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旅立ち、王国へ向けて

 ヘロンに旅がしたいと告げて3日間経ち、私の旅立ちの日が来た。

 旅がしたいと伝えた時、ヘロンは「…どうしてそう思ったの?」と聞いてきた。

 その顔は悲しそうだったが、それでも私は旅がしたい理由を話した。


 「…私はこの呪いを受けてから、私自身生きてる理由が無いと思いながら生活してた。それはいつも怪我をしている訳でないが、心の中がいつも苦しんでいて、何故生きているのかと思い込んでいた。」

 「だけど、今この時に一番気になった事を見つけた。それは、他の人達の生きている理由を聞きたい。それが今私が生きている内に一番知りたい事なんだ。」


 とやや感情的になってしまったが、これが言葉に出来ている理由であった。

 そんな私の真剣さが伝わったのか、ヘロンは少しだけ顔を伏せてからもう一度私と向き合う。

 「そんな真剣な顔をしていたら行ってらっしゃいっていっちゃうじゃないの。それに今の貴方は凄い輝いているわ。」

 と少し笑って私の旅立ちを許してくれた。

 そのヘロンの笑顔は無理をしていて、唇は少し震えていた。

 きっと心配かけたくないと思い、笑顔で答えてくれたんだろうと分かった。


 「…ありがとう、ヘロン」

 こんな危険な旅を許してくれたヘロンへ感謝の言葉を伝えてからヘロンを抱き締めて一緒に寝る。

 ヘロンは私の体温を忘れないように強く抱き締めて一緒に寝ていた。


 こうして私は旅立ち事が出来たのだ。

 ラウさんにもこの旅がしたい事とその理由を伝えると、「何を言ってるんですか!?」と叱られてしまった。

 今更だがこれは普通に怒られる事で、その時の私は早く旅がしたい欲を突っ走っていたから、少し周りを見れていなかった。


 ヘロンにも伝えて理解してくれた事を伝えると、ラウさんは深いため息をついてから話し始める。

 「ハァ…もしかしてお一人で旅するんですか?」

 と聞いてきたので、私は「?そうだが?」と答えた。

 その時ヘロンも一緒にいた状態だったので、ヘロンは苦笑いしたような顔をし、ラウさんは自身の右手をおでこに当て、大きく背を反る。

 それには私は何かやったか?と疑問に思っていると、ラウさんはだいぶ考えが纏まり口を開く。

 「では、僕もその旅に同行します。そんな危ない呪いを受けている状態での一人旅は危険すぎるので」

 と話したんだ。


 まさかラウさんが一緒に旅してくれるとは思っておらず、私は驚いて、「え?一緒に来てくれるんですか?」と聞いてしまった。

 「だけどその代わり!」とラウさんは更に話し始める。

 「僕は一旦王国へと帰り、討伐隊の隊長、いや兄さんに話し合ってきます。そして、討伐隊を率いて戻ってきます。その時に僕達と一緒に王国まで行きましょう。それからレーヴェンさんの旅を始めましょう。そん時は僕も一緒ですから」

 とラウさんは人差し指を指し、注意深く話した。


 最初に王国を向けてからの旅であったが、それでも私は嬉しかった。

 まるで小さい時の冒険心が今頃戻ったような感覚がして私の胸が高ぶり始める。

 ヘロンは私がワクワクしているのを顔を見て分かったのか、今まで沈んでいた私の目に炎がついた事に嬉しくなり、ふふっと笑っていた。


 ラウさんが3日後に討伐隊を率いて来ると話していたので、その間に私は村の人達に旅がしたい事を伝え、必要な物を注文していた。

 村の人達にも私がこれからしたい事を話すと、寂しそうな顔をしていたが、私の考えを尊重したのか、より良い品質の道具を揃えてくれた。


 私の今着ている服は黒一色でフード付きのコートを着ている。

 これは村の衣装屋のミーナさんと道具屋のワトソンさんが一緒に作った服であり、これは太陽の光を遮る事が出来る特殊な服であり、呪いの効果を遮る札の効果を浸透されてて、着ているとどうも身体が不思議と軽かった。


 そして、護身用の武器の2つの小鎌を左右の腰に下げている。

 これは装備屋のワーダンさんが作成した2つの小鎌だ。

 持ち手が持ちやすく、私が牧場で草刈りする時に小鎌を使った事があり、使いやすい武器であった。

 この小鎌の刃は黒く光っており、黒曜石のような石で作られた小鎌であった。

 ワーダンさんは「ほれ、これ切ってみ?」と机に置かれた石へ人差し指を向けて切ってみろと言われた時は、石へ向けてこの小鎌を使ったら壊れないか不安だったが、私はワーダンさんの言葉を信じて、石に向かって小鎌を振り下ろした。


