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第13話 治療

 家に帰り着いて、少女を空き部屋のベッドに寝かせる。その後、服を着替え、効能を落とした回復薬を作り始めた。

 レシピはヴェルナード監修だ。

 幸い、素材は庭で育てていたモノで足りた。

 

 「これでよし! あってるよね?」


 そうして出来上がった回復薬、ヴェルナードが言うには上級回復薬。それをキッチンの窓から覗き込んでいたヴェルナードに見せる。


「うん。完璧だよ」


 よかった。ヴェルナードがそう言うのなら安心だ。


「それにしても上級回復薬(これ)はこんなにも綺麗なんだね」


 瓶に入った液体は透き通るような無色透明。陽の光に翳すとキラキラと煌めいている。まるで上流を流れる小川のようだ。

 形容し難い緑色をしている神の雫と比べると上級回復薬の方が効きそうな感じがする。実際は逆なのだが。なんかおもしろい。


「作り方の差だよね。こっちは抽出してるから」


 最上級回復薬の作り方は本当に大変だった。

 すり潰したり、混ぜたり、絞ったり、抽出したりと、とにかく工程が多い。

 神の雫は混ぜただけだったのに。


「なんで神の雫は混ぜるだけなんだろ?」

「あれは効能のゴリ押しだからねぇ。そもそもあの数の貴重な薬草を新鮮な状態で混ぜないといけないっていう無理難題があるし」

「ふーん?」

「興味なさそうだけどこの畑、異常だからね?」

「そう言われてもテキトーに拾ってきて育てただけだからなぁ」

「普通は育たないんだよ……」


 どうやら僕の天職は勇者でも賢者でもなく、農家だったらしい。なんだ天職って。

 

「……まああれだね。十年の成果だね」

「軽いなぁ。……それで? 早く飲ませなくていいの?」

「そうだった。ちょっと行ってくるよ」


 患者は今も苦しんでいるのだ。

 早く救ってあげなくては。……医者かな?

 

「ならボクは帰るね。しばらくは顔を出さないけど何かあったら()()まで来て」

「わかった。寂しくなるね」

「少しの間だけだよ」


 なんて言っているけれどヴェルナードもどことなく寂しそうだ。なんか嬉しい。


「あ、道残ってたらマズイかも」


 あの少女が道の存在に気付いたらヴェルナードのこともバレてしまうかもしれない。


「確かにそうだね。あとで隠しておくよ」

「よろしく。じゃあ行ってくるね。またねヴェルナード」

「うん。またね。レン」


 ヴェルナードが踵を返し、飛び去っていく。

 僕はその大きな背を見送って、寝室へ向かった。




 寝室では少女が眠っていた。

 しかし苦しそうに顔が歪んでいる。心なしかさっきよりも顔色が悪くなっているような気がした。


「そういえば気を失っている人に液体は飲ませられないんだったっけ?」


 肺に入ったらマズイなんて話をどこかで聞いた覚えがある。たぶんこれもいつもの既視感、もとい既聴感(きちょうかん)だ。

 なにせ目覚めてからはヴェルナードとしか話していない。そしてヴェルナードは医学的なことにあまり詳しくない。

 細菌のことや内臓の役割なんかを説明したらポカンとしていたぐらいだ。


「じゃあどうするかってのはわからないんだけど……」


 とにかく困った。

 人助けをするつもりが、トドメを刺したなんてことになったら笑い話にもならない。


「こういうのって振りかけたら効果あったり?」


 なんとなくそんな気がして、一番傷口の大きな腹部に回復薬を一滴垂らした。

 ぽたっと回復薬が傷口に触れると、辺りの細胞が蠢き、傷口を修復し始めた。


「うわー。なんかグロいなぁ。でも効果あったなぁ」


 なんで効くと思ったのかは謎だが、今はいいだろう。これもいつもの既視感だ。

 

 僕は少女の傷口に回復薬を垂らしていった。すると数分で苦痛の色を浮かべていた表情が和らいだ。


「これで大丈夫かな? 起きてくれると飲ませられるんだけど……」


 そうすれば内臓も治せる。だから僕は少女の肩をゆすってみた。


「キミ! 聞こえてる!? 起きてくれると嬉しいんだけど!!!」

「………………んぅ」


 反応があった。もう少しだ。


「聞こえてる!? 起きて!!!」

「………………んん?」


 呼びかけ続けていると、少女の瞼がゆっくりと開いていった。しかしどこか虚ろだ。

 だけどこれはチャンスでもある。意識があるのならば回復薬を飲んでくれるかもしれない。


「これ飲める? 回復薬!」

「……」


 僕の呼びかけに少女はコクンと小さく頷いた。

 きっと意識ははっきりしていないのだろう。だけど言葉を理解できているのならば十分だ。

 

 僕はゆっくりと瓶を口に近づけ、傾けていった。

 中に入った液体が、少女の口の中へと流れ込んでいく。そして少女は小さく喉を鳴らして回復薬を飲み込んだ。


 ……よかった。


 飲んでくれればこちらのものだ。

 あとは回復薬がやってくれる。

 お願いします! 回復薬先生!


「ぐぅ……。ゴホッゴホッ!」


 少女が苦悶の表情を浮かべ、咽込んだ。


「大丈夫? ゆっくりでいいからね」


 なるべく優しく背中をさする。すると少女の呼吸はだんだんと落ち着いていった。

 そして顔を上げる。


「……あれ? ここは?」


 周囲をキョロキョロと見回し、僕と視線があった。


「……え?」


 瞳が揺れる。混乱していることはすぐにわかった。

 

「混乱してると思うけどまずは落ち着いて。僕は怪しい人じゃないから」


 いかにも怪しい人が言いそうな台詞を言いながら、まずは少女から離れる。

 男の人が密着していたらあらぬ疑いを生んでしまうのは容易に想像がつく。


「怪我をしていたから回復薬を飲ませたんだ」

「……ッ!」


 僕の言葉に少女は腹部に視線を向ける。そしてそこにあった傷口がなくなっていることに気付いた。


「……ホントだ。痛くない……」

「よかった。ちゃんと治っているようだね。僕の名前はレン。キミの名前を聞いてもいいかな?」

「……ぁ。ルシアです。ルシア=ノヴァリス」


 こうして僕とルシアは出会った。

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