、調味料を新たに開発したり。予定していた部屋の増設も終わらせてある。
それと、ルシアと共に回復薬の類を開発したりもした。
簡単に言うと魔力回復薬や解毒薬、解呪薬といった回復薬の亜種だ。
そこらへんの知識はルシアが持っていたので、一緒に試行錯誤をしながら進めていった。
なんでもルシアは騎士になる前に通っていた学校、神国貴族学院では首席だったらしい。なので知識はかなり豊富だった。
首席ってすごい。
そんなルシアは僕の畑を見て絶句していた。
聞けばどれも入手困難な素材らしい。僕はヴェルナードが呆れていた理由を改めて思い知った。
ちなみに石化を治療する回復薬もあるらしいが、そっちは作れなかった。
僕の畑には入手困難な素材はたくさんあるが、普通の汎用素材がないらしい。それを聞いた時は肩の力が抜けたものだ。
ともあれ。
そんな楽しくも刺激的な毎日を送り、半年。ようやくルシアの石化が完治した。
「ちゃんと動く? 痛みとかはない?」
新たに作った個室。今はルシアの部屋。
僕は車椅子に座るルシアの前にしゃがみ込みながら、その足首をゆっくりと動かした。
すでに硬い部分はなく、白い素足からは体温を感じられる。動かしても特にぎこちない部分はなく、動作も滑らか。この調子だと内部もしっかりと治っていそうだ。
「はい! 問題なさそうです! 立ってみてもいいですか?」
「もちろん。気をつけてね」
僕は立ち上がると、いつでも支えられるように一歩だけ後ろに下がった。
治ったからといって油断は禁物。なにせ半年もの間、歩いていなかったのだ。
普通に歩けるかどうかはかなり怪しいだろう。
「よいしょっ!」
小さな掛け声と共に、壁の手摺りを使ってルシアが立ち上がった。
「おっとと……。大丈夫そ――」
そして一歩、ルシアが歩こうとした時、急に膝から力が抜けた。足が体重を支え切れず、体勢を崩す。
「――っと」
崩れ落ちそうになったので僕は咄嗟に支えた。
密着といっても良い距離。ふわりと良い香りがした。
なんでこんなに甘い匂いがするのだろう。同じボディソープを使っているのに不思議だ。
「……ッ! すみません」
顔を真っ赤に染めて俯くルシア。最近、こういう反応が多い気がする。
なぜだろう。
「大丈夫?」
「は、はいぃ」
「……? まあ半年も固まってたんだからこうなって当然だよね。しばらくはリハビリかなぁ」
完治はしたが、本調子ではない。
今のルシアはそんな感じだ。以前と同じように歩けるのはまだすこし先になるだろう。
……ん?
なぜか、心の中で小さな気持ちが広がった。
……なんだろうこれ。安堵?
よくわからない。自分の感情が。
歩くのが難しいのならば普通は心配が先に来るはずだ。それが正しい。
なのに僕の胸には何故か安堵がある。わけがわからない。
「……レン様?」
「あぁごめん。すこしぼんやりしてた」
「大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。問題ないよ。それよりリハビリしないと……」
「リハビリ……。いつものですか?」
この反応は知らない言葉を聞いた時の反応だ。
共に暮らして半年。僕もルシアも、だいぶ慣れてきた。
「そう。リハビリって言うのはリハビリテーションの略で、身体の失われた機能を回復させることを言うんだ。今のルシアの場合は歩けるようになるような訓練だね」
「なるほど? 具体的には?」
「足が不自由だと……何かにつかまって歩く、とか?」
「わかりました。やってみます!」
なぜ疑問系なのか。ルシアは聞いてこない。こういう時、僕が何もわかっていないことを知っているからだ。
「あっ。一人でやるのは危ないからやる時は僕に教えて。手伝うからさ」
「わかりま……」
言葉の途中で治まりかけていた顔の赤さが戻っていく。
「ルシア……?」
「すみません……。また支えてもらうと考えると恥ずかしくて……」
「あぁー」
でも、だからと言って一人でやらせるのは危険だ。
倒れて怪我をした、なんてことになったらここまで治した意味がなくなってしまう。
「それは我慢してもらうしかないかなぁ」
「はい……。ガンバリマスッ!」
何故かカタコトになっていた。
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