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第19話 魂の色

「さて、僕は少し出掛けてくるよ」


 朝食後、珈琲もどきで一服した後、僕は立ち上がった。


「どこへ行くのですか?」

「ちょっと素材を取りに」


 といってもヴェルナードの洞窟にタイヤのゴムを取りに行くだけだ。

 昨日話したばかりだが、 ヴェルナードは仕事が早い。だから既に作り終えているはずだ。たぶん。


「その車椅子、まだ完成してないんだよね。自分で動かすには力がいるでしょ?」

「……?」

「あれぇ……?」


 ルシアは首を傾げていた。思っていた反応と違う。

 もしかしたら結構力があるのかもしれない。


 ……騎士見習いだしなぁ。


 小柄なのにすごい。普通に僕より力がありそうだ。


「……まあ結構改善されると思うから待ってて。多分外にも出られるようになると思うよ」

「わかりました。では楽しみに待っています」

「うん。じゃあ行ってくる。……っと結界からは出ないようにね? 危ないから」

「もちろんです! 私も死にたくはありませんから……」


 なんて苦笑したルシア。冷厳山嶺の危険度は身に染みてわかっているのだろう。

 これなら安心だ。


「……あっ。レン様!」


 外へ出ようとしたところで呼び止められた。


「……ん? どうしたの?」

「あの、キッチンをお借りしても良いですか?」

「別に構わないよ……? 何か作るの?」

「それは帰ってきてからのお楽しみですっ!」

「わかった。じゃあ僕も楽しみにしてる。っと……冷蔵庫の物は自由に使って良いから」

「ありがとうございますっ!」


 微笑むルシアに手を振り、僕は家を後にした。




「……ってことがあったんだよねぇ」

「レン。それってボクに話して良いの? デリカシー? なくない?」


 昨夜の話をヴェルナードにしたら半眼を向けられた。だけど確かにその通りだ。

 

「確かにそうかも……。気を付けよう。それで? 出来てる?」

「もちろん出来てるよ。これでいい?」


 手渡されたのは確かにタイヤのゴムだった。軽くバウンドさせると跳ね返ってくるぐらいに弾性がある。


「完璧だよ。これでルシアも楽になるかなぁ」

「……その様子だと、かなり気に入ったみたいだね」

「ルシアのこと?」

「そう」


 頷いたヴェルナードはなんだか嬉しそうだった。

 

「まあ確かに。良い子だよ。素直だし気遣い出来るし」


 今のところ、気になる点すら見つからない。

 これから石化が治るまでの数ヶ月を共に暮らすことになるが、問題は起こらなさそうだ。

 男女が一つ屋根の下が問題だと言われたらそれまでだが。部屋を増設する予定だからそこは許して欲しい。

 

「それなら一安心だ。助けた手前、悪人じゃなくてよかったよ」

「それはそうだね。………………流石にアレ、演技じゃないよね?」


 少し不安になってきた。

 もしあの人の良さが演技だったら、僕は人間不信になる自信がある。


「まああまり心配はいらないと思うけどね」

「? ……根拠は?」

「魂の色が綺麗だから」

「……ポエム?」

「ポエ……? なにそれ?」

「いや……なんでもない。というより僕もよくわからない」

「あぁ。いつものやつね」


 ヴェルナードは苦笑を浮かべつつも納得した。

 別に今に始まったことではないからだ。つい知らない言葉が口をついて出るのは。

 ヴェルナードも慣れたものだ。

 

「そうそう。ていうか魂の色ってなに?」

「文字通りだよ」

「魂って色があるの? ちなみに僕は何色?」

「無色透明。しっかり視ないとあるかわからないぐらい」

「……それはいいことなの?」

「ボクにもよくわからない。でも悪人は濁っていくらしいからね。実際に見たことないからなんとも言えないけど」


 これは前に聞いた、真龍種が生まれた時から持っている知識のことだろう。

 

 真龍種という種族は生まれた瞬間からさまざまな知識を持っているらしい。

 それは龍脈の管理者という立場だかららしいが、詳しく聞いてもよくわからなかった。だからあまり覚えていない。

 ともあれ……。

 

「……濁っていくってどんな原理?」


 そもそも悪の定義なんてモノは曖昧だ。

 人の善悪なんてものは立場が変わるだけで容易く変化する。

 自分が正義だとしても相手から見たら悪だった。なんてことは往々にしてある。その場合、魂と色はどうなるのだろうか。

 濁るのか、そのままなのか。


 僕の問いにヴェルナードは目を瞑って力無く首を振った。


「ボクにもよくわからないよ。ただ魂って言うのはそういうものってこと」

「なるほどねぇ。ちなみにルシアは何色?」

「金。眩しいぐらいに輝いてる」

「そりゃ悪人じゃないわ」


 どうやら安心しても良さそうだ。やはり光属性だったらしい。天使かな?


 ……それに、疑うのは疲れるしね。


 隣にいる人物をずっと疑っていたくはない。

 それはルシアに対しても失礼だ。ならば僕は自分の直感に従って信じたい。

 

「ルシアは善人。それでいこう」

「だね」

「……っと。ルシアといえば、車椅子を作ってくれたお礼を言いたがってたよ。遠くにいるって言ったら残念そうにしてた」

「あぁ。そこまでは言ったんだ」

「うん。友達に助けてもらってここに住んでるって。じゃないとあの魔導具の数は説明できないからね。多分、ゼスマティア神王国の技術力なんて優に超えてそうな気がするし」

「おぉ? なんとか神王国からゼスマティア神王国に昇格?」

「……そこぉ? バカにしてない? 流石の僕でもあれだけ聞けば覚えるよ」

「あまり興味はないけど?」

「それはそう」


 当分行くことは無さそうだからあまり興味はない。そこは変わらずだ。


「そうだ。ルシアが善人なのはわかったけど、ボク……というよりも黒龍の存在はちゃんと隠しておいてよ?」

「それはわかってるよ。討伐隊なんてゴメンだからね」


 争いごとは嫌いだ。

 それ以上に、僕は今の生活を気に入っている。この生活を壊されるなら、いくら信用しているルシアでも話すことはない。


 ……大切な親友を失いたくはないしね。


 頭に浮かんだ嫌な想像をかぶりを振って、振り払う。


「それじゃあ僕は戻るね。これ、ありがとう」


 タイヤのゴムを掲げて見せるとヴェルナードは微笑んだ。


「いえいえ。また何かあったら来て」

「なにかなくても数日に一回は来るよ。ずっと会えないのは寂しいからね」

「まったくレンは寂しがり屋だなぁ」

「それはヴェルナードもでしょ?」

「……間違ってはいないね」


 そう言って僕とヴェルナードは笑い合った。

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