 きっと刃が折れると思っていたが、なんと石を真っ二つに切ったのだ。

 それには私は驚いて目を丸くし、ワーダンさんはホッホッと笑い、短い白い髭を撫で下ろした。

 「これは貴重な黒い玉鋼を使ったかなり切れ味がある双鎌にしたぞ〜折角の旅だ。このくらい奮発させてくれ」

 とワーダンさんはそう言い、ウインクしながら親指を立てる。


 そんなワーダンさんの頼れて明るい姿と心に打たれ、この双鎌を貰う事を遠慮しないで素直に受け取れた。

 このコートと双鎌以外に、食べ物やランプ、村長からは少しのお金を貰う。

 私の為にここまでしてくれる村の皆さんに嬉しくて泣きそうになってしまうのだった。


 そんな出来事があって、今の旅立ちがあるのだ。

 旅立ちは太陽の昇った日ではなく、太陽が沈み、真っ暗な夜の時間であった。

 この時間にしたのはやはり私の呪いが酷くない内に王国まで向かうという事だ。

 今、村の入り口に村の皆さんがランプを持ち、私が出発するのを見届ける為にいて、私を一緒に連れて行く討伐隊の皆さんは私を待っていた。


 村の皆が私に「元気でな」「気をつけて」という送り出す言葉をかけてくれる。

 その一つ一つの言葉が胸の中に暖かく、その暖かさに浸っている中、討伐隊の隊長が私に声をかけてくる。

 「レーヴェンさん、そろそろ出発だ。」

 彼は討伐隊の隊長であり、ラウさんのお兄さんのフーデン・フォン。

 その姿は雄々しく、討伐隊の隊長である事が似合う人だ。しかも、彼から放つ強者の風格も漂っており、一度も戦闘した事無い私でもかなりの実力を持っているのを感じていた。


 フーデンさんが出発する事を聞いたので、私は最後にここに来てくれた村の皆へ向けて旅立ちとさよならの言葉を話す。

 「こんな私の為に皆さんからたくさんの貴重な物を貰い、凄い嬉しかったです。嬉しくて泣いてしまいそうでした。これから私はいつ戻ってこれるか分からないですが、この日を私は忘れません。皆さんありがとう」

 と話す。

 村の皆さんはじっくりと私の言葉を聞いて、涙を流してくれた。

 それには私も涙が溢れ、ポロポロと溢れてしまう。

 これは私の決めた事だ。

 だから旅をしないといけないと強く思い、「行きましょう」とフーデンさんに言おうとした瞬間、


 「待って!!」


 ヘロンが私を呼び止める。

 どうしたのだろうと思い、私はヘロンへ向き合うと、ヘロンの手にはあるアクセサリーを握っていた。

 それは牛の角を使った小さな首飾りであった。


 その首飾りをヘロンは私の首に付けてくれる。

 私は首飾りを気になり、「ヘロン、これは?」と聞いてみる。

 「これは私が作ったの、どうか貴方が無事に旅を続けられるようにと願いを込めて」

 ヘロンはそう言い、涙を溢しながら笑っていた。


 「泣いててごめんね、笑って送りたかったのに…お願い、止まって」

 ヘロンはどんどん溢れる涙を止めようとするが、逆にどんどんと溢れ、ヘロンは泣き崩れてしまう。


 大切で貴重な首飾りを貰った私は、泣き崩れてるヘロンの顔が見れるまで座り、「ヘロン…ありがとう。この首飾りを肌見放さずにする」と伝える。


 私からのありがとうの言葉を聞いたヘロンは

 「無くしたら承知しないわよ…」と言い、私へ最後かもしれないキスをしてくる。

 急に来たので驚いてしまうが、そのキスは涙で塩っぱかった。


 私はヘロンとキスをして、討伐隊の皆さんと一緒に王国へと足を進める。

 足を進める中、村の方から「気をつけて!」「待っているよ!」と沢山の声が聞こえ、私は愛されていたんだなと感じ、心が暖かくなっていた。

 ここから色んな人達の生きる理由を聞く為の冒険が始まりを迎えた。

「登場人物紹介」

ミーナ・グレッチェン

 村にある衣装屋の女性。黒髪で後ろを伸ばしている。性格はおっとりし、なおかつ天然な女性。実はレーヴェンの事を異性として好きで、ヘロンとライバルであった。ヘロンがレーヴェンと結婚した時は悔しがっていたが、その分ヘロンを祝福していた。

 今、新たな恋を始めたいと思っている。


ワトソン・ワーカー

 道具屋で眼鏡をかけた細身の男性。やや気が弱いが、道具の知識がずば抜けており、村の道具屋としてはかなりの良い品質の道具を用意出来る。

 ワトソンはミーナの事を気になっているが、中々アタック出来ずにいた。しかし、今回のコート作りで一緒に作成出来た時は、「ミーナさんと一緒に出来るんだ…!」と喜んでいたという。


 ワーダン・ホッカ

 村の武器屋の白い髭の生えた老人。見た目は小さく、まるで童話に出てくるドワーフだと思うが、れっきとした人間である。

 かなりの鍛冶能力があり、武器の他に家具も作成も出来る天才肌の老人である。

 レーヴェンの牧場で作った牛乳や卵などをとても気に入っていて、良く取り寄せている。


 フーデン・フォン

 王国の討伐隊率いる隊長であり、ラウのお兄さん。

 その姿は筋肉質で、かなりキリッとした凛々しく整った顔、ウルフカットの金髪をしている。

 実力もかなりあり、剣術は王国の宮廷騎士並の実力を持っていた。

 こんな完璧な彼だが、酒好きであり、酔っ払ってしまうと、完璧な姿からぐーたらになる一面もある彼であった。

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