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14話「悪夢から覚めたら目の前に獣がいる現実は悪夢の続き」

 ルゥールル、ルルル♪ ルゥールル、ルルル♪

 ラァーラァーラァーラァーラァァァーーー♪♪


「本日のゲストは、召喚士歴十年、世界最高の探索者として有名な、黒木リュウヤさんです」

「よ、よろしくお願いします」


 さすが歴史の生き証人にして芸能界のレジェンド。

 そのタマネギ頭の圧は尋常じゃない。


「リュウヤさんはソロ経験もお持ちなんですよね。パーティーを組むのが普通だと思うんですけど、よくソロで活動されていましたね」

「召喚士なんて不遇ジョブですから、誰も組んでくれなかったんですよ、アハハ」

「ご謙遜されてますけど、若くして〈ジョブ〉に目覚めて、十年以上の実績を積んでらっしゃるんですから、十分凄いですよ」

「まあ、運が良かったんでしょう、アハハ」

「運だけではありませんよ。凄くおモテになっていたとか。リュウヤさんには、人を惹きつける魅力があったのではないでしょうか」

「全部振られましたけどね、アハハ」


 アホ女と違ってムカつかないな。

 これが人徳の差か。


「最近は美少女モンクの恋人と一緒にダンジョンに潜っているとか。公私共に充実してらっしゃいますね」

「あー、あいつはそんなんじゃないですけど、ありがとうございます、アハハ」


 全国放送で事実無根を言わないでくれ。


「伝説の召喚獣も手に入れられましたよね。世界中でオカンフィーバーが起きてますよ」

「アハハ、嬉しいです」


 どこ行ってもオカンフィーバーだからな。

 あの召喚獣のおかげで今や億万長者だ!


「何でもオカンを召喚できたのは、普段から熱心にモンスターを研究し、ダンジョンの構造を調べ尽くしていたからだとか。凄い勉強熱心な方なんですね、リュウヤさんは」

「アハハ、そ、それほどでもありませんよ」


 あれ? そんなこと言ったか?

 アホ女の奇行と偶然が重なっただけのような気が……。


「ではここで、世界トップレベルの探索者である黒木リュウヤさんのお部屋をご紹介しましょう」

「は?」

「リュウヤさんからご提供いただいた写真をどうぞ」


 いやいやいや、提供した覚えなんてねぇぞ。


「素晴らしいお部屋ですね。整理整頓されていて、立派な像や珍しい魔石が目を引きます」

「あ、ど、どうも……」


 あんな女神像や魔石なんてあったか?


「次の写真はなんと、リュウヤさんの知識の源泉であり、世界最高の図書館とも評される、あの本棚です」

「ほ、本棚?」


 なんで俺の部屋の本棚が全国放送に?

 どこにでもある普通の本棚だぞ。

 図書館って……なんの冗談だよ。


「どうぞ」

「……あ……ああ、ああああああ……」

「凄いエロエロ変態コレクションです」

「や、やめろ……」

「メイドさん、ネコ耳、コスプレ、SM、素人、ハーレム」

「止めてくれぇ!」

「さすがリュウヤさんですね」

「なにがさすがだよ!?」


 脳が腐って発酵してるのか!


「一つのジャンルに囚われず、全てのジャンルを網羅する。その知識欲と性欲こそが、成功の秘訣なんですね」

「性欲関係ねぇ!」

「さらに興味深いのはーー」

「放送中止だ! これは何かの陰謀だ!!」

「幼馴染みものが多いということでしょうね。やはり、リンカさんやミサキさんを性欲のはけ口としてーー」

「それは誤解だぁぁぁああああああ!!」


***


「ああああーーーー!!」


 はあ、はあ、はあ……。

 あのクソはどこ行った?

 全国の笑いものにしやがって、絶対に許さん。

 俺の名誉のためにも、あの映像と記憶は墓まで持って行ってもらう。


「クゥ~……クゥ~……」


 なんだ、この茶色いモンスターは?


「……あー、思い出した」


 こいつは〈UMA〉だ。

 リンカのアホが飼うとか言い出して、なぜか(うち)に置くことになったけど。

 

「はぁー……」


 だがまあ、こいつおかげで目が覚めた。

 さっきまでのあれは夢だ。

 俺が全国番組に出るとかあり得ないしな。

 黒蛹(くろさなぎ)節子(せつこ)さんとサシで対話とか、凡人の俺が出来る訳がねぇ。

 あんな夢を見た原因は絶対にコレのせいだよな……。


〈ピンク色のモザイク本棚〉


 はぁ~……。

 俺の名誉も尊厳も、全ては過去のものになった。

 リンカのようにからかって来るならまだマシだが、オカンのようにダンマリなのは心にくる。

 どうせなら「こんなもん見てんじゃないの!」とか言われて破棄されされた方がマシだ。

 裏で「こんな趣味があったのねぇw」とか思われてそうでめっちゃ辛い。

 公開処刑しつつも生殺し……今はそんな状態だ。


「リュウヤ、そろそろ起きなさい……なんだい、起きてたのかい」

「おかげさまでな……」

「起きたんならいつまでもダラダラしない。チャッピーの散歩もあるんだから、ぱっぱと支度しなさい」


 言いたいことは色々あるが……言ったら墓穴を掘りそうだ。

 オカンは言うことだけ言うと部屋を出て行く。


「クゥ~……クゥ~……」


 にしても、こいつが〈チャッピー〉って(つら)かよ。

 なんで得体も知れない〈UMA〉に犬の元祖みたいな名前付けてんだよ。

 リンカの〈犬8号〉も酷かったが、オカンの〈チャッピー〉も意味不明だわ。

 あいつらにはこれが犬に見えてんのか?

 茶色だからチャッピーなのか?


「ほら、起きろ。お前のせいで生活がめちゃくちゃになったんだから少しは協力しろ」

「クゥ、クッ……」


 護身用のヒノキの棒で顔をつつく。

 本当は伝説の聖剣とか欲しかったが、ないものは仕方ない。


「さっさと起きろ、ほら」

「クッ、クゥッ……」


 なんか楽しくなってきたぞ。

 俺を色々な意味で苦しめているあの〈UMA〉が、ヒノキの棒でうめき声を上げる。

 こいつ、コスパ最強のストレス発散モンスターじゃね?

 うりうりうりうりぃーー。


「クッ、クッ、グゥゥゥーー」

「オラオラオラ、さっさと起きろや」

「バウッ!!」

 

 おんやぁ? 世界が闇に包まれたぞ?

 生温かくてヌメッとしていて、なんか……舐められてる。


「チャッピー! おはようアル!」

「ヴォン!」

「リュウとじゃれてるアルか?」

「ヴォンヴォン!」

「遊んでないで散歩の準備するヨ」

「ヴォン……モゴモゴ……ペッ!」

「リュウもちんたらしてないで早く支度するネ。お母さんが待ってるヨ」


 これは俺が悪いのか?


「ワフッ!」

「はいはい、後でいっぱい遊んであげるヨ」


 二匹は戯れるように部屋を出て行った。

 残されたのは涎まみれの馬鹿と、折れたヒノキの棒だけだった。


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